第477話 【望まぬ来訪者・1】
大会が終わった翌日、俺はデュルド王国へと戻って来た。
行きはバラバラだったが、帰りは俺が居るならという事でルークさん達や姫様達も一緒に国に戻って来た。
「ルークさん達への、お祝いのプレゼントです」
「えっ!? 俺達に?」
俺は朝からリーザの所へと行き、ルークさん達への昇級祝いを取りに行っていた。
今回用意したお祝いの品は、ルークさん達全員分の短剣だ。
「素材にはドラゴン族の角を使っているので、その辺の短剣よりも丈夫ですし切れ味もいいですよ」
「ドラゴン族の角なんて、そんな貴重な物を!?」
「本当に良いの?」
「はい。ルークさん達には色々とお世話になっていたので、何か凄い物をプレゼントしようと思って用意したんです。受け取ってください」
そう俺が言うと、ルークさん達は嬉しそうに受け取ってくれた。
それから少しルークさん達と食堂で話していると、宿に新しい人がやって来たのかリカルドが対応している声が聞こえて来た。
その会話を聞いていると、リカルドが食堂に顔を出して「ジンは居るか?」と俺を呼んだ。
「居るけど、どうした?」
「お前にお客さんだ」
そう言われて席を立って食堂から出ると、そこにはヨルドが居た。
「何で、あんたがここに居るんだ?」
「ふふっ、前からこの国には寄ろうかなって考えてたんだけど、行くタイミングが無くてね。大会であなた達と戦って、この国に寄ろうって考えが固まったのよ。それでパーティーが終わった後、知り合いの魔法使いにこの国に転移してもらったのよ」
「知り合いに転移が使える魔法使いが居るって、流石は白金級冒険者だな……それで、この宿に泊まりに来たのか?」
その俺の問いに対して、ヨルドは「今日は挨拶に来ただけなのよ」と言った。
「本当はゆっくり観光でもしようかと思ったんだけど、知り合いにちょっと頼まれた事があってそっちを先に終わらせなきゃいけないのよ。それが終わったら、この宿に泊まろうかなって考えてるわ」
「そうか、まあ早く用事が終わるといいな」
と俺は言いつつも、ヨルドが宿に加わったらまた騒がしくなるだろうなと心の底で思っていた。
それからヨルドは本当に挨拶に来ただけだったようで、そのまま帰ろうとしていたが宿の入口からカシムが入って来た事でその場に静止した。
「あれ、カシム? 今日は依頼に行くんじゃなかったのか?」
「その予定だったんですけど、装備に不備が見つかって予備の装備を取りにきたんです」
カシムと軽く話していると、外に出ようと固まっていたヨルドはバッと振り返りカシムの肩に手を置いた。
「貴方、戦い方は何が得意なの?」
「えっ? あ、あの誰ですか!?」
「良いから、答えて!」
ヨルドはカシムに詰め寄りそう聞くが、カシムはヨルドの顔に怖さを感じてその問いに答えられなかった。
俺はそんな二人の間に入り、ヨルドに「まずは落ち着け」と言ってヨルドを落ち着かせた。
「じ、ジンさんこの方って大会でジンさんと戦っていた方ですよね? どうしてここに?」
「何でも俺と戦って、前から気になってデュルド王国に来ようと気持ちが固まって、知り合いの転移が使える魔法使いに頼んでこっちに来たらしい。それでヨルドはどうしたんだ? いきなり、カシムに得意な戦い方なんて聞いて」
「その子の体格に一目惚れしたのよ!」
興奮気味のヨルドはそう言うと、一先ず二人の話し合いの場を設けると言い、食堂の端にカシムとヨルドを座らせた。
「それでヨルドは、カシムの体を見てカシムに惚れたって事でいいのか?」
「まあ、それは否定はしないけどそういう事じゃないわ。その子の筋肉の付き方を見て、一目惚れしたのよ。性的な目では、まだ見てないわ」
「ま、まだ……」
カシムはヨルドの言葉を聞き、怯えた様子でそう口にした。
そんなカシムは置いて、ヨルドは自分の身の上話を始めた。
兵士時代からヨルドが最も得意としていたのは、自分の肉体だけで戦う格闘術で既に極めてしまっているとヨルドは言った。
そんなヨルドは自分の格闘術を誰かに教えたいと思うようになったらしいのだが、自分が教える相手は最高の生徒が良いと思い。
自分の戦い方に合った肉体を持つ者、その者を探す旅をしてきたとヨルドは言った。
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