第183話 【三カ月・3】


 お疲れ様会があった翌日、俺は久しぶりにクロエ達と共に冒険者ギルドに近場で受けられる依頼の相談へと来ていた。


「えっ、人が居る場所でも依頼を受けて頂けるんですか!? あのジンさんがですか!?」


「えっと、まあ話せば長くなるんですけど、師匠のお陰でずっと気にしてたことが解決したので、これからは特に隠れて行く感じでは無くても大丈夫になったんです」


 そうこの三カ月の修行のおかげで、俺は必死になって隠れなくてもそれなりに対処できる力を得る事が出来た。

 一度、宝玉から力の一部を解放させたフィオロと戦って力量を計って見た事もあった。

 その時、師匠達には苦戦していた俺だったが完全開放ではないにしろ、それなりに力が戻ったフィオロに対して余裕で戦えてしまったのだ。


「それなら、ジンさん達にやってもらいたい依頼は沢山あります。直ぐに戻って来ますので、お待ちください!」

 

「あっ、そんな多く無くていいですよ。一つでいいんで」


 そう言ったが、既にフィーネさんは部屋から出て行ってしまっていた。

 アスカが戦女の一人の為、今はフィーネさんが冒険者ギルドの責任者的な立場で動いているらしい。

 その為、通常時は臨時のギルドマスターとしてギルドを運営している。

 だけど、俺とフィーネさんは契約関係にあるので俺が来た時だけ以前のように受付業務をやってくれている。


「それにしても、フィーネさん物凄く喜んで出て行ったね。やっぱり、ジンに頼みたい事これまで沢山あったのかな?」


「どうだろうな。俺以外にも王都で活躍してる人は沢山居るから、その人達に割り振れない仕事が丁度溜まっていたんじゃないか? ほらっ、話だと最近は勇者達の頑張りでいくつか街を奪還したって聞いたし」


 この三カ月、勇者達は凄く活躍していた。

 四天王の二人を倒し、更に魔王軍によって占領されていた街を取り返して順調に魔王軍との戦いを進めていた。

 俺が送った物資を有効に使っているのもあるのだが、戦女との絆が深まり勇者の力の覚醒が進んでいるのもあった。

 そう言えば、ゲームでは最後に七人と結婚して幸せな結婚生活を送ったみたいな感じで閉められたけど、この世界の勇者はどうするんだろうな。

 そんな事を考えていると、大量の資料を持って戻って来たフィーネさんから色んな依頼を見せられ、そこから一時間程どの依頼にするかで話し合いを行った。


「取り敢えず、無難というか簡単なコレにするか」


 そう言って俺が手に取ったのは、王都から一時間程馬車で移動した所に出没したワイバーンの討伐。

 本来そこに生息していないのだが、ここ最近の魔王軍の動きのせいで一匹だけその地域にやってきて住みついたらしい。


「被害は今の所まだそんなにないみたいですけど、放置しすぎると大事になりそうですしね」


「そちらの依頼、先日来たばかりで受けてくれる方を探していた所なんです」


 フィーネさんはそう言うと、その依頼の受理をしてくれて俺達はギルドを出て自分達の馬車で目的地へと向かった。

 そうしてやって来た場所には既にワイバーンが荒らした痕があり、これは早急に対処した方が良さそうだと俺達はワイバーンの捜索を始めた。


「きゅっ、きゅ~!」


「んっ、リウス。もう見つけたのか?」


「きゅ~!」


 捜索開始から数分後、空を飛べるリウスは直ぐにワイバーンを発見して戻って来た。

 そして俺達は、リウスの案内でワイバーンの所まで移動した。


「……意外と大きい個体だね」


「ああ、あの大きさならアースドラゴンとも対等にやれるくらいの強さがあるだろうな」


 移動して場所に居たワイバーンは、普通の個体のワイバーンよりも体が1.5倍程あった。

 こっちに来て数日と聞いていたけど、ここに来るまでに大量に獲物を食って来たのかその体格はガッシリとしていた。


「さて、それじゃあ修行の成果をあいつで試させてもらうか」


 そう俺が言うと、クロエ達は「お~」と声を出し、ワイバーンとの戦闘を始めた。


「グルルル!」


「おっ、威勢がいいな。リウスを見ても怖気付いてないみたいだな」


 ヴェルド様の弟子になったリウスを見ても、目の前のワイバーンは怯える事無く俺達を威嚇してきた。

 そしてワイバーンは、雄叫びをあげて襲い掛かって来た。

 そのワイバーンの突進攻撃に俺達は左右に避け、ワイバーンの背後をとった。

 まずは最初の一発は魔法使いとして、師匠からも認められる程の腕に成長したクロエの【火属性魔法】の魔法。

 クロエの魔法は速度も速く、空を飛んでるワイバーンの翼に直撃した。


「次は私が行くよ!」


 そう言ってレイは力強く地面を蹴り、空へと飛びあがった。

 そして戦斧を両手で持ち直し、ワイバーンの背に力強く振り下ろした。


「グルァァァ!」


「落ちて来たな、レンは何か攻撃するか?」


「ん~、んじゃジンに強化系魔法かけておくよ。攻撃は苦手だし」


 レンはそう言うと俺に対して、新しく覚えた【付与魔法】で俺の身体能力を強化してくれた。

 レンからの魔法を受けた俺は、ワイバーンの落下地点へと移動して刀を取り出した。


「竜刀流一の型・竜の爪」


 リュドラから習った技を名を言いながら俺は刀を振り、ワイバーンの頭部と胴体を切断した。

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