第251話 【姉さんとの一日・3】


 あの後、お店を見て回った俺達は全員分のお土産を買って王都へと戻って来た。

 王都に戻ってきた俺達は予定通りそのまま拠点の方へと向かい、姉さんにはリビングで休んでてもらい俺は調理場の方へと向かった。


「さてと、作りますか」


 まず俺は【異空間ボックス】から用意していた食材を出し、コンロに火をつけた。

 今回、作る料理は予め決めている。

 姉さんの好物は海鮮系だが、麺系も好きな部類だという事をルル姉から教えて貰った。

 そしてそれを聞いた俺は、今回の料理はシーフードパスタにしようと決めた。


「っし、姉さんの為に美味しく作るぞ」


 気合を入れ、俺は料理を始めた。

 それから数十分後、料理を終えた俺は出来た品を持ってリビングへと移動した。


「ジン君、凄い美味しそうな匂いがこっちまで来てたよ。今回はなに作ってくれたの?」


「姉さんが好きな海鮮系、それを沢山使ったシーフードパスタを作ってみたよ。最後までタコ料理にするかで悩んたけど、昼にあれだけ沢山食べてたし別のにしてみたよ」


「わ~、凄く美味しそう」


 姉さんは俺が作ったシーフードパスタを見てそう言い、俺も席に座り一緒に食べ始めた。

 味見をしつつ作ったがちゃんと出来たか心配だった俺は、姉さんの様子を見ていると食べて直ぐに驚いた顔をした。


「ジン君……今まで食べたパスタで一番美味しいよ」


「ッ、良かった~。パスタは練習した事あったけど、シーフードパスタははじめてだったからちゃんと出来てるか心配だった」


「大丈夫だよ。私が今まで食べた中で一番だよ。ありがとねジン君」


 姉さんからそう褒められた俺は安心して、それからは姉さんと一緒に今日一日の事を話しながら楽しい食事をした。

 その後、少しだけ休憩した俺達は宿まで歩いて戻り、姉さんとは宿の入口で別れた。

 姉さんは一旦着替えるらしく、部屋に戻り俺は食堂の方に皆が集まっていた為、そっちに向かった。


「ジン君おかえり、どうだった?」


「楽しかったよ。それに美味しい飯屋も発見出来たから、今度皆で行こう」


「それは楽しみ! 港街って旅してる間、逃亡生活みたいな感じで真面に観光した事ないしね~」


「確かにね~、絶海のダンジョンの時なんて、殆ど街に居なかったもんね」


 レイとクロエがそう言うと、レンも「俺は良かったけどな」と人混みが嫌いなレンらしい回答をした。

 それから俺はクロエ達にお土産を渡して、リカルドにもお土産を渡した。


「良いのか、俺も貰って?」


「世話になってるからな」


 その後、俺は宿で暮らしてる知り合い達にもお土産を渡して回った。

 丁度、依頼から帰って来ていたルークさん達も居たので用意していたお土産を渡した。


「俺達にもか? ありがとなジン」


「ありがとう。ジン君」


 ルークさん達は、流石にいついるか分からない自分達の分があるとは知らなくて凄く喜んでくれた。

 その後、外に出掛けていたルル姉たちが戻ってくると、俺の顔をみて「あれ、もう帰って来てたの?」と首を傾げながらそう言った。


「あまり遅くにならない様にと思ってね。はい、これルル姉達のお土産」


 そう言って俺はルル姉達へのお土産を渡すと、着替えに部屋に戻っていた姉さんが下りて来た。


「皆、おかえり。私の方が早かった感じね」


「そうみたいね。それじゃあ、ヘレナちゃん詳しくお話聞かせてね~」


「えっ? ちょ、なに!?」


 ルル姉がパチンッと指を鳴らすと、その合図と共にコロンさん、シャーリーさん、ププルさんが一斉に姉さんを掴まえてそのまま上に連行していった。

 うん、まあ頑張って姉さん!

 そう俺は心の中で応援して、ご飯を食べているのでシャワーを浴びに行きそのまま部屋に戻った。

 翌日、朝食の席では夜遅くまで女子会が行われていたのかルル姉達は楽しそうな会話をしていたが、姉さんだけは疲れた顔をしていた。

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