第162話 【師匠との話し合い・3】
それからお仕置きが終わったフィオロは、ようやく解放されると思ったのか「それじゃ、もう戻るわね」と言って立ち上がった。
だがしかし、フィオロは目を閉じるがその場にずっと居て、帰る様子が全く無かった。
「あ、あれ? な、何で帰れないの? ま、マリアンナ何かした?」
「お仕置きしてタダで帰れると思ってたの? 貴女、弟子ちゃんに詫びいれたかしら?」
「謝ったじゃない! あんな恥ずかしい恰好して謝らせるなんて悪魔以上の悪魔よ!」
先程のお仕置き中、師匠はフィオロに反省の意を込めて顔面に〝反省中〟と書いた紙を貼り付け淡々と謝罪をさせた。
まあ、フィオロの言い分も分かるな、師匠のお仕置き地味に酷いのもあってどっちが悪魔か分からなくなってた。
「謝ってすむなら法なんてないのよ? まあ、ここは法なんてない空島だけど、ここじゃ強者の言う事が絶対。それでフィオロ、貴女は私より上かしら?」
「い、いいえ……」
「じゃあ、貴女の処遇を決めるのは私よね?」
「はい……」
人間の圧に屈する悪魔。
俺の師匠、マジで人類で最強なんじゃないのか?
ゲームでこんなキャラが居たら、そりゃ物語もつまんなくなるからレアキャラな上に力も制限されてたんだろう。
制限されてても、ゲームでの師匠は最強クラスのキャラだったからな……。
「そうだ。この子に力を与えられて闇落ちするって言ってたし、逆にこの子を縛っていれば弟子ちゃんの心配事も無くなるんじゃない?」
「えっ、悪魔を縛るってそんな事出来るんですか?」
「ちょっ、マリアンナ!? それは止めてよ!」
「フィオロ、静かにしなさい」
フィオロは師匠のやろうとしていた事を察したのか、反論しようとしたが師匠からそう言われて口を塞がれ、俺は師匠から説明を受けた。
悪魔の縛る方法にはいくつか方法があるらしく、今回はその中でも特に悪魔にとって全く得の無い方法で縛ると説明された。
その方法とは悪魔の力を宝玉へと封印させ、力を出すにはその宝玉の持ち主の許可無しには力を出す事は不可能というやり方。
「悪魔を縛り付けるなんて、なにか対価とかあるんじゃないですか?」
「私だったら魔力で済むから大丈夫。他の人なら、数万人の命を引き換えにしないと出来ない技だけどね」
なんでもないといった風に師匠はそう言うと、魔法陣を書いてその中央にフィオロを魔力の紐で縛り付けた状態で連れて行った。
「ね、ねぇマリアンナ? 嘘よね? 本当にやっちゃうの? 私、最強種の悪魔よ?」
「じゃあ、力づくで逃げたら良いじぉない。まあ、逃げたらもっとキツイお仕置きをするから、その覚悟があるならだけど」
「……ねえ、マリアンナ。お願いだから、力を奪うのだけは止めて、本当にそれ以外なら何でも受け入れるから」
フィオロは師匠が本気でやろうとしている事に観念したのか、そうお願いをした。
その言葉に師匠は「イ・ヤ」と物凄い笑顔で答えると、魔法陣を発動させた。
そうしてフィオロはその陣に力を奪われていくと、徐々に見た目が小さくなり美しい女性の姿だったのが可愛らしい少女の姿となった。
そうしてフィオロの力を封印した宝玉を師匠は手に取ると、「はい、弟子ちゃん」と言ってその宝形を俺へと投げ渡してきた。
「う、うえ~ん。やめてっていったのに~」
フィオロは自身の姿を見ると、大粒の涙を流しながら師匠にしがみついて「返してよ~!」と叫んだ。
しかし師匠は、小さくなったフィオロを見て「貴女、これからずっとその姿の方が良いわよ」と笑いながらそう言った。
「酷い! 悪魔に酷いって言われる人間、マリアンナくらいしかいないわよ! そのマリアンナの弟子も酷い人間よ!」
「えっ、俺? 俺は何もしてないというか、被害者なんだが……」
「被害者って、別にそんなにひどい事はしてないもん! ただ観察して、ちょっと誘導しただけだもん! 返して、私の力!」
フィオロはそう叫ぶと、師匠の所から俺の方へとジャンプして襲い掛かろうとした。
だがその瞬間、俺は心の中で「とまれ」と思うと宝玉が光った。
そして、それと同時にフィオロはその場で地面に落ちた。
「あぐっ!」
「あら、説明する前にもう使い方が分かったのね。流石、弟子ちゃんね。その宝玉は力を封印するだけではなくて、悪魔の使役も可能にする物なのよ。弟子ちゃんの魔力も少し入れてるから、今のフィオロは私と弟子ちゃんのペットみたいな存在よ」
そうニコニコと笑いながら師匠は、地面に蹲ってるフィオロに近づくと「これからはペットらしく、大人しく過ごすのよ?」と言いながら頭を撫でた。
そんな師匠に対してフィオロは「悪魔!」と叫び、再び叫びながら涙を流した。
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