第411話 【噂・1】
次の日、俺は朝食を食べた後にイリスを連れて王城へと向かった。
イリスは行き先が城だと伝えると、「わ、私も行くんですか!?」と驚いていた。
「今回の呼び出し理由が、俺達の弟子についてだからな。クロエ達は訓練の準備があるから付いてこれないけど、イリスは当人だからな」
「お、お貴族様と会うなんて初めてで緊張します……」
「あまりにも態度が悪かったら、姫様も怒るだろうけどそこまで怖くは無いから安心していいぞ」
そう言って俺はビビるイリスを安心させ、王城に着くと兵士に姫様の部屋の所まで案内された。
「あら、今日は正面から来たの?」
「はい。俺一人ならいつも通り転移で来れますけど、イリスも居たので今日は正面から来ました」
「は、初めまして! い、イリスと申します。本日は、よろしくお願いいたします」
「ふふっ、そんなに緊張しなくてもいいわよ」
イリスはガチガチに緊張して姫様に挨拶すると、姫様は笑いながらそう言って俺達はソファーに座った。
「それにしても、こんなにかわいい子がジン達の弟子になってのね……こっちでも調べたけど、元々は普通の村の子供だったのよね? どうして、ジン達はこの子を弟子にとったの?」
「そうですね。元々は、俺達が旅をしていた時に知り合ってその時に軽く教えていたんですよ。それで、この間再会して正式に弟子にしたんです」
「へ~、2年前に出会ってたのね」
姫様は俺達の出会いについて話すと、隣に座ってるイリスの方へと視線を向け、ニコニコと笑みを浮かべた。
その姫様の視線に気付いたイリスは、オロオロとしていて俺の方に助けて欲しいという風な視線を送って来た。
「姫様、イリスが怖がってるのであまり凝視しないでください」
「あら、凝視してないわよ? ただ可愛い子だと思って、見ていただけよ」
姫様はイリスが揶揄い甲斐のあると認識したのか、楽しそうに笑いながらそう言った。
「そう言えば、噂ではジンの弟子みたいに流れていたけど、実際にジンの弟子なのかしら?」
「俺だけの弟子じゃないですよ。イリスは俺達全員の弟子です。それぞれ得意分野をイリスに教える事になったんです」
「……化け物でも作る気?」
俺の言葉を聞いた姫様は、信じられないといった視線で俺の事を見ながらそう言ってきた。
「俺達が教えるからって、そんな化け物が生まれるわけないじゃないですか」
「国の英雄であり悪魔を使役してるジンに、獣人族という種族の壁を越えた魔法使いのクロエ、ドラゴンすらも倒す怪力の持ち主のレイ、稀代の錬金術師として名を轟かせてるレン。そんな4人の弟子って、誰がどう見ても化け物が生まれるって思うわよ?」
そう姫様は言うと、真剣な顔をして「全員の弟子って広まったら更に凄い事になりそうね」と言った。
「それはどういう事ですか?」
「今、流れてる噂は〝英雄ジンが弟子を取った〟という風に流れているのよ。それだけでも、かなりの話題性があるのにそこに加えてクロエ達の弟子でもあるって分かったら、更にこの話は広まりそうと思ったのよ。今の時点でも、ジンの弟子になりたいって言ってる人が多数いるって報告が入ってるのよ」
「そんな事になっていたんですね。というか、弟子にしたって少し前に決めた事なのによくそんな直ぐに噂が広まりましたね」
「ジン達とイリスが親し気に話してる所を見た人が居て、その人物がジン達の跡を付けたら弟子にしたって話を聞いて、それで直ぐに噂が広まったのよ」
王都だと何処にいても見られてる感覚だったから、跡を付けられてる事に対して無関心だったことが駄目だったみたいだな。
「イリス、ごめんな。俺達の不注意で噂が流れていたみたいだ」
「いえ、ジンお兄さま達のせいじゃないですよ」
俺の謝罪に対して、逆にイリスはそう申し訳なさそうにそう言い返してきた。
王城に来るまでの間、いつにも増して視線を感じていたが、そういう理由だったのか……。
「帰りは転移で宿に戻って、ハンゾウの所で詳しく話を聞いた方が良いな……」
「その方が良いと思うわよ。私の方でも調べてはてるけど、既にジン達が弟子を取るようになったって噂も流れてるみたいだし」
「早く手を打たないと、変な奴等が来る可能性もあるって事ですね」
その言葉に姫様は頷き「何かあったら、私も手伝うわよ」と言い、早めに対処した方が良いという事で話し合いは終わりにして帰る事にした。
宿に帰宅後、イリスを宿に置いてハンゾウの店へと転移で移動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます