第178話 【三人の魔女・2】
それから師匠は、今後の修行について詳しく話す為、場所を空島の師匠の家へと移った。
「あら、私が居ない間、ここは使ってなかったのね。別に使っても良かったのに、その為に弟子ちゃんにも鍵渡してたでしょ?」
「師匠の家に師匠が居ない間に出入りするのは失礼かと思いまして、ヴェルド様が来る前から家の中には入ってなかったんです」
「そうだったのね……あれ、それならフィオロはどうしてたの?」
「師匠の家に居たら、いつ師匠が帰って来るか分からないし師匠と同じ家で住みたくないと言われてしまって、今は俺と同じ宿に泊めてます」
そうフィオロの現状を話すと、師匠は「あの子に贅沢を覚えさせちゃ駄目よ?」と注意された。
「はい、一応宿の代金を俺から借金とさせて、今は街の依頼をさせています。クロエ達はフィオロの事を受け入れて、自分達が休みの時とかは一緒に依頼を受けたりしているみたいです」
「へ~、ちゃんとお金は稼がせているのね」
「宝玉で力を封印されたといっても、流石は悪魔と言うだけあってかなり体力があるみたいなので、宿の借金は直ぐに返せそうな感じです」
クロエ達は俺がヴェルド様達に訓練を付けて貰ってる間、スカイと空島で訓練をしたり街の中で受けられる依頼を受けたりしている。
レイに関しては元々支援職な為、訓練には程々に参加して最近は研究により力を入れている。
まあそっちの方が俺達にとっても助かるので、レイの研究費用はかなりお金を掛けている。
「まあ、フィオロの事はまた後で聞くとして、修行についてだけど弟子ちゃんにはヘレナーザちゃんとナシャリーちゃん、そして私と戦いながら成長してもらうわ」
「……えっと、魔女三人を相手に戦うんですか?」
「ふふっ、それは最終段階よ。最初は一人から、徐々に増えていくように計画してるわ」
だとしても、魔女相手に戦うのか……真面目にやらないと、本当にヤバい事になりそうだ。
師匠の力はゲームでも見たし、この世界でも何度も見て来たがアレは本当にヤバい。
そんな人と同格の人が二人いて、最終的にはその三人を相手に戦う何て今から考えたくも無いんだが……。
「弟子ちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫よ。大切な弟子だから、死なせないようにするわ。死んだとしても、直ぐに生き返らせてあげるから安心して良いわよ」
「あの、最後滅茶苦茶不穏な言葉が聞こえたんですけど……」
死ぬことすら許されない厳しい修行、そう師匠は言ってるようなものだろう。
まあ、でもそれくらいやらないと悪魔に狙われた時に対処できないだろうし、師匠が大丈夫というならやるしかないだろう。
「あっ、それとクロエちゃん達も一緒に訓練に付き合ってもらいたいんだけど、そこは大丈夫かしら?」
「クロエ達もですか? レイはどうか分かりませんけど、クロエ達は多分いいって言うと思います。話し合いが終わったら、クロエ達に確認しておきますね」
「うん、よろしくね。弟子ちゃんだけ強くなり過ぎると、クロエちゃん達は今以上に力の差が開いて悲しむと思うから、そうならないようにしなきゃいけないものね」
師匠の言葉は、俺がここ最近気になっていた事だった。
空島での修行まではクロエ達も同行出来ていたが、ヴェルド様の所は許可された人間しか行けない為、クロエ達とは別で修行をしている。
クロエ達もスカイに修行相手になってもらって、少しは強くなっていたが俺の成長速度と比較すると、このままだとかなりの差が開きそうだった。
「師匠、ありがとうございます。クロエ達も強くなりたいと思っていると思うので、修行をしたいと言った時はよろしくお願いします」
「ええ、任せて」
俺の言葉に師匠は笑みを浮かべながらそう返事をすると、それを見ていたヘレナーザが「弟子っていいものね。私はも作ろうかしら?」と言った。
「ヘレナーザちゃんって前に弟子みたいなの居なかったかしら?」
「居ないわよ。ただの付きまとってた子なら居るけど、狭間の世界に移り住んだ後は流石に着いてこれずにどこかに行っちゃったわ。あの子、能力とかは良かったんだけど性格が少しね……その点、マリアンナの弟子はいいわね。能力もそうだけど、性格もよさそうだし」
ヘレナーザがそう言うと、師匠は嬉しそうな顔を浮かべて「私が見つけたんだから、当然でしょ」と胸を張ってそう言った。
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