第473話 【ジンVS勇者・1】


 あの後、俺は会場で倒れてるレイを回収して、部屋のベッドに寝かせた。

 俺と勇者の戦いは勇者の休憩時間も考慮して、30分後に行われると連絡された。

 俺はというと、10分前に移動しようと思い寝てるレイを起こさない様に、クロエ達と小声で雑談をしていた。


「んっ……あ~、負けちゃった?」


 10分程経った頃、レイは目を覚まし、自分がベッドに居る事に気付くとそう俺達に聞いて来た。


「勇者が勝ったよ。でも、凄く良い試合だったと俺は思うよ」


「ありがとう。でも、負けちゃったんだね……ん~、最後まで新しい戦い方試せばよかったかな?」


「どうだろうな、戦ってる時にレイが普段の方が良いって判断したから、元の戦い方に戻したんだろ?」


「ん~、正直あのまま新しい戦い方でも勝てる可能性が無いで自分の中で決めちゃって、少しでも可能性がある前の戦い方に変えたんだよね……」


 レイの中でまだ戦い方自体が固まっていないのもあったが、自信が無く元の戦い方に戻したのだろう。


「自信がある方で戦ったんなら、それはそれでいいんじゃないのか? 自分に言い訳しないでいいしな、それに戦い自体が間違ってはいなかったと俺はレイの戦いを見て感じたよ」


「うんうん。私も、あの戦い方はレイちゃんに合ってると思う。ただまだ練習が足りないんだと思う」


「レイお姉さま、一緒に訓練頑張りましょ! 私ももっと強くならないとですから、一緒に強くなりましょう!」


 俺達がそうレイに言うと、レイは笑顔を見せ「皆、ありがとう」と言った。


「ジン君、頑張ってね」


「ジンお兄様、頑張ってください」


「ジン君、私の敵討ち頼んだよ!」


 あれから時間は経ち試合開始10分前となり、部屋を移動するとなった俺に皆はそう声を掛けてくれた。

 俺はそんな皆に対して「行ってくる」と言い、部屋を出て準備室へと向かった。


「ジン。どうするんだ? あの技は使うつもりか?」


 準備室で体を動かしていると、刀の中からベルロスが出てきてそう俺に聞いて来た。

 ベルロスの言った〝あの技〟とは、俺がベルロスの力を使ういわば合体技みたいなもの。


「いや、流石に人の目があるからな、ここじゃお前との技は使えない。だから、今回はお試しも兼ねてリウスとの技を使う予定だ」


「えっ、僕と!? やった~!」


 この一月でリウスは会話が可能になっており、ベルロスとの話を聞いていたリウスはそう喜び飛び回った。

 無魂獣のリウスが喋れるようになるとは以前から聞いていたが、実際に喋るようになった時は本当に驚いた。

 既にその時点では、俺達の日常生活から学習してある程度の会話や常識は身に付いていた。

 しかし、細かな所は無理だったので会話が可能になってから数日間、リウスに教え込むと直ぐにリウスは学習して、今では普通に会話が可能だ。


「リウスとジンの技って言うと、あの技か……勇者が死なないかが心配だな」


「死にはしないだろう。神様の加護を強く受けてるんだぞ? それに神の武具を二つも持ってるんだから、俺もある程度力は出さないと負けるかも知れないからな」


「お前が誰かに負けるなんて未来、俺には想像できないけどな……」


 ベルロスはそう俺を見ながら呆れた顔をすると、リウスは「僕も主が負けるなんて想像できない!」と抗議するかの様に言ってきた。


「ってか、リウスとの技を使うなら、武器は俺が入ってる刀は使わないって事か?」


「そうなるな、まあ仮の武器はあるからそっちを使う予定だが、なんだ異空間に入れられてるのが嫌なのか?」


「そりゃ、お前と勇者の戦いの間、異空間に入れられてるって嫌だろ? 使わなくても、良いから出しててくれよ」


 そうお願いされた俺は、少し邪魔になるが別に出してても問題ないと考え「邪魔はするなよ?」と念を押した。

 それから時間が経ち、試合の時間となったので俺は準備室から会場の方へと移動した。

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