第460話 【本選・4】
これは驚いたな、二撃目から対応してきたか?
「流石、ジンさんですね。こんな凄い魔法を平然と使ってくるなんて、ただ俺もそう簡単にはやられませんよ。——ハァァァッ!」
デイドはそう叫ぶと同時に、会場に設置した魔力を弾き飛ばした。
今のは竜人族の中でも、極僅かな者だけが会得すると言われてる【竜の咆哮】というスキルだろう。
そのスキルの効果は絶大で、相手を威嚇する時にも使われるが、そのスキルの一番強い所は〝魔法を撃ち消す〟という能力だ。
流石に強すぎる能力だからか、使用者の魔力と体力を相当使うが対魔法戦に相手は竜人族の持つ【竜の咆哮】は凄まじい物だ。
「魔法にも驚いたが、まさかお前が【竜の咆哮】を使えるのにはもっと驚いたぞ」
「これに関しては本当に、人前では使った事が無いですからね。ジンさん相手にも本当は使う予定無かったんですが……流石、ジンさんですね」
【竜の咆哮】はゲームでも、竜人族のある助っ人キャラが持っていてそいつが居た時は魔法使い合い手には敵なしだった。
そいつが居る時にジンとも戦えたが、ジンの魔法すらも消し飛ばす力を持っていて、最初に使った時はその強さに驚いたのを今でも覚えている。
「まあ、でもその力が凄いのは知っているが……相当辛そうだな? 俺は力を緩めるつもりは無いぞ」
体力と魔力をかなり消費してるデイトに対し、俺は容赦なく攻撃を続けた。
最初に比べて明らかに動きが悪くなったデイトだったが、徐々にまた動きが良くなってきている。
あの技を使って、数分しか経ってないぞ?
「回復が早いな、そういう能力か?」
明らかに体力の回復が早いと感じた俺は、一旦デイトとの距離を取った。
そしてよくデイトを観察すると、ついさっきかなり消費した筈の魔力の3分の1が既に回復していた。
「厄介だな……これは戦いを楽しんでいたら、本当に負けそうだ」
俺はそう思い、そこからは更に力を入れてデイトとの戦いを繰り広げた。
会場は戦いが激しくなった俺達を見て、更に盛り上がった。
そうして戦いは続き、俺とデイトの戦いが始まって約30分が経過した。
「……そろそろ、限界そうだな? あれから二度、【竜の咆哮】を使ったが回復能力が明らかに落ちてる。使用制限がある回復能力か」
「そこまで見抜くなんて、本当にジンさんは凄いですね……」
あの後、二度も【竜の咆哮】を使ったデイトは明らかに回復している様子は無かった。
俺の予想だが、使用制限付きの回復能力をデイトは持っていて、それが尽きたのだろう。
そこから俺は手加減はせず、最後までデイトとの戦いを楽しんだ。
「勝者はジン選手!」
デイトは体力と魔力が底付き、最後は俺の刀での攻撃を槍で返す事が出来ずに場外に吹き飛ばされて負けが確定した。
だが最後まで俺と戦い切り、今も気絶する事無く会場から観客に向けてお辞儀をしている。
「デイト、お前との戦い凄く良かったよ。ここまで人間と楽しく戦えたのは久しぶりだ」
「ありがとうございます。俺の憧れの人であるジンさんにそう言って貰えて、本当に嬉しいです」
デイトは疲労が溜まっている筈だが、笑顔を浮かべて俺と握手を交わして俺達は会場から出た。
それから俺は待機室へと戻ってくると、クロエ達から「凄い戦いだったね」と声を掛けられた。
「あの相手選手の人、凄かったね」
「ああ、俺の事をよく調べて自分の情報を遮断したりと、能力だけじゃなくて頭も回る奴だった。ああいう奴は、もっと強くなるだろうな」
「へ~、情報も上手く使う人なんてあまりいないけど、あの人はそういうタイプなんだね」
「何でも俺に憧れてるらしくて、俺の真似で情報収集を始めたらしい。今は趣味の一つだって言ってた」
そう言うと、クロエは「情報は大事な武器の一つだから趣味に変えられるのは凄い事だね」と感心していた。
「あ~あ、私もあの人と戦いたいな~。【竜の咆哮】ってスキルを正面から受けてみたいな~」
「レイ相手だったら、使わないと思うぞ? あれは普段は使わないようにしていて、俺の魔法に対抗する為に出すしかなかったって言ってたぞ」
「魔法か~、だったら私は無理かも……でも、それを抜きにしてもあの人とは一度戦ってみたい!」
そうレイは言ったので、後でもしデイトと会う事があったら頼んでみるかと言うと、レイは「うん。そうする!」と言った。
その後、会場の清掃が終わり次の試合が始まった。
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