第330話 【その後・2】


「神聖国の領土は、竜人国が貰うのか」


 まず最初のページには、神聖国の領土だった場所の持ち主が何処になるのかが記載されていた。

 元神聖国の領土から近く、同盟国である竜人国が貰う事になったらしい。

 ただ現状はただの土地で、ドラゴン族によってボロボロな状態だから特に何かに使うという目的はないみたいだ。


「……竜人国の土地になるんなら、もう少し手加減すればよかったな。休暇期間が終わったら、どの程度か見て直せそうなら直そうかな」


 俺はそう思いながら、他のページに書かれてる情報も見て、全部見終わった俺はそのまま少し休む事にした。

 そうして夕食の時間になった俺は、久しぶりに皆と一緒に食事をする事にした。


「一緒の宿で暮らしてるのにジン君を見るの、なんだか久しぶりだね」


「ジン君、大丈夫だった? ずっと、一人で休んでたけど」


「もう大丈夫なのか?」


 クロエ達は久しぶりに顔を合わせた俺の事を心配して、そう声を掛けてくれた。


「ああ、もう大丈夫だよ。言うて怪我とかはしてなかったからな、精神的に疲れてただけだからな」


「……そりゃそうだよね。でも無事に治ったみたいで本当に良かった」


 そうクロエが言うと、レイ達も「良かった」と口にした。

 そうして俺達が食事をしていると、冒険者活動を既に再開している姉さん達が宿に戻って来た。

 あの日、襲撃されてボロボロになっていた姉さん達だが、自分達が弱いせいだと、より強くなる為に治って直ぐに活動を再開している。

 そんな姉さん達は俺を視界に入れる、驚いた顔をし、姉さんは「ジン君!」と叫び、俺の元へと駆け寄り抱き着いた。


「ちょっ、ね、姉さん!?」


「会ってくれないから、ジン君重い病気にかかってるのかってずっと心配だったんだよ……」


 姉さんは涙を流しながらそう訴えかけ、そのまま顔を俺の胸に埋めた。

 そんな光景を後からきた姉さん達のパーティー仲間は、微笑ましそうな視線で見て来た。


「ジン君、今回は本当にありがとう。ジン君が居なかったら、私達は今頃ここに居ない」


「うんうん、オラ達が生きてるのはジン君のおかげだよ。ありがとう!」


「本当に助かったわ」


 そう姉さん達の仲間は俺にお礼を口にすると、ルル姉も「助けてくれて、ありがとう」とお礼を言った。

 そして最後にフィオロは俺の顔をみて、お礼ではなく「ごめんなさい」と謝罪を口にした。


「別にお前が謝る事じゃないぞ、相手はあんなに沢山居たんだし、最善をお前は尽くしたと俺は思ってる」


「……でも、ヘレナ達を危険な目に合わせたわ」


 そう悔しそうな顔で言うフィオロに対して、俺は「なら、力いるか?」と聞いた。


「えっ?」


「お前が今回、姉さん達を命懸けで守った事を評価して、封印してる力を少し開放するかって師匠と話したんだよ。このまま自力で強くなる事もお前は可能だけど、より早く姉さん達を守る力が欲しいなら後で師匠の所に行って力を少し開放させる事も出来るぞ」


 その言葉にフィオロは驚いた顔をして、姉さん達の事を見た。

 そしてフィオロは視線を俺に戻すと、頷き「その報酬、貰うわ」と言った。


「でも、いいの? 私が力を取り戻したら、ジンが困るんじゃないの?」


「今更だろ? お前が姉さん達の事を大切な仲間と思ってるのは、俺もそうだけど皆分かってるからな」


 そう言うと、フィオロは赤面して「な、何のことよ!」と反論した。

 しかし、その言葉を聞いた姉さんの仲間達は、フィオロを見てニヤッと笑みを浮かべた。

 その後、フィオロは姉さんの仲間達にイジられながら一緒に食事をした。

 ちなみに食事中、姉さんは俺から離れてくれず、俺は少し食いづらい状況で食事をする事になった。


「弟子ちゃん、回復したみたいね」


 食後、俺はフィオロを連れて師匠が居る空島へと移動した。


「はい。数日間ずっと部屋にこもって瞑想をしていたおかげで、何とか回復しました。治療法を教えてくださり、ありがとうございます」


「良いのよ。弟子ちゃんが無理してでもやり遂げようとしてたのは分かってたから、治療できるギリギリまで見てたのよ。それで、フィオロが居るって事は力を貰いに来たのね」


「ええ、貰えるものは貰っておきたいと思ったのよ。でも、いいの前回も力を戻してもらって大分元に戻って来てるわよ?」


「ふふっ、今の状態なら渡しても良いって私が思ったのよ。そこまで人間が好きになるとはも思っても居なかったわ」


 師匠は笑いながらそう言うと、フィオロは再び顔を赤面させ「いいから早くしなさいよ!」と師匠に対して文句を言った。

 

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