第296話 【蹂躙・3】


 そして俺はそのまま、魔王軍の上空へと移動した。


「かなり数だな……ここはゲームとは変わりないな」


 ゲームではこの最終局面である魔王城前には、多くの魔王軍と人類の軍が戦いを繰り広げ、勇者一行が先陣を切って前に進んだ。

 そんな感じで書かれていて、勇者達が魔王城の中に入り魔王との戦いに向かう感じだった。


「ざっと見積もっても、数万は居るな……これはレベルも上がりそうで、ワクワクしてきたな」


 今の俺のレベルは97。

 この世界の元であるゲームでは、レベルの最大値は100とされている。

 今回、その壁を確認出来そうだ。


「さてと、そろそろあの煩い奴でも出すか」


 そう言って俺は【異空間ボックス】から、黒い刀へと変貌した愛刀を取り出した。

 刀を手に持ち、鞘から取り出すと一緒に黒い靄が出て来た。


「ほ~、魔王軍と戦うのか。これは面白そうな戦いだな」


「おい、勝手に出てくるな。ここには、聖女も勇者も戦女も居るんだからな」


「大丈夫。今の俺は、ジンの魔力で出来た物体だから、それこそ魔女クラスのおかしい奴にしか俺が悪魔だと気づかれないさ」


「だとしてもだ。約束しただろ? 戦いの時に使うなら、黙って刀の中に居るって」


 そう俺がジーと睨みながら言うと、ベルロスは「はいはい、主様の命令に従いますよ」と言って刀の中に戻っていった。

 約束通り、魔力を使わずともベルロスは大人しくしているみたいだ。

 これなら、俺も全力で魔王軍と戦う事が出来そうだ。


「リウス。行くぞ」


「キュ!」


 俺の言葉にリウスはそう返事をすると、ほぼ同時に俺は魔法を放ち、リウスは超強力なブレスを放った。

 突然上空から超威力の魔法とブレスを浴びた魔王軍は、一瞬にして多くの兵士を失い戸惑っていた。

 一部の魔王軍は上空に居る俺に気づいていたが、直ぐに二発目三発目と魔法を撃ち続け、一気に魔王軍を壊滅状態へと追い込んでいった。


「これに苦戦していたって、相当姫様達は精神的に疲れてたんだろうな……」


 そう思いながら魔王軍を蹂躙していると、一部の魔王軍が魔法で俺の攻撃から身を守り、反撃をしてきた。

 しかし、その反撃の魔法をリウスはペシッと叩き落とし、逆にそこに向かってブレスを放ち反撃をしてきた魔王軍を倒してしまった。

 うん、流石リウスだな、ドラゴン族に鍛えられただけある。

 本来、こういった場に出てこないドラゴンと、遜色ない力を持つリウス。

 こいつが居る時点で、魔王軍の勝ち目なんて最初からないと言っても良い。

 ましてや、リウスはこれでも成長期で今物凄い速度でレベルが上がっていて、強くなり続けている。


「リウスもこの戦いが終わったら、レベルがどのくらいまで上がったか楽しみだな」


「キュ~」


 俺の言葉にリウスは、楽しみ~という風な感じでそう鳴き、その後も俺達は魔王軍を倒し続けた。

 どんなに数が居ても、既に四天王は居なくなり、統括してるリーダーが居たとしても、俺とリウスの攻撃に耐える事は出来ていなかった。

 それに一部倒し損ねたとしても、クロエ達のカバーがあって一匹も逃がす事無く、魔王軍を倒し続けた。


「なあ、ジン。さっきから魔法連発してるけど、魔力は大丈夫なのか?」


 俺の魔力を心配したのか、ベルロスがそんな事を聞いてきた。


「ん? ああ、お前との戦いでかなり魔力が上がってるから、このくらいなら平気だ。それに念の為に魔力回復薬も沢山用意してるからな」


「という事は、この攻撃は止まる事が無いという事か……魔王軍も可哀想だな」


「まあ、敵だから仕方ない」


 そう言うと、ベルロスは「あいつらから見たら、ジンは悪魔だな」と言って再び黙った。

 まあ、確かに魔王軍からしたら、悪魔と思われても仕方ないな。


「それが戦いだしな」


 そう言った後、俺は更に魔王軍を倒し続け、戦場に出て3時間程が経ち、魔王城の外に居た魔王軍は全て俺達が倒してしまった。


「もう終わったの!?」


 魔王軍を倒し終えた俺達は待機してもらっていた姫様達の所に戻り、戦いが終わった事を伝えた。

 報告を聞いた姫様は驚き、この場に居るユリウスと勇者も驚いた顔をした。


「まだジン達が戦い初めて、3時間位しか経ってないわよ?」


「……ジン君の凄さはある程度は知ってたつもりだけど、まさかここまで凄いとは思わなかったよ」


「ハハ、勇者としての立場が無いよ」


 姫様は驚き、ユリウスは呆れ、勇者は少しだけ自信を無くしてしまった。

 その後、今が魔王城を叩くチャンスだと姫様は言って、直ぐに戦女と精鋭部隊に集合をかけ、勇者達は魔王城へと向かった。

 俺達も本来だったらそこに入るべきなんだが、魔王軍の増援が来る可能性も考えて、俺達は外で警戒する部隊として残る事にした。

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