第403話 【おしかけ弟子候補・2】


 叫びレイをクロエに任せ、俺はレンに「弟子は何で取らないんだ?」と聞いた。


「単純に面倒ってのが大きいってのもあるけど、一番は自分の歴がまだ浅いからだな」


「まあ、確かにレンが研究者として本格的に動き始めてそんなに経ってないもんな……」


「自分で言うのはあれだけど、功績自体は多いとは自分でも思ってる。だけど、研究者として活動を始めてそんなに経ってないだろ? そんな奴が弟子を取るのは、おかしいんじゃないかなって思ってるんだよ」


 レンの言い分としては、自分は研究者として活動を始めてまだ少しだからというのが弟子を取らない理由みたいだ。


「弟子じゃなくて、助手とかはどうなんだ? レンの作業って、一人でするには大掛かりなものとかあるだろ?」


「まあ、あるけど……正直、今いるこの4人が居心地が良いんだよな。その中に俺が助手やら弟子をとって、空気を壊したくないってのもあるんだ」


 レンの言葉に俺も確かに今の4人の雰囲気はいい感じだから、今の感じを壊したくないというレンの気持ちは理解できた。


「別に仲間として助手とか弟子が来るわけじゃないだろうけど、それでも俺が弟子や助手と長い時間いるとジン達といる時間も無くなってくるからな、それなら最初から作らない方が良いかなと思ってるんだ」


「……レン君って人の事ちゃんと考えられるんだね」


「言っておくけど、レイより人間関係はうまくやれてるからな」


 そうレンが言うと、またそこで言い合いの喧嘩を二人はやっていて、そんな二人を置いて俺は少しだけ新しい仲間について考えてみた。


「今のこのメンバーにもしレンが助手とか弟子が出来て、その人を仲間にするってなったら、クロエはどう思う?」


「ん~、最初は戸惑いとかあるかもだけど直ぐに慣れるとは思うよ。その人が特別変な人じゃない限りだけど」


「まあ、変な人は入れないとして、クロエは意外と有りな方向で考えてるんだな」


 そう言うと、クロエは「人が沢山の方が楽しいかも知れないしね」と笑みを浮かべて言った。


「だけど、レン君の弟子とか取らない理由を聞いて私も確かに今のこの4人の空気は好きだから、これが壊れるのは嫌だなって少しは思ったかな」


「それは皆、思ってる事だと思うよ。なんだかんだもう2年の付き合いだからな」


「そうだよね。もう2年も過ぎてるって、本当に時の流れって早いよね」


 クロエは昔の事を思い出しながら、未だ喧嘩をしてるレイ達を見て笑みを浮かべた。


「ハァ、ハァ、ハァ……レイを薬で弱体化させる方法、本気で考えようかな……」


「それはやめておいてやれよ……」


「……今はな」


 あの後、喧嘩が酷くなった為、レイ達をいつも様に引き離し、俺はレンに、クロエはレイに付いて話を聞いて落ち着かせる事にした。


「それでさっきの話だけど、空気が壊れるのは嫌だけどレンが本当に困ったら、弟子や助手を作っても良いからな? まあ、その時は相談位はしてほしいけど」


「……分かってる。その時が来たら、ジン達にも相談するよ。今は助手って程でも無いが、悪魔達も偶に手伝ってくれてるからな」


 レイと離れた事で多少落ち着いたレンは、俺の言葉にそう静かに答えた。


「それは初耳だな? あいつらがレンの手伝いをしてるのか?」


「偶にだけどな、素材を運んでくれたりの簡単な事を最初はしてくれてたけど、最近は上の研究室の実験の経過を観察とかも手伝ってくれてる」


「へ~、そうだったのか、それなら益々弟子や助手は要らなそうだな」


「まあな……だけど、正直な気持ちで言うと実験の内容とかを話し合えるような奴は欲しいかなって、偶にだけど思う。話し合って、発見出来る時もあるからな」


 そうレンは自分の本音を言い、俺はそんなレンに対して「弟子とかが見つかるまで、俺がその相手になろうか?」と聞いた。


「今でも色んな事をしてて忙しいのに、俺の話し合いになんてなったら時間が足りないんじゃないのか? 姉との時間が無いって、愚痴っていただろ?」


「うっ、それはそうだけど……友達が困ってるなら、少しは手を貸したいって思ったんだよ。いつもは無理だけど、本当に悩んだ時は話し相手になるよ」


「ふっ、ジンらしいな……まあ、本気で悩んだらジンに話を聞いてもらうよ」


 レンは笑みを浮かべながらそう言うと、怒りは完全に収まったようでレイと引き合わせると互いに謝罪をして二人は仲直りをした。

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