第388話 【問題児達・3】


 初日という事で様子見程度にしておこうと思っていたのだが、始まって直ぐに双子達は徐々に勉強の集中力が切れかけていた。

 挨拶の時の緊張感は、既に無くなっているようだ。


「はぁ……やらないと、駄目だろうな」


 溜息交じりにそう口にした俺は、双子に向けて魔力を発した。

 その魔力に双子はビクッと反応すると、俺の方を睨むような視線を向けけて来た。

 文句を言いたいのであればと、俺は更に魔力を強めると双子は睨むだけ睨んで、再び勉強に集中していた。

 それから暫くして、残りの二名も集中が切れ文句を言い始めると、個々に向けて魔力をぶつけて大人しくさせた。

 

「初日から凄い活躍だったわ。あんな大人しく勉強を受けてる姿は、これが始まってから見た事も無かったわ」


 数時間後、お昼休みとして昼食を食べる為、俺達はレリーナさん達と一緒に食堂でご飯を食べる事にすると、そうレリーナさんから褒められた。

 レリーナさんの言葉に、フローラやリネアさん達も頷いていた。


「それにしても、魔力を向けてるだけで大人しくさせるって、どうやっていたの?」


「ああ、あれはただ魔力を向けてるんじゃないんですよ。俺達三人はそれぞれ別のやり方で彼女達を押さえつけていたんです」


 普通の魔力でも多少は効果があるだろうが、多分それだと意味が無いと思った俺はクロエ達と話して別々の力を使おうという事になった。

 まず俺は、サボりはじめた者に対して強力な魔力を与えつつ、重力を押さえつけるようにしていた。


「俺は【空間魔法】が使えるので、それを使って彼女達に恐怖と圧迫感を感じさせていたんです」


「……聞いただけで過ごそうね」


 そして次にクロエは【覇気】の力を使い、圧を個々に与えていたと言った。


「凄そうな名前の技ね。でも、確かにクロエさんがそれを使うと、文句を言ってた彼女達が直ぐに黙っていたわね」


「強い者の気を与えているので、力量さがあるとかなり効果があるんです。彼女達は旅の途中から鍛えるのをやめていたと聞いていたので、試しにやってみたらかなり効果がありまして、それを使ってました」


 最後にレイはというと、これまたクロエと同じ様に【威圧】を使い、彼女達を押さえつけていた。

 クロエとは違いレイは、初っ端から遠慮なく【威圧】を向けていて、ちょっと強すぎて何度か過呼吸になっている場面があった。


「レイさんの【威圧】は凄いですね。抑えている筈なのに、私達にも感じてきましたから」


「あ、あれはちょっと漏れていたんです……。最近まで迷宮に潜ってて、一人に対しては練習してなかったので」


 相手が貴族という事もあり、レイは普段とは違い大人しい感じでそうレリーナさんに言った。


「私が言うのもあれですけど、私達に対して変に敬おうとか思わなくても大丈夫よ。あなた達の事は聞いてるし、なによりジン君の仲間なら私達もよっぽど変な事をされない限りは怒ったりしないから」


「は、はい。ありがとうございます」


 そんなレリーナさんの言葉に、レイは緊張した様子で返事をした。

 こんなレイの姿は初めて見たが、確かにこれまで貴族と絡んでるのは姫様以外には見た事が無い。

 クロエ一緒に王城で暮らしていたり、護衛で学園にも行ってたのである程度の耐性は付いてるが、レイには全く無いみたいだ。

 まあ、でもこの機会にその耐性が付いてくれると有難いな、ここには上級貴族の夫人が二人もいるからな。


「それじゃ、ジン君達には午後からもよろしく頼むわね」


「「「はい」」」


 レリーナさんの言葉に対して俺達はそう返事をして、食事を終えたので俺達は再び戦女達の待つ部屋に移動した。

 そして午後からの授業でも、俺達は戦女達の監視をしていたが、午前中よりも少しだけ集中できている様子だった。

 俺達の攻撃をくらいたくないからだろうが、そんな態度の変化にレリーナさん達は嬉しそうにしていた。

 そうして初日の勉強会を終えると、また明日もよろしくねとレリーナさん達に言われて俺達は宿へと帰宅した。

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