第100話 【偽装・2】
その後、俺とユリウスは城に戻り、姫様の所へと向かった。
「成程ね。それで私の所に許可を取りに来たのね」
姫様は話を聞くと、フィーネさんが言った内容を理解してそう言い、読んでいた本を閉じた。
「ユリウスがこんなにお願いする事は滅多にないし、出来るだけ叶えてやりたいとは思うわよ。今まで色々と動いてくれたし、でも今は次期的に無理ね」
「……やっぱり、この間の騒動が原因ですか」
「ええ、今ユリウスを一人で動かすのは流石にお父様から何か言われそうね」
まあ、少し前にそれで大騒ぎになったばっかりだからな。
こればっかりは、周りが落ち着くまでは仕方がないだろう。
「だとしたら、また振り出しか……どうしますか、ユリウスさん?」
「そうですね……」
振出しに戻ったってしまったと思った俺はそうユリウスに話を振ると、姫様から「何言ってるの?」と首を傾げられながら言われた。
「えっ、いやだって今、ユリウスさんを外に出すのは無理って……」
「外に出すのが無理じゃなくて、一人は無理と言っただけよ? 誰か付き添いを付けたら、別にその変装して冒険者になって妹と会う事は良いわよ」
「ッ! 良いんですか!?」
「ええ、この間の事だってその子の為だったんでしょ? それにユリウスを妹と引き離したのは私だもの、その位は許すわよ」
その言葉にユリウスは涙を流して、姫様に「ありがとうございます」と感謝した。
「となると、ユリウスさんと同行する人が必要ですね。この場合一番適任といえば俺達ですけど、それだとユリウスさんが変装した際にバレる確率が上がりますよね」
「ええ、だからユリウスの同行役は私の部下に頼む事にするわ。そっちの方が、ユリウスも良いでしょ? 表の子はユリウスと関係性と疑われるかもしれないから、裏の子を使おうかしら」
「……良いんですか? 彼等を私の為に使っても」
姫様の言葉に、ユリウスは驚いた顔をしてそう聞いた。
姫様直属の部下は、基本的に姫様が拾って来た者達で構成されている。
その中で表で活動しているのは、ユリウスを含め数名で他の者達は基本的に裏の仕事、情報収集を主にしている。
「一人、怪我をした子が居て裏での作業が出来なくなった子がいるのよ。その子の事、どうしようかって最近悩んでたのよ」
「姫様その裏とか表とか、俺に聞かせても良いんですか?」
「ジンさん達なら話しても良いと思ったのよ」
設定資料にも書かれてたけど、本当に凄い姫様だよ。
こんな姫様だから、国王から心配されて城からあまり出されないんだと思うけど、それが無かったら今頃王女様の手駒は更に凄い事になってたんだろうな……。
「取り敢えず同行役に関しては、後で私の方から伝えておくわね。ユリウスが行動しやすいように、王都に隠れ家も用意しておいてあげる」
「そ、そこまでして貰わなくても……」
「良いのよ。冒険者が共同で使う家なら割とあるでしょ? そういう風に偽装していたら、あの子達も動きやすいとのよ」
ユリウスの為だけに用意する訳じゃないという姫様だが、これまで必要じゃなかった物をユリウスの為に用意するという時点でユリウスは感謝していた。
その後、変装道具は俺達用の余りがある為、それを使う事になりある程度の準備は整った。
「後、決めるのはユリウスさんの偽名ですかね? 何かいい名前思いつきました?」
「……ユーリという名にしようとおもいます。思い入れのある名でもありますから」
「そう言えば、ユリウスと出会った頃、自分の事をユーリと言ってたわね。それって、その時に考えた偽名?」
「偽名と言いますか、あだ名のようなものですね。アンジュが私の為に付けてくれた名前なんです」
エヘヘと笑みを浮かべるユリウスの顔を見た俺は、こんなユリウスを見るなんてと考えていると姫様も同じ事を考えていたのかギョッとした様子をしていた。
「取り敢えず、今日の所はこの辺で終わりましょうか」
「はい、色々とありがとうございます。今後も姫のお役に立てるように頑張ります」
「ええ、ジンさんも色々とユリウスの為に動いてくれてありがとう」
そう姫様からお礼を言われると、ユリウスからもお礼を言われこの日の話し合いは終わった。
その日の夜、俺とクロエは何故か姫様に部屋に呼ばれて部屋に行くと、姫様と知らない女性が居た。
「姫様、こんな夜にどうしたんですか?」
「ええ、ジンさん達には先に紹介しておこうと思ってね。この子の名前はリリアよ」
「初めましてジン様、クロエ様。リリアと申します」
リリアと紹介された女性は、そう俺とクロエにお辞儀をしながら挨拶をして俺達も挨拶を返した。
何処かで聞き覚えがあるなと思ったけどこの女性、ゲームでは姫様のメイドとして傍に仕えていた人だな。
脇役で特に設定資料にも細かく書かれていなかったが、姫様の部下の一人だったんだな……。
その後、本当に呼び出されたのはリリアを紹介するだけだったので、俺達は姫様の部屋を出てそれぞれの部屋に戻った。
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