第430話 【一緒に冒険・5】


 夕食後、俺は皆に伝えていたように俺の部屋に集まって貰った。

 そしてまず最初に、イリスに俺達の仮の仲間にならないか尋ねると、イリスは涙を流して喜んだ。

 イリスはいつか俺達と一緒に冒険がしたいと願っていたが、自分の力ではまだまだ先だろうと考えていたようだ。


「まあ、正式な仲間ではなく仮状態だけどな、仮期間の間にイリスと俺達の連携がうまく合えば正式な仲間として迎え入れるつもりだから、浮かれずに頑張るんだぞ」


「はい!」


 元気よく返事をするイリスを仮とは言え、新たな仲間として俺達は笑顔で迎え入れた。

 そうしてイリスを仲間に加えて、最初に向かう場所について俺は皆に伝える事にした。


「トコルタ王国にある〝冒険者ダンジョン〟に挑戦しようと思ってる」


 冒険者ダンジョン、ゲームだと中盤以降に登場するダンジョン。

 凝った名前では無いが、そこのダンジョンはかなり美味しく下に降りれば降りる程、敵が強くなり経験値も美味しかった。

 その上、採れる素材もレアな物ばかりで金策にも持って来いな場所で、縛りプレイ以外は中盤はそこに籠って装備を整えたりしていた。


「……そこって確か、今の迷宮に挑む前にジン君が話してたところだよね? 確か、珍しい素材が沢山採れる場所で出てくる魔物も強いんだよね? イリスちゃんと一緒で大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。最初からそこまで強い敵が現れる訳じゃないからね。下に降りれば強い魔物も出てくるけど、それまでにイリスのレベル上げをして潜ろうと思ってる」


「そうか……まあ、正直な所〝遊戯神の迷宮〟が現れて、そこに行くのを忘れてたけど、ちょっとは気になっていたからな、もしかしたら〝遊戯神の迷宮〟では採れない素材があるかも知れないからな」


「強敵が出てくるんだよね? 楽しみだな~」


 クロエはイリスの事を心配していたが、レンとレイはダンジョンで採れる素材や魔物の事を思い浮かべ、早く行きたそうにしていた。

 そしてクロエに心配されたイリスに目をやると、レイと同じく何処かワクワクした表情をしていた。


「イリスも楽しみみたいだな」


「はい! その〝冒険者ダンジョン〟は噂で聞いた事があって、強い魔物が沢山出て危険な場所というのは知ってますけど、それ以上にジンお兄さま達とこれから一緒にダンジョンを攻略出来るのが楽しみです!」


 普段は大人しく落ち着いた雰囲気のあるイリスも、俺達の仲間になれた事が相当嬉しかったのか少しいつもよりテンションが高いようだ。

 そんなイリスにレイは引っ付いて「イリスちゃん、沢山魔物倒して強くなろうね!」といい、イリスは元気よく返事をしていた。

 その後、話し合いをしていたら時間も大分経っていて、これ以上は宿に泊まってる他の人の迷惑になる為、その日は解散となった。


「そう言う訳で、イリスに最高の装備を作ってほしいんだけど、大丈夫そうか?」


 翌日、俺は皆で行くと仕事の邪魔になるだろうと思い、イリスだけを連れてリーザの店へと来た。


「意外と早かったわね。いつか、ジン達が仲間にすると思っていたけど」


「イリスの成長速度が予想よりも早くてな、仮期間としてイリスを仲間に迎え入れる事にしたんだ。それで早速、イリスを連れて迷宮に挑もうと思ってるんだが、今の装備だと心許ないという事で前回は素材を抑えめで作ってほしいと頼んだが、今回は最高の素材で作ってほしい」


「良いの? 装備が良くなったら、成長に影響が出るって言って無かったかしら?」


「そのラインはもう超えたからな、後は死なないように装備を強くして実戦経験を積ませる予定だ」


 そう俺は言って、【遊戯神の迷宮】で採れた素材を出していき、リーザに使えそうな物を渡した。

 素材が素材なだけあって、作成時間は二日必要だと言われた。


「装備だけど、本当にイリスのだけでよかったの? ジン達の装備も大分変えてないんじゃない?」


「今はまだ大丈夫だ。それにイリスはまだ装備に慣れ始めた頃だけど、俺達は今の装備を気に行ってるからな、壊れそうになったら作りに来るよ」


「そう。分かったわ、取り合えず二日後に取りに来なさい。それと、新しい迷宮に行くなら後でジン達の装備も持ってきなさい、メンテナンスしておいた方が良いでしょ?」


「そうだな、また後で装備を渡しに来るよ」


 それから俺達は店を出て、イリスを連れて宿に転移で帰宅した。

 その後、俺はクロエ達の部屋に行き装備を回収して、もう一度リーザの店へと来て装備を渡した。


 

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