第199話 【金級冒険者への昇格・2】


 それから数日間、俺達は昇格テストに向けて各々訓練を続けた。

 その結果、レン以外全員が力を抑えた状態でそこそこ戦う動きが出来るようになった。


「正直な話、別に相手を怪我させても回復魔法や薬でどうにかなるけど、ここで手加減を覚えておきたかったし良い時間だったな」


「まあ、ジン達の力が強すぎて魔物の素材を昔ほど綺麗にとれなくなってたからね。俺としても素材が良い状態で手に入るようになるから、皆が手加減を覚えてくれて良かったよ」


 レンの言う通り、ここ最近は魔物を狩っても素材が以前より綺麗な状態でとれなくなっていた。

 それは以前よりも強い魔物と戦うようになったというのもあるのだが、根本的に俺達の力が上がり過ぎて〝綺麗な状態〟で素材をとる事が厳しくなっていた。

 その点も踏まえて、今回の手加減の訓練はしてよかった。


「そう言えばジン君、まだギルドから連絡は来てないの?」


「来てないな、多分まだ探してるんじゃないかな? 俺達の知ってる金級冒険者の人達はやる事があって王都から離れているから、他の金級冒険者も同じく依頼で居ないんじゃないかな」


 アンジュは現在、ユーリことユリウスと共に王都から離れた所に依頼に出掛けている。

 ルーク達も同じく、今は依頼で王都に居ない為、俺達の知ってる金級冒険者は全員が王都に居ない。


「金級冒険者になると、一回の依頼が本当に難しい物ばかりらしいもんね」


「ああ、それだけ報酬もいいから何個も受けなくて良いけど、一回の依頼に掛かる時間はこれまでとは違うってルークさん達が言ってたな。まあ、俺達は転移があるから、今までとそこまで時間はかからないと思うけど」


 金級冒険者の依頼の殆どが調査依頼や高位の魔物討伐等、その為移動時間や対策の為の準備時間が物凄くかかるとルーク達が言っていた。

 移動に関しては俺の転移があるから問題無いし、準備も今までに色々と溜め込んでいるからそこまで心配するような事は無い。


「そもそも、金級冒険者からは冒険者の数も一気に減ってるから見つけるのが難しいんだろうな」


「銀級冒険者はそこそこいるけど、金級冒険者以上はマジで少ないもんな。白金級冒険者なんて俺は見た事も無い」


「金級冒険者自体、知り合いが数人程度だもんね」


「そもそも白金級冒険者って王都に居るの?」


 レイのその質問に対して、俺は「いるには居るよ」とある人物の事を思い浮かべながら言った。


「そうなのか?」


「私達知らないけど、それってジン君の情報網で知った人?」


「ああ、その人は俺以上に目立つ事を嫌うタイプだから知ってる人は本当に少ないんだよ」


 俺も実際には、その相手を見た事は無い。

 ゲーム時代も、そんな人物が王都に居るという設定だけしか見ておらず、どんな人物でどんな相手なのかはこっちの世界に転生して来てから知った。


「名前はアンセル。エルフ族とヒューマン族のハーフって事しか、俺も知らない。それだけ、その人物は情報を伏せてるんだ」


「凄いな、ジンみたいに抜けた感じがなくてガチで情報を遮断してるタイプなんだな」


「……」


 レンの言葉に対して、俺はジト目でレンを睨んだ。

 その後、休憩は終わりにして俺達は訓練を再開した。


「なあ、ジン。昼間言ってたアンセルって冒険者、王都に居るのに魔王軍との戦いには参戦しないのか?」


 訓練を終え宿に戻ってきた俺達は夕食を食べて、それぞれの部屋で休んでいると部屋に来たレンから昼間話したアンセルの事を聞かれた。


「ん? あ~、多分身分を隠して参加はしてると思うぞ? そもそも、隠してるのはアンセルって本当の名を隠してるだけだからな」


「そうなのか?」


「ああ、ハンゾウ曰く魔力が似た人物が姿を変えて王都内を移動してるのを調べてたら、アンセルって分かったらしいんだ。ハンゾウも相手がアンセルって分かった時点で相手が悪いと思って、それ以上の調査は止めたらしい」


 ハンゾウですら相手の調査を止める程、絶大な力の持ち主って所が気になるが俺が調べようとしたら直ぐに見つかるだろう。

 だから俺もあえてアンセルに関しては、気にしない様にしている。


「そっか、そんな凄い人なら俺の知らない知識を知ってると思ったんだが……話を聞くのも無理そうだな」


「ああ、そうだな。まあ、もしかしたら何かの縁で繋がる事が出来るかも知れないから、それに期待するしかないな」


「……そうだな、ジンは今までも凄い相手と知り合って来たし、そうなるかも知れないな」


 その後、レンは自分の聞きたい事は聞き終えたので部屋から出て行き、俺も今日は一日訓練をして疲れたのでベッドに横になると直ぐに眠りについた。

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