第474話 【ジンVS勇者・2】
会場に入ると、歓声が鳴り響き会場の中央まで歩いて来ると、先に待っていた勇者から握手を求められた。
「こうして、ジン君と戦えるのは光栄だよ。大会に参加して良かった」
「その感じ、俺には隠さなくても良いって考えなのか?」
「うん。だって、ジン君なら気付いてるだろうって思ってね」
勇者は仮面で分からないが、何となく笑ってる感じがした。
そして俺はチラリと勇者の持ってる武器を見て、勇者に視線を戻した。
「俺との戦いでは槍は使わないのか?」
「うん。ジン君相手に力を隠してたら、良い試合も出来ないだろうからね。僕の本気でぶつかりたいから、剣で行かせてもらうよ。それに一試合だけなら、バレる事もないかなって」
「そうか。まあ、俺としてはどっちでもいいが……槍の対策をしてた時間が勿体なかったな」
「ふふっ、その時間を削れただけでも槍を使ってた甲斐があるよ」
その後、軽く会話をした俺達は互いに距離を取り、武器を構えていつでも試合開始が出来る状態となった。
審判は俺と勇者を見て、試合開始の合図を鳴らした。
「ッ! 初っ端から全開か!」
「当たり前だよ! ジン君相手に出し惜しみしてても、意味が無いからね!」
開始早々、勇者は〝神の武具〟である聖剣の力を開放して、更にそこに強化系スキルも加えて突っ込んできた。
その攻撃を想定してなかった俺は、驚き対応に一瞬遅れてしまった。
「流石、ジン君だね。今の攻撃は、初見だとユリウスさんにも通じた技なんだよ」
そう勇者は本来であれば悔しい筈だろうが、どことなく嬉しそうな雰囲気でそう言った。
それから、俺と勇者の激しい攻防が始まった。
接近戦、遠距離戦どちらも得意としているタイプな俺達は、これまでの大会の戦いの中でも最も激しい戦いを始めた。
「流石に防御が上手いな……リウス。聞こえるか?」
「うん! 聞こえるよ! 主、やるの?」
勇者と距離が取れた俺は、影の中に居るリウスに声を掛けるとリウスはヒョコッと顔を出して俺の声に反応した。
そしてそのまま姿を現すと、勇者と会場の観客達は驚いていた。
今のリウスの姿は威嚇も兼ねて、一軒家程の高さの状態となっている。
「その子はもしかして、あの小さなドラゴンだった子?」
「ああ、ちょっと特別な生き物でね。一応、大会のルールでは一匹までなら従魔も出場可能だったし、文句はないだろ?」
「まあ、ね。文句は無いけど、普通に驚きはしたよ。ジン君なら、その子と共闘しなくても僕と戦えるんじゃない?」
「戦えはするけど、観客をもっと楽しませようと思ってな。別にこの日の為に用意した訳では無いが、披露する場所としては良いと思った技があるんだよ」
そう俺は勇者に言うと、リウスに「行くぞ、リウス!」と呼びかけた。
その呼びかけに応じたリウスは、光出して俺の体に吸い込まれていった。
そして、俺はリウスと一つとなり姿を変えた。
頭部にはドラゴンと似た角が生え、背には翼と尻尾が生え、そして最も変化したのは姿よりも中身。
俺とリウスが合体した事で、俺本来の能力にリウスの能力が合わさり、今の俺はほぼ最強の状態となった。
「凄い技を持ってるね。ジン君の言った通り、会場は大盛り上がりだね」
「だろ?」
俺の姿が変わった事に一般の観客は勿論、来賓席で観戦してる姫様達も驚いた顔をしていた。
「ふふっ、本当にジン君は凄いよね。……こうなったら、僕も出し惜しみせずに全力でぶつからないとジン君に失礼だね」
「ッ!」
勇者は嬉しそうにそう言うと、急に勇者の背後に空から光が降りそこに人影らしきものがみえた。
マジで? えっ、いやいや流石に勇者だからって……。
そう俺は焦る気持ちを抑え、その光が収まるのをジッと待った。
「ふふっ、セイン君。私を呼んでくれて嬉しいわ!」
光が収まると、その光の中から美しい美女が現れるとその女性は勇者に後ろから抱き着いた。
「ちょ、毎回出てきたらすぐに抱き着くの止めてくださいルティナ様!」
「え~、だって次いつ呼んでくれるか分からないから、セイン君成分を補充しないといけないでしょ?」
「そんな事、言うならもう呼びませんよ!」
そう勇者が怒ると、その美女はピタッと止まるとスーと勇者から離れ、勇者の背後に移動して凛々しい顔をして俺の方を見て来た。
この魔力、この感じ……そして、あの顔は女神ルティナだな。
女神ルティナ、このゲームの聖剣に宿る神であり、勇者に絶大な加護を与えている神。
また女神ルティナは神の中でも序列が高く、女神ルティナから加護を貰った者は誰もが名を轟かせる人物となる。
「まさか、神様を召喚するなんて流石に驚いたよ……」
「ふふっ、驚くのはまだ早いよ? それじゃ、ルティナ様行きますよ?」
勇者のその言葉に女神ルティナは反応すると、その身は光となり勇者の中へと吸収された。
そして勇者は女神ルティナと合体すると、勇者は俺と同じように体に変化が現れた。
髪は腰辺りまで伸びると、その色も白銀へと変わり、纏うオーラは神秘さが増した。
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