第179話 【三人の魔女・3】


 それからヘレナーザの弟子については一旦置いて置き、誰が最初に修行の相手をするのか師匠達は話し合いを始めた。

 魔女でもそれぞれ得意不得意な事が有り、ヘレナーザはあまり力の調整をするのは苦手だと言った。


「私がしてもいいよ。ジンの力、大体把握したから」


「あら、流石ナシャリーちゃんね。それじゃあ、頼んでもいいかしら?」


「うん、その変わりリウスをもっと撫でさせて」


 そう子供がお願いするかのようにナシャリーは頼んできたので、勿論良いですよと言ってリウスにナシャリーの近くに居るように指示を出した。


「私のペスの時と全く違う反応してるけど、なにか違うのかしら?」


「マリアンナのは威圧感しか感じない、ジンのは優しい雰囲気が強く感じる。それにこの子、マリアンナの【無魂獣】よりかわいい」


「ペス、そんなに威圧感ないと思うわよ? 製作者しか分からないなにかがあるのかしら?」


 制作者、そう師匠が口にしたのを聞いた俺は驚いた顔をして「えっ、リウス達ってナシャリーさんが作ったんですか?」と聞いた。


「うん、私が作った。凄い?」


「凄いです!」


 そう俺が褒めると、ナシャリーは嬉しそうな顔をして笑みを浮かべた。

 そんなナシャリーを見て、師匠は「貴女が笑うなんて珍しいわね」と言った。


「ジンに褒められたら嬉しいって感じた。マリアンナ、ジン貰ってもいい?」


「駄目よ。弟子ちゃんは私の弟子だもの、ナシャリーちゃんも弟子を持ちたいなら探しなさい。探すのなら手伝ってあげるわよ?」


「ん~、ならいい。弟子にしなくてもいいから、ジンに色々教える」


 どうやら俺は、魔女の一人に相当気に入られたみたいだ。

 まあ、もう一人のヘレナーザからも気に入られてるみたいだし、嫌われる感じじゃなくて良かったと少し安心していた。


「ナシャリーちゃんには弟子ちゃんの魔法防御力と、戦闘技術を底上げしてほしいわ」


「うん、分かった。それなら大丈夫」


「ありがとねナシャリーちゃん、全部終わったらまた実験に付き合うわね」


「……実験じゃなくて、ジンを渡すでも良いけど」


 師匠の言葉にナシャリーがそう言うと、師匠は「実験を手伝うわ」と笑顔でそう言い返した。

 そんな二人のやり取りをみていたヘレナーザは、「ナシャリーちゃんがあそこまで感情を見せるなんてはじめて見たわ」と楽しそうにそう言っていた。


「それじゃあ、私はナシャリーちゃんが修行の相手してる間、ジン君の仲間の修行に付き合えばいいのかしら?」


「ええ、そうなるわ。弟子ちゃんの仲間も中々、才能の良い子達だからヘレナーザちゃんも気に入ると思うわよ」


「へ~マリアンナがそんな事を言うの珍しいし、本当に才能が良い子達が居るみたいね。楽しみだわ」


 ヘレナーザはそう師匠の言葉を聞いて、ワクワクと本当に楽しそうな雰囲気でそう言った。

 その後、今後の修行についての話し合いを終わってヘレナーザは一旦、自分の家に戻ると言ってその場から消えた。


「……ナシャリーさんは何か準備とか大丈夫なんですか?」


「大丈夫。いつも準備出来てるから、修行はいつからするの?」


「あ~……師匠、いつから修行したらいいですかね?」


「そうね。今日はもう時間的に遅いから、明日からにしたらどうかしら? クロエちゃん達にも話をしないといけないでしょ?」


 そう師匠から言われた俺は「わかりました」と返事をして、俺はナシャリーに明日からよろしくお願いしますと言って、空島から王都に戻って来た。


「……あのナシャリーさん、何で付いてきちゃったんですか?」


 王都に戻ってきた俺の横には何故か、ナシャリーが居て俺はその状況にそう本人に尋ねた。

 するとナシャリーは、一緒に戻って来たリウスを指をさして「この子ともっと居たい」と言ったので取り敢えずリウスには明日まで空島に居るように指示を出した。

 そうしてナシャリーを空島へと戻した俺は、クロエ達を呼び部屋に集めた。

 そしてこれから俺は厳しい修行期間に入る事、皆にも同じかどうか分からないけど修行を付けて貰えるらしいという事を話をした。


「俺が修行を受けるのは確定してるけど、皆が修行を受けるかどうかここで決められるよ。正直、師匠達の修行は厳しいと思うから、断るなら俺の方から断わっておくよ」


「ううん、私は受けるよ。もっと強くなりたいから」


「私も同じく! 魔女さんに修行をつけてもらえるなんて、今後絶対にありえない事だしやってみたい!」


「俺もやるよ。皆との差を、これ以上開かれるのは嫌だからな」


 そう皆の言葉をきいた俺は、もう一度確認をとって師匠に「皆も修行を受けるそうです」と伝えた。

 そうして俺達は、師匠を含める魔女に強くなるための修行をつけてもらう事になった。

 

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