第308話 【情報収集・2】


 宿に帰宅後、俺はクロエ達に無事に話をしてきたと報告をした。

 そして夕食の席で姉さん達に今の王都が危険な状況、これからは一人であまり行動しない様にとお願いした。

 姉さん達も最近の王都の変化に気づいていたらしく、事件が解決するまで依頼以外で外出は控えめにしておくと言っていた。

 その際、姉さん達と共に行動をしているフィオロが、神聖国の名前に対して反応をしていた。


「それで私だけ呼び出すって何?」


 話し合い後、皆と別れた俺はフィオロを部屋に呼んだ。


「さっき俺が姉さん達に神聖国の話をしてる時、神聖国の名前に反応してたよな? 何か知ってるんじゃないかと思ってな」


「ほんと、ここまでやり辛い相手はマリアンナだけで良いのに……ええ、そうよ。神聖国の事は、昔から知ってるわ」


 俺の予想通り、フィオロは神聖国の事を以前から知っていたようだ。


「というか、あの国程悪魔と根強い関係の国は無いわよ。腐りきってるわよあの国は」


「そこまで酷いのか? 正直、悪魔と関係があるかもとは予想してたけど」


「あの国が何で世界が平和になったら嫌なのか、それは悪魔が人間の幸せな顔を見たくないからそうしてるって、神聖国に呼び出されてる悪魔に聞いた事があるわ」


 フィオロの話を聞いた俺は、もしかしたら俺が予想していた以上に神聖国とはヤバい国なのかも知れないと思い始めた。


「まあ、でもジンの敵じゃないと思うわよ。正直、あの強くなったベルロスと対等に戦える悪魔なんて居ないと思うわ。それこそ、あの時と同じように数万の兵士を犠牲にすれば可能性はあると思うけどね」


 その言葉を聞き、俺は【異空間ボックス】から刀を取り出してベルロスを呼び出した。


「ベルロス、悪魔にお前と対等に戦える奴は居たか?」


「ん? まあ、遊び半分でだったら居たとは思うが、脅威に感じる奴はいなかったな。ただ悪魔にも俺みたいに戦闘狂の様な奴もいれば、また違った性格の悪魔も居て、そういう奴等は大抵人間を上手く使うのに長けてたりする」


「私も魔法は得意だけど、人間を扇動したりする事は苦手ね」


 確かに設定資料にも悪魔には、色んな悪魔が居るみたいな事が書かれていた。

 ジンに興味を示す悪魔に限っては、癖のある奴ばかりだったが基本的に悪魔は人間同士を戦わせたりするのが好きだとも書いてあった気がする。


「それで言うと、レドラスは扇動が得意な悪魔だった気がするから、今回の事を聞くならレドラスの方が良いと思うわ」


「えっ、レドラスってそっち側だったのか? 今じゃ、お掃除悪魔と化してるレドラスだぞ?」


「それはジンがしろって言ったからでしょ? 一応、あれでも知識は悪魔の中でも豊富だから、今回の事も私達よりもレドラスが活躍すると思うわよ」


「それはそうだな、あいつは悪魔の中でも頭が良いって噂で下位の悪魔からも慕われていたからな」


 二人の話を聞いた俺は、明日レドラスに会いに行こうと決めた。

 そして次の日、クロエ達には引き続き知り合いの所て情報収集をしてもらい、俺は拠点に居るレドラスの所へと向かった。


「まあ、このやり方は確実に裏に悪魔が居るだろうな。どう見ても、徐々に人間を追い詰めるやり方で悪魔が好むやり方だ」


「そうなのか? 正直、俺は神聖国が腐ってる国としか思ってなかったけど、裏に悪魔が居たのか」


「神聖国が腐ってるのは本当だから、ジンの予想も外れた訳では無い。あの国は昔からそうだからな、上手い具合に悪魔と取引をしてどの時代も常に自分達に利益があるように動いてるんだ」


 レドラスの話を聞いた俺は、この世界の歴史では常に神聖国がどの時代でも一定の活躍をしていた。

 今思い返せば、自分達が上に立つ為に自作自演でやっていたのではないかと感じた。


「それでその話を俺の所にしに来たって事は、手伝ってほしいのか?」


「ああ、ベルロス達から聞いたがお前は扇動が得意なんだろ? 今回の事で、次に何が起こりそうなのか相談しようと思ってな」


「成程ね……タダで教えるのは、無理だぞ?」


「……分かってるよ。どうせ、力を戻せって言うんだろ」


「いや、それも考えたが今回は違う。神聖国と取引をしてる悪魔の内、一匹捕まえてほしい。正直、この建物の掃除を俺一人は大変すぎるから部下が欲しいだ」


 レドラスのその言葉に対し、確かに拠点の大きさを考えてみたらレドラス一人で掃除するのは大変だろう。

 しかし、だからといってレドラスに部下を与えるのは、ちょっと難しい話だ。


「……そいつの力は完全に取り上げるって話なら、師匠も納得してくれるとは思うが、力がある状態で部下にするのは厳しいぞ」


「大丈夫だ。労働力が欲しいだけだからな」


 そう言ったレドラスに対し、俺は師匠に聞いて許可が下りたらまた報告に来ると言って拠点から、俺は師匠が居る空島へと転移で向かった。

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