第260話 【訓練の終わり・3】


 訓練わ始めると、姫様とユリウスは真剣な顔をして兵士達の動きを見ていた。

 兵士達はそんな姫様達が気になるのか、普段より少し集中力が無かったが徐々に慣れていき、一時間もすれば普段通りの動きとなっていた。


「何とか、普段通りの動きになったか……正直、ずっとあのまんまかと焦ったよ……」


「まあ、でも緊張しててもそれなりには動けてたし、大丈夫なんじゃないか?」


「うんうん、姫様達も真剣に見てたし多分大丈夫だと思うよ?」


 心配に思う俺とは違い、レン達はそう言ってゴーレム操作で手が離せないクロエも「私もそう思う」とレン達と同じ考えと言った。

 その後、特に問題も無く一度目のゴーレム討伐訓練が終わり休憩に入った。


「あら、もう訓練は終わりなの?」


「いえ、ゴーレムと戦った後はああして休憩にして、休憩を兼ねて反省会をしてるんです。元々集められた兵士達なので、誰がどういう事が得意なのかお互いに分からないので話し合ってもらってそういう所を知って行ってもらってるんです」


「成程、凄く良いわね。他の所だと、喧嘩したりしてるのにここは皆仲がいいのね」


「そうですね。そこに関しては最初の選定の際に、性格などをちゃんと見て決めたのが良かったんだと思います。実力も大事ですけど、仲間意識が強かったり、仲間と協力できる人の方が個で強い人より大事ですからね」


 姫様とそう話をしていると、ユリウスが「力より仲間意識……確かにそれは大事ですね」と言って話に入って来た。


「私が見てる所や他の所の兵士もそうですが、どうしても自分の方が強いと思う方が多く、ジン君達の兵士達の様な意識がなってない方が多いですかね」


「まあ、そうでしょうね。選定の際でもかなりそう言った方が集まってるなと感じましたから、多分他の所は大変だろうなってクロエ達とも話してました」


「私達の所でいい人材を集め過ぎたかもって、訓練を始めて少し経った時から思ってました。他の所、多分大変だろうなって」


「まあ、予想通り大変な所もありますね。比較的マシな所は私が見てる所ですが、アンドルさんが見てる所は人数も多い分対立も酷いらしいですね」


 ユリウスのその言葉を聞いた俺は、少しだけ申し訳ない気持ちとなった。


「対立って、同じ兵士同士でする意味あるんですかね……」


「仕方ないと思うよ。それが人間だからね。世界が魔王を討伐しようと頑張ってるのに、それに協力せず逆に邪魔してる国もあるからね……」


 多分、ユリウスが言ってるのはイロス帝国の事だろう。

 ゲームでも度々問題を起こしていて、一部は魔王軍と繋がって居たりと本当に邪魔な国だった。


「それは今は良いわよ。それより、ジンに聞きたい事があるんだけど良いかしら?」


 帝国の話が出るのかなと思っていると、姫様がそういって話題を切り替えた。


「はい、いいですよ。何ですか?」


「兵士達が着てる装備だけど、あれって全部隠れ里製の物?」


 姫様は兵士達が着てる防具や、使ってる武器を見てそう言うと。

 姫様の言葉を聞いてユリウスもハッとした顔で、兵士達を見ると「嘘だろ?」と信じられない光景を見た様な顔をしてそう言った。


「そうですよ。全て隠れ里のドワーフ達に頼んで作って貰いました」


「……魔剣だけでもドワーフ族には感謝してたけど、まさか兵団一つの装備まで作って貰う何て」


「もしかして、あの装備って私が普段使ってる防具より性能が良いんじゃないかな?」


「まあ、隠れ里のドワーフが作って貰ったので性能はいいですよ……」


 兵士の方が性能が良い装備を身に付けてるという現実を知ったユリウスは、かなり落ち込んで「私の分とか作れたりするかな?」と駄目元でそう聞いて来た。

 うん、やっぱりユリウスならそう言うと思ってた。


「そう言うと思ってたので、後一人だけ作って欲しい人が居るって前からドワーフ族に言ってたのでユリウスさんの予定さえあれば、ドワーフ族の所に行って装備を作って貰う事が出来ますよ」


「ッ! 本当!?」


「嘘はつきませんよ。ただ勝手に作って渡したら、もしユリウスさんに必要無かったらどうしようかと思って、必要かどうか聞こうと思ってたんですけど聞くタイミングが無かったんですよね」


 そう言うとユリウスは「次の休みの日、ジン君が良いならその日に行こう!」と興奮気味にそう言われた。

 ユリウスの圧が凄く、俺は予定は入れてないので「良いですよ」と答えた。


「……剣聖なんだから、皆の前でそんなはしゃがないの」


「あっ、すみません。姫様……」


 ユリウスは嬉しさのあまり、どんな装備を作って貰うか妄想していると、そんなユリウスを見ていた姫様からそう注意をされた。

 注意をさたれユリウスは兵士達から視線を感じて、シュンッと大人しくなった。

 その後、一日訓練を見た姫様は最後に「この部隊が一番戦いで頼りになりそうね」と言葉を兵士達に言うと、兵士達は物凄く喜んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る