第394話 【お休み期間・2】
宿に帰宅後、俺は部屋でハンゾウから貰った資料に目を通していた。
「ふ~ん、勇者の目撃情報か……」
まず最初に気になったのは、勇者の目撃されたという情報だった。
しかし、よくよくその資料を目を通すとその目撃された勇者は偽物というよりも、勇者に憧れた人物だったという落ちだった。
「まあ、今じゃ世界を救った人物だからな、そういう奴が出てきてもおかしくないか」
ゲームではそういう話は書かれてなかったが、そう言うや奴が出てくるのも少しは予想出来ていた。
俺の不安としては、俺自身の偽物が出てこないかだったが、王都の英雄程度は他国に偽物が出現するレベルでは無いみたいで安心した。
「まあ、もし出て来たとしても直ぐに対処はするけどな……」
下手に偽物に動かれたらこっちが困るからな、もしもの場合に備えてハンゾウには俺の偽物が出たら直ぐに知らせてもらうように頼んでいる。
その後も資料を読んだ俺は、特に重大な事は書かれてなかったのでクロエ達を呼ぶ必要は無いなと思い、資料を【異空間ボックス】に入れた。
「さてと……今日の予定は終わっちまったな」
今日の予定として、お昼はお疲れ様会でそれが終わり次第にハンゾウの所で資料を受け取るだけだった。
現在の時刻は夕方前の大体3時頃と、何かするには中途半端な時間だった。
「料理の練習するにも、姉さん達は依頼に出掛けてるし、クロエ達は酔いが回って寝てるし、レンの邪魔は出来ないもんな……」
完全にやる事が無くなってしまった俺は、部屋に居ても特にやる事が無い為、部屋から出て食堂に行くとリカルドが暇そうにしていた。
「あれ、リカルド? この時間は仕込みとかやる事あるんじゃないのか?」
「ん~、今日は早くに終わってな、やる事が無くて暇なんだよ」
「お前もか……アイラさん達はどうしたんだ?」
「アイラとルリは買い出しに出掛けてるよ。そのまま、息抜きに服も見てくるって言ってたから遅くなるとも言ってた」
リカルドは仕込みの準備があってついていけないと言ったらしく、こんなに早く終わるならついていけばよかったと後悔していた。
「お互いやる事が無いな……」
「いや、まあ探せばやる事はあるんだよな、掃除とかちょっとした修繕とかもあるんだけど、今からそれをやる気が起きなくてな」
「掃除はまあいいとして、修繕ってこの宿悪い所とかあるのか?」
「一応、大切には使ってるが所々老朽化でな、大分この宿を建てて経つし仕方ないけどな」
そのリカルドの言葉に俺はふと周りを見渡すと、確かに所々だが老朽化していた。
「まあ、まだそこまで酷くないから今日みたいな暇な時にやってはいるんだけど、少し前に腰をやってな……」
「ふ~ん、なら俺が少し手を加えてみてもいいか?」
「ジンがか? そりゃ、有難いけど良いのか?」
「別にそこまで大がかりの事はしないつもりだ。ちょっとした暇つぶし程度に少しな、不安ならリカルドが監視してても良いからよ」
そう俺は言うと、リカルドは「どうせ暇だし、腰に負担がかからないのは一緒にやるよ」と言って急遽宿の修繕作業を始める事にした。
まずは、修繕が必要な個所を探す所だが、特に酷い所は無くちょっと治せばよくなるような所ばかりだった。
そして痛んでる所でも人の目があるような箇所を治そうと思い、俺達は作業に取り掛かった。
「お前、そんな大量の木をアイテムボックスの中に入れてるのか?」
「容量が大きいからな、必要になりそうなもの以外にも沢山色々と入ってるよ」
リカルドと俺は宿の裏庭へと移動して、修繕に必要な木材を取り出した。
その木材を見てリカルドは呆れた様子でそう言い、俺はそんなリカルドに他にも沢山色々と入ってると言って石系の材料も見せた。
「それだけ沢山の物が入る能力とは思ってなかったな……便利すぎるだろ、お前の能力」
「重宝してるよ。それより、作業に取り掛かるぞ」
それから俺はリカルドと共に木材の加工をして、一階部分の修繕作業を始めた。
俺達は大工でもないし、普段からこういう作業をしてる訳では無い為、寸法ミス等を何回かしながらも作業を進めた。
元々暇つぶしで始めたが、一時間程したら楽しくなってて夢中になって作業をしていた。
「お父さん、ジン君。そろそろ、夕食の時間だよ」
「「え?」」
ルリのその言葉に俺とリカルドは反応して顔を上げると、既に陽が沈みかけ、後10分程すれば夕食の時間となっていた。
それを聞いたリカルドは慌てて、俺と一緒にその場を片づけて早足で食堂の方へと走っていった。
「ジン君、ありがとね。お父さんの相手してくれたのと、宿を治してくれて」
「いや、俺も暇つぶしで始めたからな、それにこの宿には世話になってるからな」
ルリのお礼に俺はそう返して、部屋に戻ってもやる事が無い為、そのままルリと一緒に食堂へと行き夕食が出てくるまで少し待つ事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます