第259話 【訓練の終わり・2】


 翌日、昨日の話し合いで決まった事を全体で集まった時に言うと、新しい訓練に入る事に喜ぶ者達ともう直ぐ訓練が終わる事に悲しむ者達が居た。

 前者は更に強くなれる事を喜ぶ者達で、後者は俺達と別れを悲しむ者達だった。


「もうジンさん達と会えなくなるるんですか……」


「いや、そんな事は無いですよ。魔王軍との戦いが終わるまではこの国には必ずいますし、戦いが終わった後もこの国で過ごすと思うので会おうと思えばいつでも会えますよ」


「ほ、本当ですか? 自分達が会いに行っても迷惑じゃないですか?」


「そんな事無いですよ。大切な教え子達ですから」


 そう言うと悲しんでいた者達は笑みを浮かべ、新しい訓練について真剣な顔をして聞き、早速新しい訓練を始めた。

 その日は新しい訓練という事で、いつもより兵士達のやる気は凄かった。

 400人の兵士が100体のゴーレムに対して、陣形を作り順調に戦っていた。

 その戦い方は俺の予想を遥かに超えていて、この一ヵ月で兵士達はお互いの事をちゃんと知れていたんだなと感じた。


「私も途中少しだけ見てたけど、かなり統率がとれていて危ない場面が一つもなかったわね。あそこまで鍛えられてるとは正直思っても居なかったわ。ジン達に頼んで本当に良かったわ」


「兵士達のやる気と皆のおかげですね。特にクロエとレンは、魔法使いの方をずっと見てくれていたので助かりました。勿論、レイも兵士達とずっと戦って兵士達の弱点や鍛えるべき所を探すのに本当に貢献してくれて、俺一人じゃ到底無理でしたね」


 そう俺が言うと、クロエ達は「ジン君も凄く頑張ってた」と言ってお互いに褒め合った。


「冒険者で例えると、魔法使いの方は全体で言えば銀級でトップ層は金級冒険者とあまり変わらない位には育ちました。その他の兵士達の方もトップ層はやや銀・鉄級クラスですが、トップは変わらず金級冒険者近い能力まで育ちましたよ。特に元冒険者組は、強くなる事を諦めて兵士になってる者が多く、もっと強くなれると知って他の兵士達とはまた一段とやる気が違って頑張ってました」


「それは凄いわね。本来、金級冒険者に依頼を出そうとなると、相当難しいけどそれを自国の兵士の中に何人もいると考えられるのね。ジン達には本当に感謝しないといけないわ」


 その後、姫様は明日の訓練は最初から見に来るから兵士達の実力をまた見せて欲しいと言われた。

 今後、魔王軍との戦いが本格的に始まると姫様と共に戦う事になるだろうし、姫様の前でもちゃんと戦えるか確認も出来るからいいなと思いながらその日は解散した。


「えっ、姫様の前で戦うんですか!?」


「ああ、今日は姫様が皆の実力を確認する為、訓練を見に来る。緊張するなとは言わない。今後魔王軍との戦いが本格的に始まると聖女である姫様とは一緒に戦うことになる。だから、その時に向けて緊張をしないようにする為、今日はめいいっぱい緊張して、本番では緊張しないようにするんだぞ」


「「はい!」」


 兵士達は俺の言葉にそう返事をすると、今日はいつにもまして念入りに準備体操を行っていた。

 それから少しして姫様は、ユリウスと共に訓練場へとやって来た。


「あれ、ユリウスさんも見に来たんですか?」


「うん、ジン達の所の兵士がどれだけ強くなった私も自分で見てるから比べに来たんだ。姫様から聞く限りだと、他の所とは天と地ほど離れると言われたから、気になってね」


「……姫様、そこまでは差はないでしょうからあまり大きく言わないでくださいよ」


「そんな事は無いと思うわよ? あの統率力を見たら、ユリウスもそう感じると思うわ」


 そう俺達が話していると、準備体操をしていた兵士達の顔が益々緊張していってるのに気づいて、取り敢えず姫様達を奥の方へと案内した。

 それから兵士達には昨日と同じ、全体訓練でゴーレムを相手に戦ってもらう事を伝え、昨日と同じ様に訓練を始めた。

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