第289話 【世界樹・2】


 その後、俺、師匠、ナシャリー、セシリアは4人でどうするか話し合いをはじめた。


「まず、弟子ちゃんは不老になる事は嫌なのよね?」


「そうですね。死にたくないとは思ってますが、だからと言って一生生きたいとも思ってないので、セシリアさんには悪いですが不老になる事が条件なら守護者にはなれませんね」


「うう、不老が邪魔になるなんて……」


 俺と師匠の言葉を聞いたセシリアは、涙を浮かべてそう言った。

 う~ん、ここまで泣かれるとはな……でも、不老にはなりたくないしな。


「そもそも、不老って必要なんですかね?」


「そりゃ、大事だよ! だって、いつ私が攻撃されるか分からないから、守っててもらいたいんだもん。それで、私を守れる器をこの数百年ずっと探してたんだから」


「ふむ……守れる器って何か条件とかあるんですか?」


「うん。器の条件は二つで、強さと魔力の多さだよ。強さは私を守る力で、魔力は私と契約する為には魔力が一定以上ないと無理なの」


 セシリアの言葉を聞いた俺は、それなら俺以外にも居るんじゃないか? と思った。

 それこそ、英雄王だったブラドとか……。


「セシリアさん、数百年の大戦で活躍した英雄王って知ってますか?」


「知ってるよ。でもあの人は器には適してなかったの、強さはあったけど魔力が足りなくて契約は出来なかったわ。本当にあとちょっとだったんだけどね……」


 魔力が足りなくてか、確かに聞いた話だとブラドは戦士系で大戦時代を活躍した英雄だから魔法は不得意だったのかも知れないな。

 でも、その子孫であるエミリアはブラドとは違い魔法が得意としていたはずだ。


「……その英雄の子孫と俺は知り合いなんですが、一度会ってみませんか?」


「う~ん、でもジン様以上に適した方は居ないと思いますけど……わかりました。一度、会ってみます」


 セシリアはそう言ったので俺は、師匠達と共に商人の里の近くに転移した。

 そして、里がある森の中に入ると、以前もあったゴブリンが現れた。


「ニンゲン、ドウシテキタ? ナニカ、ヨウカ?」


「ああ、ちょっと長に会わせたい人が居てな。里に入ってもいいか?」


「ジンナラ、イツデモカンゲイ。ジンノツレテキタモノモカンゲイスル」


 ゴブリンはそう言うと、俺達を里まで案内してくれた。


「凄いわね。この里の周り、かなり強力な結界で守られてるわ」


「うん、これは凄い」


 師匠とナシャリーは、里に張られてる結界に気づいてそう感想を言っていた。

 その後、里に着いた俺達はそのままエミリアの家に向かった。


「突然の来訪ね」


 エミリアは家の玄関に現れると、そう俺達を見て言うと家の中に案内してくれた。

 そして俺はエミリアに、師匠達を紹介して今日来た目的を伝えた。


「世界樹の守護者にね……また凄い事を言いに来たわね。貴方が悪魔を倒したって話を聞いたばかりで、次は世界樹だなんて本当に面白いわね」


 エミリアは俺の話を聞くと、笑みを浮かべてそう言った。

 そしてセシリアに対して、自分は世界樹の守護者としての器があるか聞いた。


「はい! 適正あります! まさか、この時代に二人も器を見つけられるなんて思いもしませんでした」


 セシリアはエミリアからの質問に対して、興奮した様子でそう言葉を返した。

 そんなセシリアを見た師匠は、エミリアを見て「似てるわね」と口にした。


「あの英雄王と似た魔力を持ってるわね。それに雰囲気もそっくりだわ」


「ありがとうございます。放浪の魔女様には、いつか会ってみたいと思ってました。まさか、こんな形で会えるとは思いもしませんでした」


 エミリアは師匠の言葉に対して、笑みを浮かべると嬉しそうにそう言った。

 そんなエミリアの言葉に対して、師匠は「あら、私と会いたかったの?」と聞いた。


「はい、放浪の魔女様は私の尊敬する方なんです」


「あら、英雄王の子孫にそう言ってもらえるなんて嬉しいわね」


 エミリアの言葉に師匠は笑みを浮かべ、嬉しそうにそう言った。

 それから少し、エミリアは師匠のどんな所が尊敬してるのか話をしていると、セシリアが「あの~」と静かに手を上げた。


「その、エミリア様は不老になる事とか、私の守護者になる事とか嫌だったりしますか……」


 俺に断られた事で、相手が誰しもが喜ぶ条件じゃないと感じたセシリアは遠慮気味にそう聞いた。


「私はいいですよ。今も私は不老と変わらない存在なので、今更不老になった所で私には得でも損でもないので、逆に世界樹という大きな力を貰えるので喜んで引き受けますよ」


 エミリアの言葉を聞いたセシリアは、涙を流して「ありがとうございまず~」と叫び、エミリアに抱き着いた。

 抱きつかれたエミリアは、鼻水を流すセシリアの顔を手を押しのけ、ちょっとだけ迷惑そうな顔をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る