第358話 【まだ続くよ迷宮攻略・2】


 ギルドに到着後、俺は受付でフィーネさんを呼んでもらい部屋に移動した。

 そしてそこで、ギルドが持ってる迷宮の情報を貰った。


「第一探索者の人でも、既に出てきてる人とか居るんですね」


「そうですね。ジンさん達は5層のボス討伐時、無事に住宅券を手に入れた様ですが出てきた人達は住宅券を手に入れられなかった人達です」


「あ~、確かにどんなに悪い家でも、迷宮内で快適に過ごせる空間があるのと無いのとじゃかなり違いますもんね」


「はい。普通の迷宮ならまだいいんでしょうけど、一部の冒険者が快適に攻略してるのに自分達は、と落ち込み攻略する気が失せた冒険者が多数います」


 まあ、確かに他の人達が快適に攻略してるのに、自分達は辛い思いしながら攻略するのは辛いだろうからな……。

 俺達なんて執事も付いた上に、広い浴場、パーティー全員の個室が完備されている。

 普通の場所ならまだしも、あの迷宮ならかなり精神的にくるだろう。


「まあ、その人達の気持ちもなんとなく理解できますね。多分、その人達も住宅券を手に入れた人達の事を知らなかったら、まだ攻略を頑張れたでしょうね」


「私もそう思います。特に私はジンさん達の話を聞いていたので、確かに比べたら差が酷いと感じましたから」


「俺達なんて管理してくれる執事や、男女別れた主要箇所、個室。全て揃ってますからね」


「迷宮内で貴族の様な生活ですものね」


 そうフィーネさんに言われて、確かにそんな感じがするなと少しだけ思った。

 その後、他に特に変わった事が無いのか聞いて、今も少しずつではあるけど迷宮目当てに王都に人が集まって来てるらしい。

 それらの情報を聞いた俺は、フィーネさんにお礼を言ってハンゾウの店へと移動した。


「昨日の今日で、どうしたんだ? 暇なのか?」


「違う。昨日はちょっとした用事で、今日は50層まで攻略したから新しく情報を仕入れようと思ったんだよ」


「50? お前等もう50層まで攻略したのかよ……」


「まあ、俺達の能力だとどうしてもそうなるからな、ハンゾウならある程度俺達の力量を知ってるから想像がつくだろ?」


 情報屋であり、ずっと俺達を見て来たハンゾウに俺はそう問いかけた。


「まあ、ある程度は想像がつくが……正直、昔程お前の力を把握しきれてないのは事実だな」


「そうなのか?」


「ああ、俺のこれまでの人生の中でお前程、規格外な速さで強くなる奴はいなかったからな……どこの世界に15歳の奴が悪魔を倒して、国を亡ぼす奴がいるんだ?」


 ……経歴だけみたら、確かにおかしいな。

 勇者も魔王討伐したり、最悪状態のジンを倒したりしてたけど、それは仲間との協力や、命を懸けて戦って掴んだ勝利だ。

 俺の場合、悪魔はまあ割とヤバかったけど、国に関しては精神以外はそんなだったからな……。


「改めて他人から聞くと、経歴はおかしいな」


「そうだろ? 勇者の噂もお前がいたおかげで直ぐに止まって、今は楽しく旅行してるみたいだぞ」


「お前、勇者がどこにいるのか知ってるのか?」


「俺を誰だと思ってるんだ? 王都一の情報屋だぞ?」


 そう自信満々に言ったハンゾウを俺は半目にで睨むと、丁度ハンゾウの部下が情報の整理が終わって資料を持ってきてくれた。


「そう言えば、ギルドで王都にまた人が集まって来てるとか聞いたけど、問題とか起きたか?」


「いいや、今の所は特に何も起きてないぞ。ただまあ、一つだけ気になるとしたら迷宮のアイテムを狙ってるのか商人が集まってて、実際に問題が起きた訳じゃないが少し心配ではあるな」


「商人か……あっ、商人で思い出したけど、今回の遊戯神の迷宮にこれまでの神様の迷宮とは違う場所が用意されてたぞ」


 そう俺が言うと、ハンゾウは目を開き「本当か?」とズイッと顔を寄せた。


「ああ、迷宮の住宅街の奥から行ける場所なんだが〝迷宮商店街〟と言って、迷宮内に店が用意されてたんだ。服屋から雑貨屋、食堂なんかも用意されてた」


「ッ! マジかよ。そんな場所が用意されてたのか……もうジン達は行ったんだよな? 他の奴等は、行けそうなのか?」


「どうだろうな? 時間の問題だとは思うけど、一応その商店街の解放条件が50層突破だから、入れる人は限られていると思うな」


 50層突破した者だけと言うと、ハンゾウは「そこまでしないといけないのか、逆に興味が湧くな……」と小声で言った。


「何なら、暇な時にでもそこを調べてきてやろうか? 欲しいだろ、情報?」


「そうだな、現状お前等しかいないし、暇な時にでもいいから調べてくれ、情報は金か? それとも、また新しい情報か?」


「そうだな、王都に集まって来てる商人達が本当に迷宮のアイテムが欲しくて来てるのか、そこら辺を調べてくれるか? 一応、姫様も気づいていて何かしらの情報は探ろうとはしてると思うから、今度会う時の手土産に持って行こうと思う」


 50層も突破したし、これからは休みも作りながら行く予定だから、何処かのタイミングで一度は姫様の所に顔を出そうと思っていた。

 それなら、今少し問題になりそうな商人に集まって来てるのを調べておいて損は無いだろう。

 それから俺はハンゾウから貰った資料を【異空間ボックス】に入れて、迷宮の家に戻って資料に目を通す事にした。

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