第461話 【仲間の戦い・1】
その後の試合も順調に進行していき、クロエ対招待選手の戦いが始まった。
あの選手、何処かで見た事あるなと思ったら、ゲームで出てきた奴だな。
名前は確かヨルド、年齢は自称二十歳の27歳。
男性でありながら乙女の心を持つ者とされていて、まあゲームではネタキャラとして出ていた。
「ねえ、ジン君。あの女性の服着た男の人、見た目じゃ変な人だなって思ったけど強くない?」
「あんな見た目をしてるが、あれでも白金級冒険者だからな」
「えっ、そうなの!?」
「人は見かけによらないって言いますけど、流石に想像できませんでした……」
レイとイリスは、クロエの相手が白金級冒険者と知ると驚いた顔をして会場を見つめていた。
しかし、こんな所であいつと会うとは思いもしなかったな、ゲームだとある程度進むと、あるクエストをクリアすると登場する仕様だった。
見た目に反して能力は高く、ヨルドは金さえ払えば価値の高い素材を持ってきてくれるため俺も良く使っていた。
「……それにしても、あの人恰好は変だけど動きは本当に凄く良いよね」
「白金級冒険者としての経験はあるだろうからな、それにあいつが得意とする相手はクロエみたいなすばしっこい相手だからクロエにとっては不利な対戦ではある」
「ジン君、いつの間にそんなあの人の事調べてたの?」
「んっ? 普通に白金級冒険者の事は大体調べてるぞ、そこまで数が居ないから情報を遮断してるアンセルみたいなやつ以外は大体は知ってる」
ゲームだけでの知識だと、白金級冒険者の強さも変わってくるだろうから、基本的に白金級冒険者の情報はハンゾウから買っている。
その中には勿論、ヨルドの情報もあった。
「ソロの冒険者だから、クロエの魔法にも対応できる強さを持ってるからな、クロエも戦い方を考えないと追い詰められるだろう」
そう俺が考えていると、ヨルドと戦っていたクロエは魔法でヨルドと戦っていたが戦法を接近戦に変えた。
だがヨルドは、接近戦も得意としている。
近づいて来たクロエを一瞬で見切ると、そのままクロエの服を掴み綺麗な背負い投げを披露した。
「クロエお姉さま、痛そう……」
「ヨルドは力もあるからな、大分食らっただろうな」
俺達の予想通り、クロエはかなりの傷を負っており立ち上がるのもやっとだった。
「貴女、良いわ! 惚れちゃうくらいにね!」
根性で立ち上がったクロエに対し、ヨルドは歓喜した様子でそう叫ぶと、そのままクロエに走り寄った。
そしてそのままクロエに攻撃を食らわせようとした瞬間、クロエは一瞬でヨルドの背後を取り、強烈な蹴りを入れた。
「あっ、クロエちゃんが本気モードに変わった」
レイの言葉通り、クロエの様子は先程までとは違う。
いつも笑顔のクロエは、今は目を細めヨルドを睨むような目つきをしており、構え方や気配も変わっている。
これはクロエが本気で戦う時のモードで、【覇気】で身体能力を上げた上に【冷静・並列思考】で相手の動きを読み取る戦いかだ。
獣人族の本気と言えば【獣化】だが、クロエは自分の姿が変わってしまう【獣化】を嫌っている為、本気だとしても【獣化】は使わない。
そのため【獣化】を使わないで、自分の能力を最大限引き出せるこの組み合わせるのスキルを本気で戦う時に使っている。
「俺達と戦う時の為に温存しておくって言ってたけど、相手がヨルドだと出し惜しみしてたら負けるって感じたんだろうな」
「あの相手選手は強いもんね。私も我慢出来ずに、本気出しちゃうくらいに強い」
レイは本気モードとなったクロエを見つめながらそう言うと、大きな声で「クロエちゃん頑張って!」と声援を送った。
その声が届いたのか、クロエは一瞬笑みを浮かべると次の瞬間、ヨルドに攻撃を始めた。
「ッ!」
クロエの本気モードの蹴りをヨルドは、構えて受け止めると会場中に蹴りの振動が伝わり建物が揺れた。
ギリギリの所でクロエの蹴りを受け止めたヨルドは、反撃をしようと構えるがクロエは容赦なく、ヨルドに対してかかと落としを食らわせた。
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