第125話 【自称四天王の豚・2】
それから数日後、俺達は再び王都を発ち、四天王と名乗る豚の元へと向かった。
今回のお騒がせの豚、俺の勘違いじゃなかったら〝金オーク〟だろう。
金オーク、別に見た目が金で出来てる訳ではなく、その素材を売った時の値段が馬鹿みたいに高くてプレイヤーから〝金オーク〟というあだ名が付けられた。
オークの様な見た目をしてる自称四天王の豚だが、その正体はキングオークジュニアという特殊個体。
「ジン君、そんな情報もゴブリン商人は取り扱ってるの?」
「ああ、あいつらは色んな物を取引してるからな、情報も色々と取り扱ってるんだよ。まあ、流石に魔王軍の情報はそんなに手に入らないみたいだけどな、それでも四天王がどんな奴等なのか程度は仕入れてたから教えてもらったんだ」
ゲームでもゴブリン商人は情報も取引していて、何処に宝があるのか等の情報も商売していたので俺はそれを利用して情報の出所はそこだと仲間達に伝えている。
実際は苦手属性すらも覚えるほど、やり込んだからだとは言えないからな、商人が情報も取り扱ってる事を思いだして良かった。
「それと今回の相手だが見た目はオークより小さいが、その正体はキングオークジュニアっていう特殊個体の奴だから、詳しく説明しておくな」
そう言って俺は金オークの戦い方をクロエ達に教え、約半日移動を続けた目的の金オークに占領された街の近くにやって来た。
街の近くで姫様の裏の従者と情報交換を行い、金オークはまだ街の中に居ると聞いた。
「移動する前に違うところに行くかもと心配だったけど、移動して無くて良かった」
そう俺は金オークが移動して無かった事に安心して、戦いの準備を始めた。
今回使う戦い方は至って簡単。
既に都市は魔物の手に落ちていて、人は居ないみたいなのでそれぞれ全力で魔物共を叩き潰すというシンプルなやり方。
「久しぶりに大暴れ出来るんだね! やった~!」
「レイちゃん、どっちが多く魔物倒せるか競争しよう!」
「……ジン、良いのかあの二人をあのままで」
「大丈夫。最近、色々とストレス溜まってたみたいだから、ここいらで発散して無いと俺等に来るかもしれないしな」
そう俺が言うとレンは「ストレスが溜まってるなら仕方ないな」と、クロエ達をそのままにすることに同意した。
以前、クロエ達のストレスがMAX値まで溜まった際、もうそれはそれは面倒な事になり、俺もレンも当時の事を思いだしただけで身震いする。
その教訓を踏まえ、ストレス発散が出来る時にしておこうというのを決めて、今回は人の目も無いし、クロエとレイにはストレス発散しても良いと伝えた。
「まあ、クロエ達は雑魚相手に暴れてくれるだろうし、俺達は自称四天王の豚を一緒に倒すか」
「了解、リーダー。でも、二人で大丈夫なのか? いっても魔族を率いてる奴なんだろ?」
二人だけでボスを倒そうとしている為、レンが少し心配気味にそう聞いて来た。
まあ、心配に思うのは仕方ないだろう。
自称とは言え、軍隊を引きているボスだから、ある程度の力があるとレンは心配している。
「情報によると、あいつが引きている魔物はゴブリンやオークといった俺達だったら一人で数百体は倒せる奴等なんだよ。都市が奪われたのは、その数による暴力に対応出来なかったんだと思う。数に対してなら、俺達はそれぞれ対抗できる技を持ってるから心配する事は無い」
そう俺は言い切り、準備を進めた。
そうして戦いの準備を終えた俺達は、それぞれ配置について一気に街の中へと潜入した。
「ドッ——!」
潜入早々、入口付近ではクロエとレイが暴れはじめ、建物が崩れる音が響き渡り魔物達が入口の方へと集まって行った。
一瞬、流石にこの量は大丈夫かなと思った俺だが、ふとクロエ達の方を見ると楽しそうに蹂躙していた。
「うん、大丈夫そうだな。行くか」
「そうだな、今のあの二人なら数千体の魔物が押し寄せて来ても大丈夫だろう」
レンも俺と同じ気持ちだったようで、二人の暴れる姿を見た俺達はボスのいる方へと見つからない様に向かった。
情報によると金オークの奴は、この都市の高台に位置する屋敷を根城にしていると聞いた。
なので俺とレンは魔力を消しながらそこに向かい、屋敷の近くに着いた俺は建物の中の魔力を確認すると一匹だけ周りと違った魔力を持ってる魔物を見つけた。
多分、アレが金オークだな……よし、早速討伐するか。
「早速やるか、準備は良いか?」
「良いけど……それ本当に役立つの?」
レンに準備してもらったのは、ちょっと匂いのキツイ香水。
俺が手に持ってる香水を見て、レンはそう言ったので「まあ、見てな」と言って俺は香水の蓋を開けて屋敷の入口にサッと置いて直ぐに姿を消した。
「ブホォォォ! この匂い、好きぃぃ!」
すると次の瞬間、屋敷の中から金オークがドスンドスンと足音を立てて現れた。
その興奮した様子に俺は成功だなと心の中で思いながら、刀を抜いてサッと金オークの背後に立ち首を刈り取った。
「フゴッ?」
「アッサリ終わったな、馬鹿で助かったよ」
金オークの倒し方、それはあいつの好きな匂いを餌におびき寄せるという作戦。
これはゲームでも同じで、その情報を知ってるプレイヤーは香水を用意して金オークを倒していた。
こんな簡単に倒せるのに素材は物凄く高く売れるから、本当にプレイヤー達から好かれた魔物だった。
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