第91話 【会議・2】
「それでは一度、お昼休憩に入りますので一時間後にまたお集まりください」
あの後、話し合いは進み話し合いの時間となった。
しかし、その話し合いではラージニア家をどうするか決めきる事は出来ず、予定していた通り午後も話し合いが行われる事になった。
「こんな長く椅子に座ってたのは久しぶりで、腰がマジで痛い……」
そう言いながら俺は背伸びをすると、話し合いに参加していた貴族の長の数人が俺の事を見ている気がして居心地が凄く悪かった。
いや、分かるけどさ、俺は何も知らないし被害者の一人なんだけど……。
そう思いながら、その場にいるのが嫌になった俺はさっさと部屋を出て、食堂へと向かった。
「ここ、良いかなジン君?」
「ノヴェル様……別に良いですけど、俺と食べても大丈夫なんですか? 今の俺は平民扱いですよ?」
「私はそんな事は気にしてない。そんな事を気にしているんなら、態々平民となったジン君に近づいて娘と和解なんてさせてないだろ?」
まあ、確かにそう言われたらそうだけど……。
「それに少しジン君と話をしたかったんだ」
「俺とですか?」
「ジン君のやってる事、姫様の護衛の事を聞いていたんだ。時折、見かけない子供がいるなと思っていたがアレはジン君達だったんだな」
ノヴェルが言ってるのは、護衛時の姿であるジュンとクロの事だろう。
まあ、あの変装に関して俺もマジで凄いと思っている。
何せ声すらも変化させられていて、変装していると知らないと誰か分からない程だ。
「ええ、その色々と目立つ行為は避けようと思いまして姫様に護衛をするなら変装をさせて欲しいと頼んだんです」
「成程な……確かにジン君が目立つと、調査の方にも影響が来ていただろうし、その選択は間違っていなかったと思うぞ」
あれ? 普通に自分の力が知れ渡るのが嫌で、目立ちたくないって言ったけど、良い感じに勘違いされてる。
まあ、そっちについて考えていなかったわけでも無いし、訂正はしないでおくか。
それから俺はノヴェルと昼食を一緒に食べ、その間色々と世間話みたいな事を話した。
この人とこういう事になるとは、思ってもいなかった俺は終始緊張していた。
そうして昼食を食べ終えた後、俺はノヴェルと共に会議室へと戻って来た。
「少し早いけど、部屋で待っておこうと思ったけど、殆ど人は居ないな……」
部屋に戻って来てる人は俺を合わせて5人程、その中で顔を知ってるのはノヴェルを除いて二人いた。
その二人とは、リオンとレーヴィンのノルフェン家の二人。
引退したレーヴィンは国の大事な事を決める際は出てくる程、重要人物の一人として扱われている。
「ジンと言ったかね? 少し良いか?」
「っ! れ、レーヴィン様? は、はい大丈夫です」
ボーと時間が来るのを待っていた俺は、自分に近づいてきていたレーヴィンの気配に気付くのが遅れ声を掛けられてビクッと反応してそう返答した。
「そんなに緊張しなくても良いぞ、儂は既に隠居した身じゃからな」
「いえ、流石にレーヴィン様に緊張するなは難しいですよ……」
レーヴィン・フォン・ノルフェン、ノルフェン公爵家前当主にして元魔法騎士団団長。
肩書こそ受け取らなかったが、当時の魔法の腕から【賢者】と呼ばれてもおかしくない腕をしていたと設定資料に書かれていた。
その設定資料通り、レーヴィンの力は凄まじく、ゲームでも助っ人として登場するキャラの一人で人気も高いキャラだ。
孫も居るお爺ちゃんキャラではあるが、見た目は整っていて〝イケおじ〟として好かれているキャラだ。
「そうかの? 既に儂が隠居して大分経つんじゃがの……」
ふむ、と悩んだ様子でそういうレーヴィン。
俺はそんなレーヴィンに対して「それで、お話ってなんですか?」と尋ねた。
「おっと、そうじゃったそうじゃった。お主から出る魔力に興味が湧いての、その力は一人で鍛えたのか気になったんじゃ」
「その質問の意図的に俺に師匠が居るのかという質問でしたら、魔法に関しての師匠は居ません。一応、剣に関してはユリウスさんとアンドルさんに弟子としてではなく一人の剣士として教わる時はありますが、魔法は全て独学で行っています」
「ふむふむ、成程のう。じゃから、お主の魔力は他の魔法使いとは変わった巡り方をしておるのじゃな……お主【瞑想】スキルを持っておるじゃろ?」
俺の事をジッと見つめていたレーヴィンは、確信した様子でそう口にした。
「えっ、なんで分かるんですか!?」
「儂も持っておるからの、似た魔力の巡りをしておるのと思ってのう。しかし、その歳で【瞑想】持ちとは凄いの、儂が手にしたのは20を過ぎた頃じゃったが。便利なスキルで手にした時は、一人でダンジョンに挑みに行って怒られたの~」
昔の事を思いだしながら、レーヴィンはそう言った。
自分も持ってるからって、俺が【瞑想】を持ってる事を特定してくるってこの人やっぱりおかしいだろ……。
俺は心の中でそう思い、レーヴィンの異常さを改めて認識した。
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