第389話 【問題児達・4】
問題児達の再教育に参加をしてから、三日が過ぎた。
初日の二日目までは俺達の監視の効果が出て、授業態度自体は良くなっていたが記憶能力は以前のままだった。
「見てて思ったんですけど、レリーナさん達ももう少し厳しくやってもいいんじゃないですか? そもそも、覚える気が無いように見えますし」
「う~ん……ジン君の言う通りね。今までとは授業態度が悪くて、私達も嫌気がさして優しくやってた所もあるけど、そろそろ厳しめにしていく必要があるわよね」
「ジン君達のおかげで邪魔したり、文句をいう隙は無いですから厳しくしていくのは私も賛成です」
レリーナさんの言葉にリネアさんも賛成して、フローラとティアナさん、そしてそこに教える側で参加した姉さん達も頷いていた。
そしてどの程度まで厳しくするのか、話し合いが始まって監視役の俺達はその話し合いを黙って聞いていた。
「そう言えば、昨日ジン君姫様の所に行ってたよね? 何か話してきたの?」
「念の為に、戦女達に対してどこまでやっていいのか再確認してきたんだよ。それぞれの家の当主にも集まってもらってね」
「3つの貴族の当主を集めたの? ジン君、そこまでこの再教育に本気なんだね」
「それもあるけど、早く終わらせたいんだよ。そうしないと、
そう俺が言うと、レイはハッとした顔で「確かに!」と言った。
「日数的にまだ大丈夫だけど、ギリギリまでこんな事はしてたくないからな。出来るなら、早く終わらせて休暇を楽しんで、また行きたいと考えてる」
「私もその方が良いから、早めに終わると良いよね。でも、今日までの感じからして、まだかかりそうだと思うよ?」
「……レリーナさん達が、どこまで厳しくするかで変わってくると思う」
そう言いながら話し合いをしてるレリーナさん達を見つめ、早く再教育が終わってほしいと願う俺だった。
その後、話し合いが終わり早速今日の授業へと向かった。
二日目からは全員ではなく、交代制で授業を行う事になっている。
以前までは3人に対して一人ずつだったが、今は姉さん達が加わった事で前半と後半で3人ずつで別れる事になった。
前半組みには授業担当にレリーナさん、姉さん、ルル姉の三人に監視役は俺となっていて、後半組は残りの人達だ。
「……ジン君、それ何持ってるの?」
「これですか? ちょっと脅し用の道具を持ってきたんです。レリーナさん、授業を始める前にちょっと時間を貰っても大丈夫ですか?」
「彼女達の授業へのやる気に繋がるなら、良いわよ」
そうレリーナさんの許可も下りた俺は、部屋に入るなりレリーナさん達には部屋に入って直ぐの所で待っててもらった。
「おはようございます。本日はまず自分から、皆さんにあるアイテムのご紹介をします」
いつもなら直ぐに授業が始まるのに、俺が前に立ち話始めた事に戦女達は不思議そうな顔でこちらを見て来た。
俺はそんな彼女達に対して、持っていた紙袋からアイテムを取り出した。
俺が取り出したアイテムは、見た目は普通のネックレスだが、その見た目からは分からない特殊な能力が付与されている。
「こちら稀代の錬金術師に作ってもらったアイテムでして、普通のネックレスに見えますが一度装着すると、装着者は一定の魔力が奪われ続けるという能力があるんです。勿論、簡単には取り外す事が出来ないようになっていまして、こちらの鍵となる魔石を持っていないと取り外す事は出来ない作りになってます」
そうネックレスの説明をすると戦女達は驚いた顔をし、彼女達の中で一番気の強いアンナは「な、なんて物を持ってきてるのよ!」と叫んだ。
そのアンナの言葉に流石のナナリーも同意見の様で、激しく頷き双子達も反論してきた。
「勿論、これを今すぐに付けろとは言いません。ですが、このまま授業を受け続けても進歩が無く、そのままで居続けるのでしたらこれを付けさせてもらいます。勿論、親御さんの許可は下りていますので帰宅後に聞いてもらっても構いませんよ」
笑みを浮かべてそう言うと、戦女達は俺の事を睨みつけ、そんな戦女達を見て更に笑顔を浮かべてから俺は後ろの定位置に移動した。
その後、授業が始まると戦女達はこの三日間で一番の集中力を出して授業を受け、シッカリと作法の練習に励んでいた。
「ねえ、ジン。さっきのネックレスだけど、本当にあの子達に付けるの?」
「ああ、嘘だよ。これは普通のネックレスにちょっと魔力を流して、特殊な物って思わせただけだよ」
授業が終わり、待機室に移動してくるとルル姉が心配した様子で聞いて来たので、俺は本当の事をルル姉に伝えた。
「えっ、嘘なの?」
「作ろうと思えばレンなら作れると思いますけど、流石にそんなヤバい物は作らせたくないからね。脅しても良いか、姫様に許可取ったら旅の時の恨みがあったのか、こんな提案をされてね。今日の様子を見た感じ、かなり効いたみたいだね」
そう言うと、ルル姉は「心配して損した……」と溜息交じりに言い、姉さんはそんなルル姉を見てクスクスと笑っていた。
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