第381話 【迷宮完全攻略・2】


 それから俺達は素材採取を続け、二日が過ぎた。

 この二日間、俺達は97層から99層の素材をレンが満足するまで集めた。

 正直、物自体はそこまで貴重ではない物もあった。

 しかし、育った環境が良い為、それらも全て採っていたらいつの間にか二日が過ぎていた。


「最初は四日位掛ると思ってたけど、二日で終わってよかった。これなら、他の冒険者にはまだ追いつかれてはないだろうな」


「ジンのおかげだよ。ジンの採取する腕が上がってたおかげで、かなり時間が短縮できたよ」


 レンも自分が満足するまで採取が出来、昨日から機嫌が凄く良い。

 それとは反対に、レイの機嫌が段々と悪くなってきていた。

 素材採取の時も魔物を見つけたら、積極的に戦っていたのだがそれでは満足出来なかったみたいだ。

 ただ素材集めが終わりだと聞くと、レイは元気を取り戻して「早く明日

にならないかな~」と機嫌が元に戻ってくれた。


「取り合えず、明日の予定だけど100層に降りてボスに挑もうと思う。多分、それでこの迷宮ともお別れだね」


「そっか~、攻略したら消えちゃうって言ってたもんね……メイちゃんともお別れなんだね」


「メイちゃんともっと仲良くなりたかったな……」


 クロエとレイは迷宮が無くなると、メイともお別れになると気づくと、落ち込んだ様子でそう言った。

 その後、明日のボス攻略の為、俺達はいつもより早めに休む事にした。

 そして翌日、朝食を食べた俺達は迷宮へとやって来て100層のボス部屋の前にやって来た。


「よし、それじゃ中に入るか」


 俺はそう言ってボス部屋の扉を開け、俺達はボス部屋の中に入っていった。

 100層のボス部屋は前回の95層のボス部屋と同じく、部屋の真ん中に石像が置かれていた。

 そしてその石像は俺達が部屋の中に入ると、「ビキッ」と音を出して変化を始めた。

 前回の95層のボスの時は、光輝いていたが今回は逆に暗くなっていて、部屋の中の魔力をもの凄い勢いで吸収していた。


「——ッ!」


 石像の魔力の吸収が収まると、石像は割れ、その中から黒いドラゴンが現れた。

 100層のボスという事もあって、演出はかなり凝っていて更にドラゴンから感じる魔力は凄まじい強さだった。

 保有している魔力の量で言えば、スカイとほぼ同レベルだ。


「皆、気をつけろよ。あいつの魔力はスカイさんよりも強いからな」


「はい!」


「了解!」


「わかった」


 クロエはそう返事をすると、変化を終えたドラゴンは俺達の存在に気が付くとギロッと睨みつけて来た。

 その睨みを受けると、一瞬だけ体が震えた。

 多分、今のは【威圧】だろうな……ってレイの奴、更に嬉しそうにしてやがる。


「ジン君、もう戦ってもいいよね? 作戦通りに戦っていいんだよね?」


「ああ、昨日話した作戦で行こう。クロエ、レン、後方からの支援任せたぞ」


「うん。任せて!」


「任せろ」


 昨夜の作戦会議では、いつも通りの連携をしようという話になり、前衛には俺が戻り、後衛にクロエを下げたいつもの陣形を俺達は作った。

 そして、レイと俺は黒いドラゴンの近くに移動をすると戦いを始めた。


「ハァッ!」


「グルルァァ!」


 黒いドラゴンの皮膚は相当硬く、生半可な攻撃だと無傷だった。

 一発目でそれに気づいた俺は、全力で刀を振るい黒いドラゴンの腹部に大きな切り傷を作った。


「ドラゴンくん、私の事も忘れちゃ駄目だよ!」


 レイはそう言いながらドラゴンに向かってジャンプをして、ドラゴンの背中に大きなダメージを負わせた。

 クロエの様な連携技等は俺達は使わないが、長い期間二人で前衛をやってる俺達は息の合った攻撃でドラゴンを追い詰めて行った。


「グ、グルル……グルルォォッ!」


 近くで自分に傷を負わせる俺達と、後方から魔法で自身が放った魔法やブレスを相殺され続けたドラゴンは怒った様子で咆哮を上げた。

 その咆哮の威力は凄まじく、あのレイも一瞬だけ体が固まっていた。

 ドラゴンはそんなレイの隙を見逃さず、レイに向かって尻尾で払いのけようとした。


「そんな尻尾で大事な味方を攻撃させないよ」


 クロエとレンも固まってる中、俺は普通に動けていてレイに向かって来ていた尻尾を切り落とした。

 竜王との修行が無かったら、俺もレイ達と同じく固まっていたな……修行を頑張ってたおかげだ。

 本物のドラゴン族の頂点に立つヴェルドさんと知り合えてて、本当に良かった。


「ジン君、ありがとう! 尻尾で飛ばされるところだった」


「あれくらいならヴェルドさんから何度か受けた事があったから、耐性がついていたんだ。それじゃ、ドラゴンも大分体力が削られてるみたいだ。ここは一気にたたみかけるぞ!」


 ドラゴンは尻尾を切られバランスがおかしいのか、片膝をついた状態でこちらを見つめていた。

 俺はそんなドラゴンに向かってそう言うと、クロエ達はやる気に満ちた声で反応をして、俺達は更にドラゴンに向かって攻撃を続けた。


「ぐ、グルル、ル……」


 咆哮を受けた時は驚いたが、尻尾を切られた事が原因か、攻撃が単調になったドラゴンは30分も持つ事は無く力尽きて倒れた。

 こうして迷宮のボスを倒した俺達は、遊戯神の迷宮の攻略者となった。

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