第320話 【国の繋がり・3】
何年も王城に通っていた俺達だが、こうして王子と話すのは初めてで俺も少しだけ緊張していた。
「ふふっ、ジンの緊張した顔は久しぶりに見たわね。ルー、よくやったわ」
姫様がそう言うと、王子は「姉さん変わったと思ってましたけど、ジンさん達に対しては昔のままですね」と笑いながら言った。
「ジンさん達には、いつも姉さんがお世話になってると聞いてます。こんな姉ですが、これからもよろしくお願いします」
「こんなって、何よ? こうみえて、世間では素晴らしい聖女として有名なのよ?」
「それは、姉さんの本性を知らない人達の印象ですよね? ジンさん達なら、言ってる意味が通じると思いますよ」
そう王子から言われた俺達は、姫様からの視線にサッと目を合わせないようにした。
そんな俺達に王子は笑い、姫様は「ジン~」と睨みながらそう言ってきた。
「ふふっ、ジンさん達がこんなに面白い人達って知ってたら、もっと早くに声を掛ければよかったよ」
「そう言えば、王子から声を掛けられることはありませんでしたね」
「うん、だって姉さんから止められてたからね。僕が話しかけたら、ジンさんに迷惑を掛けるからって言って止められてたんだ。今日は、折角のお祝い事だからお父様からジンさんと交流をしても良いって許可が下りて、こうして挨拶に来たんだ」
ふむ、姫様が王子を俺に近づけないようにしていたのか。
まあ、どうしてそうしていたのか、何となくだけど予想は付く。
「姫様、俺達が王子の傍に着くように貴族達から仕向けられないように、わざと王子と俺の距離を取らせていたんですね」
「……ええ、私との関係はもう隠すのは無理だと思ってたから、ルーとは全く親交が無いように見せる為にわざと距離を話していたのよ。それなのに
ルーったら、私が意地悪してみるみたいに言って」
俺の言葉に対して、姫様は王子を睨みながらそう言った。
王子は姫様の考えを聞いて、ハッとした顔で「そ、そうだったんだ。ごめんね姉さん……」と謝罪をしていた。
「姫様、そこまで考えていたんだ。知らなかった……」
「私達てっきり姫様が私達との時間を取らせないように、距離を取らせてたんだとばっかり思ってました」
「時間を取られるから距離を置かせていたって事に関しては、否定はしないわよ。だって、ルーはジンと同じ歳だから、そっちの方が気が合うかも知れないから、仲良くさせないようにしていたのも本当よ」
「姉さん……僕の謝罪を返してよ」
クロエ達の言葉に本音で返した姫様に対して、王子は残念そうな子を見るような目で姫様を見ながらそう言った。
その後、姫様達は他の貴族の所にも挨拶があるからと言って、この場を離れて行った。
姫様達が去った後、挨拶に来る人の流れは止まり、それからは普通に晩餐会を楽しむ事にした。
「……気持ち悪い」
晩餐会で俺は久しぶりに酒を飲み、普段の見慣れてないせいで気分が悪くなっていた。
宿に帰宅してから、俺はシャワーを浴びて直ぐに寝たのだが、完全に二日酔いな上に、寝つきが悪く寝不足の状態だ。
「ジンが二日酔いなんて、珍しい姿だな。普段、酒飲まないけど流石に晩餐会だから飲んだのか?」
「飲む予定じゃなかったけど、流石に王族から誘われたら飲むしかなくてな……う~、気持ち悪い」
俺はそう言いながら、リカルドが作ってくれた胃に優しいスープを飲み、ホッと一息ついた。
既に今の時間は、普段起きる時間の一時間程経った頃で、クロエ達は先に朝食を食べて、今日は自由行動の日だから宿には居なかった。
「悪いけど、2時間後に起こしに来てくれないか? 本当は朝から行こうと思ってたけど、流石にこの状態で行っても意味が無いからな」
「起こす事は、別に良いけどよ。そこまできついなら、今日は休んでた方が良いんじゃないか?」
「いや、酔いつぶれてる暇は無いからな……一先ず、レンが用意してくれていた胃薬を飲んで寝る事にするよ」
リカルドにそう言って俺は、スープを飲み干して部屋へと戻り、胃薬を飲んで2時間だけ休む事にした。
「それで、朝から来る予定だったが昼に来たって訳か。お前が酒に弱いなんて、知らなかったな」
「あまり飲まないからな……そう言うハンゾウは酒は得意なのか?」
「晩酌程度に飲むから、ジン程弱くはないぞ? ジンはこれからもそういう付き合いがありそうだし、訓練しておいた方が良いと思うぞ?」
「……飲む習慣でもつけておいた方が良いかもな」
飲まな過ぎて耐性が無いのも今後、付き合いで飲む際に相手に迷惑を掛けてしまうからな。
これから、少しずつ酒耐性でもつけて行こうと、俺はハンゾウとの会話でそう心に決めた。
それから俺は、ハンゾウに昨日一日の王都の様子を聞き、その報告から今後の神聖国の動きについて話し合いをした。
話し合い後、本来であれば見回りをする予定だった。
しかし、俺の状態を見てハンゾウが「今日も俺達に任せて、ジンは休んでろ」と言って俺は強制的に宿に帰らされ、俺は一日休む事にした。
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