第132話 【双子の冒険者・3】
それから俺は、偶にギルドを経由でレン達の事を教えてもらっていた。
レンの薬作りの腕は日々良くなって行っていて、偶に俺に見せる為にフィーネさんから渡されていたが本当に凄く効果が良くなっていた。
「まさか、ここまで薬を作れるようになるとは思わなかったな、ただ冒険に役立つだろうと思って渡しただけだったけど」
「レンさんの力は、ギルドでも高く評価しています。彼の薬作りへの熱意は素晴らしく、素材の提供も最近ははじめました」
薬作りをはじめて数ヵ月経った頃には、レンはギルドからも信頼される薬師として活躍していた。
素の集中力が高く、一度の作業で大量に作れるレンの薬作りの腕はギルドとしても重宝していて好待遇を受けていた。
まあ、今は薬だけに集中しているみたいだけど、最近は錬金術の本とかも渡しているからもしそっちに興味を持ったらもっとすごい事になりそうだな。
そう思いながら俺は色んな専門的な本をレンに渡しては、その成長を遠くから見守っていた。
◇
「ジン、どうしたんだ。さっきから黙って天井を見上げて?」
昔の事を思いだしてたら、レンからそう声を掛けられた。
「いや、出会った頃の事を思いだしてたんだよ」
「あの頃か……あの頃は全く俺は何も出来ない奴だったからな、レイの力に頼ってて若干拗ねてた所もあったんだよな」
「出会った頃は本当に不愛想だったしな、全く話も出来ないから仲良く出来るか不安だったよ。まあ、本を渡したら一気に関係性は変わったけど」
そう俺が笑いながら言うと、レンは「本くらいしか好きな事が無かったからな」と昔の事を思い浮かべながらそう言った。
それが今では薬師としてでも有名だし、錬金術師としても成果を上げて本格的にやってる人が態々、レンに話を聞きに来る程になっている。
「前に、貴族に薬を卸してる店の人が調合の事を聞きに来てたよな」
「うん、なんか俺の噂聞いて話を聞きたい最初は店に来いって言われてたんだけど、行けないから用事があるならそっちが来ないと話は出来ないって言って使いの人を送り返したら、慌てて来たんだよ」
「……貴族に薬を卸してる人を追い返す何て、大物になったな」
「いや、ジンのせいだからな? お前が転々と色んな所に行くから、その人と話す場所を作る事は出来なかったからそういう対応をしたんだよ」
そういや、一時期必要なアイテムを取る為に色んな場所を旅してまわっていたけど、その時に使いの人が来てたのか……なんか悪い事したな。
「それはすまなかったな、まさかレンの所にそんな大物から使いが来てる何て思ってなかった」
「良いよ。そもそも、俺が向こうに行く事は無かった。だって嫌だろ、知らん相手に呼びつけられるって、その相手がそれこそ薬学について俺以上の事を知ってるなら話を聞きに行きたいけど、向こうが助けを必要としてるんなら俺が行く必要性は感じられんからな」
うん、こういう冷めた考えは昔から変わらない。
そしてそんな事をいうレンに対して、毎回叱るのがレイだ。
「そういう冷めた考え、止めた方がいいよって前から言ってるのに何で治さないの?」
「別に良いだろ」
また、始まったよ恒例の兄妹喧嘩。
こうなると、暫くは言い合いしないと互いに鬱憤が溜まって、逆にストレスを溜めてしまうから放置が一番いい。
「まあ、取り敢えずリーザの店でのメンテナンスが終わったら、また旅に出ると思うから、それまではちょっとした休暇だ。皆、ちゃんと体を休めるんだぞ」
「は~い、レイちゃん達もほどほどにね~」
俺とクロエは言い合いをしている二人にそういって部屋を出ていき、クロエは自分の止まる部屋に向かい俺はリーザの所に装備のメンテナンスを頼みに向かった。
リーザの店に向かうと、リーザは店頭には居たがなんだか元気が無いように見えた。
「リーザ、この間言ってたメンテナンス頼めるか?」
「んっ、分かった。そっちの箱に入れといて……」
こんなリーザ、初めて見たな……なにかあったのか?
「リーザ、なんか元気無いように見えるけどなんかあったのか?」
「ん~……実はな、武者修行とか言って数年前に出て行ったってのは前に話しただろ? その親父が、もう直ぐで帰って来るらしいんだよ」
「えっ!? リーザの親父さんって事は、元ガフカの工房長!?」
ガフカの工房はゲームの時も世話になった鍛冶屋だが、リーザの父親が出て来るなんてそんな事は無かったぞッ!? どうなってるんだ?
「その、何で急に帰って来るって話が来たんだ?」
「それが何処から聞いたか知らないけど、ジン達のおかげで作れた特大サイズの金塊を取り込んだアレの話を聞いたらしく、俺も使いたいから王都に戻るって手紙が昨日届いたんだよ」
そう怠そうな言うリーザは、仕事して気を紛らわすよと言って俺が渡した装備を持って奥の作業場へと消えて行った。
王都で待って居たら、リーザの父親に会える。
そう思った俺は、皆に数日休暇を与えて良かったと心の底から思い、休暇中にリーザの父親が帰ってきますようにと願いながら店を出た。
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