第309話 【情報収集・3】


 空島へと移動してきた俺は、師匠の家へと向かい玄関の呼び鈴を鳴らした。

 呼び鈴を鳴らして直ぐに、扉の奥から「入っていいわよ」と師匠の声が聞こえ、俺は家の中へと入った。


「弟子ちゃんがこっちに来るのは久しぶりね。何か用事でもあったのかしら?」


「はい。実は、二つ程お話したい事があって来たんです」


 俺はまず最初に、神聖国の事について話をした。

 師匠も最近の王都の変化に気づいていたらしく、そこに神聖国が絡んでると知ると「またあの国なの?」と呆れた口調で言っていた。


「神聖国の事、知ってるんですか?」


「知ってるも何も、大昔に私達を敵と認定して追いかけまわしてきた相手よ。魔女狩りだなんて言って、本当に酷い目にあったわ。反撃したらしたで余計に事が大きくなるからって、反撃せずに逃げてたけど、まさか弟子ちゃんにまで迷惑を掛けるなんて、あの時に消しておけば良かったわ」


 師匠は真顔でそう言い、俺は師匠の威圧に少しだけ体を震わせた。

 師匠を敵に回すなんて、神聖国は本当に馬鹿なのか? 

 まあでも、考えられるのは裏にいる悪魔が師匠達を警戒して、排除しようとした動きなのかもおれないな。


「それにしても神聖国が悪魔と繋がってるのは、私も初めて知ったわね。上位の悪魔は私が目を光らせてるからそんな活発な動きはしてないけど、下位の悪魔はどうしても力が弱くて見逃しちゃうから、それで動きの差が出てるのかも知れないわね」


「それと今回の悪魔ですが、ベルロスやフィオロみたいに特殊な性格の持ち主ではなく。悪魔本来の扇動が得意なタイプの様で、悪魔界から人間を支配しようとしてる奴等だとあいつらは言ってました」


「……成程、それなら尚の事私から逃げる事は出来るわね。下位の悪魔の癖に色々と考えやってるみたいね」


 師匠はニヤッと笑みを浮かべ、「悪魔への対抗策の強化が必要そうね」と楽しそうに言った。

 そして次に、ここに来た目的の二つ目であるレドラスの部下についての話をした。


「レドラスが力より、部下を望むなんてね……本当に掃除好きが開花したのかもしれないわね。悪魔って上に居る悪魔程、変な性格なのは弟子ちゃんも薄々気づいてるでしょ?」


「まあ、レドラスの掃除好きだったり、ベルロスの戦闘狂みたいな性格は悪魔には似合わない気はしますね」


「他の上位の悪魔も癖のある悪魔なんだけど、レドラスだけ今まで普通の悪魔と変わりが無かったのよ。それでどんな性格なんだろって、前から考えてたけど、まさかの掃除好きだったのね。面白いわね」


 師匠は「今度レドラスに会いに行こうかしら」と、笑みを浮かべながらそう言った。


「それで部下が欲しい立ったかしら? その位なら、良いんじゃないかしら? むしろ、力の開放よりそっちの方がこの世界的にいいと思うわよ」


「そうなんですか? 悪魔が集まる方が危険なんじゃないですか?」


「そうでもないわよ。現にフィオロは少し力を取り戻して、以前の力に戻す為にこっちの世界で頑張ってるでしょ? 力を封印した所で、成長を止める事は出来ないわ。だから少しでも力を与えるより、一匹位で満足するならそっちの方が良いわよ」


 師匠の言葉を聞き、確かにフィオロは力を封印された頃に比べ力が劣っているとはいえ、この少しの期間で力を取り戻しつつある。


「まあ、でもフィオロに関しては大丈夫だとは思うわよ。あの子、本心からヘレナ達の事を守りたいみたいでヘレナ達が居ない所で、沢山努力してるみたいよ」


「そうなんですか? 全く知りませんでした」


「ふふっ、頑張って隠しているみたいよ。まあ、私には隠しきれてなかったけどね」


 そうして俺は師匠の言葉を聞き、少しだけフィオロの事を見直した。

 その後、師匠は神聖国の問題が解決した後、レドラスに一匹部下を付ける約束をしてくれ、俺はその事をレドラスに伝えに向かった。


「マリアンナが許可してくれたのか? 正直、無理だと思ってた」


「師匠の考えでは、力を戻すよりも部下を一人つける方が良いって言ってた。それに力も完全に取り上げるなら、そっちの方が断然良いってな」


「まあ、確かに力を取り戻したらその分、本来の力に戻るからマリアンナもそっちの方を危惧したんだろう。俺としては、この生活も案外気に入ってるからな元々あまり戦いが好きでも無かったし、力よりも掃除の効率化をしたいからな」


 レドラスは嬉しそうにそう言い、早く部下が来て欲しそうにしていた。

 その後、報酬についての話がついたので、今後の神聖国の動きについての話し合いを始めた。

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