世界の常識がない母が可愛すぎて誰にも嫁がせたくない

Kano

第1章 特別です 01

真っ白い部屋の中に少女が1人、作業を終える。

表情の変化は希薄だが、口元の広角が少し上がっている。


「できた…。」


少女の目の前には、石膏せっこうのように真っ白な人形。

自分より少し大きな人形の周りをぐるりと一周する。


「ん。可愛い。」


自分の作品に満足したようだ。


「後は中身…。特別…。」


そう言って少女は人形の両手を握る。

途端、青白い光を放ち、光が人形を包み込む。

するとどうか、石膏のような体躯たいくは人のような質感に変わる。

無機物のような白は透明感のある肌色に。

石で出来た髪も綺麗なブロンドへ変わっていく。


「ん。起きて。」


少女がそう呟くと人形だったものが目を開く。

瞳は深い紫色をしていた。


「おはよ。」

「え?あっはい。おはようございます。」

「座って。」


短い挨拶を交わした直後、なかったはずの場所に椅子とテーブルが現れる。

うながされるまま、人形だった少女は椅子に着席した。


どこからともなく鈴の音がしたかと思うと、扉が開く。


「お呼びでしょうか~リエル様。あれ?こちらはどなたでしょうか。」


フワフワと飛んできた幼女はそう尋ねる。


「創った。」


リエルと呼ばれた創作者がそう告げる。


「えっと…創ったのはわかりましたが、何故意識があるのです?」


「起こした。」

「何故そのようなことをしたのですか?」

「1号、お茶2つ。」

「相変わらずマイペースですね。少々お待ち下さい。」


そう言うと1号と呼ばれた幼女は準備を始める。

お茶の準備がされている間、リエルが少女の対面に座る。


「ティア。」

「え?」

「あなたの名前。ティアにする。」

「名前ですか?」


何もわからないまま、名前を付けられた少女。


「えっと…ここはどこで、あなたは何者なのでしょうか。」


リエルは何も答えない。ただ真っ直ぐにティアを見つめる。

そこへ1号がティーセットを持って戻ってくる。


「お待たせしました。えーと、ティアもどうぞ。」

「あ…ありがとうございます。」

「さぁリエル様、ちゃんと説明して下さいね。」

「私からもお願いします。」


ティアと1号の2人に詰め寄られる。


「冷めるよ。お茶。」


リエルは2人の質問も気にする素振りも見せず、ティアにお茶を勧めた。

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