第189話 【遊撃隊・1】


 新装備の出来上がりから数日後、姫様から連絡があり俺は姫様の所へとやって来ている。

 そして姫様から話の結果を聞くと、国も俺達の参加を歓迎して個別で動く事を許可してくれた。


「ただ名目上は国の軍隊の一つって事にしておかないと示しがつかないから、ジン達は遊撃隊の一つって事になったわ」


「他の軍隊と一緒に動かないってのを約束して頂けるなら、どういった役割でも構いませんよ」


「ふふっ、ありがとう」


 その後、軍の一部である俺は軍の一員である証を人数分受け取り、最初にやって欲しい事を姫様から聞いた。

 最初にやって欲しい事、それは王都から馬車で三日程の距離にある街の奪還をしてほしいという内容だった。

 普通、たった数人の冒険者パーティーに依頼するような内容では無いが、俺達は普通の冒険者パーティーではない。

 それに姫様にはある程度、俺達の力について説明している為、この位なら俺達で出来ると判断したみたいだ。

 正直、俺も魔王軍の力は覚えていて、今の俺やクロエ達でも討伐は難しくないだろう。


「それじゃ、ジン。良い報告を待っているわね」


「はい、分かりました」


 そう言って俺は、姫様の部屋から転移で宿に戻って来た。

 宿には俺の帰りを待っていたクロエ達が待機しており、クロエ達には姫様から頼まれた仕事の内容を話した。


「街の奪還か~、普通のパーティーにお願いする内容では無いね~」


「まあ、姫様にはある程度俺達の力を話しているから、この位なら出来るって判断されたんだろうよ。それに力については修行をする前の事だから、修行を終えた俺達ならこの位は簡単にこなせると思う」


「そうだな、相手の情報を見るに数は居るが、そこまで強い魔物が居る訳ではなさそうだしな」


 俺の言葉に対してレンがそう言うと、クロエは「数が多いだけなら、簡単だね~」とレンと同じ様な事を言った。

 それから俺達は既に準備を終えていたので、ちょっと出かけて来るという風にリカルドに言って宿を出た。

 今回の依頼の場所は以前、近くを通った事がある為、そこまで転移で移動して、そこから徒歩で向かう事にした。

 徒歩といっても、俺達の素の足の速さはその辺の冒険者の【身体強化】を使った状態よりも速い。

 その為、宿から出て一時間程で目的の街の近くまで到着した。


「民間人は街が落とされる前に既に別の場所に移動していて、誰もいないって話だけど一応人がいるかも知れないって頭で戦おう。もしも人が居たら、救助を優先で動こう」


「「はいっ!」」


 そうして俺達は戦う準備を行った後、街の門に向かって魔法を放ち魔物達へ奇襲を仕掛けた。

 俺達の魔法の音に直ぐに気づいた魔物達は、ワラワラと街の入口へと集まって来た。


「それじゃあ、予定していた通り二手に分かれるぞ」


「うん、ジン君、レン君頑張ってね!」


 事前の作戦会議で、街へと入ったら二手に分かれると決めていた。

 俺とレン、クロエとレイといった組み合わせで分かれて一機に魔物達を蹴散らすという作戦だ。

 普通だったらこんな事はしないだろうけど、俺達は普通じゃない。


「それじゃ、レン。【付与魔法】を頼むよ」


「了解」


 クロエ達が出発した後、俺はレンから【付与魔法】で身体能力を強化してもらうと、そこに重ね掛けで【身体強化】を使用した。

 これにより強化魔法を二重で掛けた状態となり、その状態で俺は周りに居る魔物達を数秒で一掃した。

 その後、俺達はそこから移動しては魔物共を倒し続けて行った。

 常時〝探知系〟の魔法を使って人が居ないか探しているが、今の所は人の気配は感じ取る事は無かった。


「さっきからジン、魔法を使ってないけど使わないのか?」


「ん~……俺の魔法使ったら、多分この街事吹っ飛ばしちゃいそうで今回は刀だけでやろうと思ってるんだよ。修行をしてから、まだそんなに経ってなくて加減が難しくて……」


「あ~、まあそりゃそうだよな、三カ月ずっとあんな生物最強クラスの人達と相手してたら、そうなるか」


「ああ、加減の仕方も覚えなきゃいけないな~って感じてる」


 そんな事を話しながら魔物を討伐していく俺達は、気付いたら街の中の魔物が全て居なくなっていた。

 魔法を使わない俺と違って、クロエは的確に魔法を使って数を減らしレイも新しい装備を手にして暴れまわっていたらしい。

 男子組より女子組の方が圧倒的に活躍して、街の魔物排除作戦はたったの二時間で終了となった。


「……えっと、もう終わって来たの?」


「はい、ちょっと俺が魔法の手加減が出来ずに遅くなりましたけど、頼まれていた街の魔物の駆除及び倒壊した建物の掃除までやってきました」


 あの後、俺は戦いの方で役立つ事が出来なかった為、街の掃除の方で頑張って一時間程かけて街の掃除を終えてから姫様の所に戻って来た。

 姫様は俺からの報告を聞いて、信じられないと言った顔をした。


「ジン達なら直ぐに終わるだろうとは思ってたけど、まさか三時間ちょっとで軍が対処に困ってた街を奪還してくるなんて思わなかったわ。それもジン達はまだ全ての力を出し切った訳じゃないのでしょ?」


「はい、街の中で余り建物は壊さないようにと思いながら戦ってたので力は殆ど出してませんでしたね」


「……本当にジン達が参加してくれて有難いわ」


 そう姫様は言うと、次の資料を用意するから明日来て欲しいと言われた。

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