第64話 【獣人族の英雄クロム・1】


 王都に戻って来たのは予定していた時間ピッタリで、俺達はそのままギルドへと向かった。

 そして受付でフィーネさん達を呼んでもらい、いつもの相談室へと移動した。


「ジンさん、クロエさん、無事にご帰還なされた様で安心しました。ダンジョンに送り出したものの、二人だけで行かせてよかったのか不安に思っていましたので」


「お二人の強さは知っていますが、それでも不安でした。こうして無事に再会できて、本当に良かったです」


 フィーネさんとリコラさんは、本当に良かったと安堵した様子でそう言った。

 岩石山のダンジョンは、そこそこ難易度がある場所。

 そんな所に、たった二人の冒険者を送り出すのは相当考えさせられたと思う。

 俺達が望んだとはいえ、送り出してもし死んだと報告されたら、精神的にも来てただろうしな。


「ご心配をかけて、すみません。ですけど、無事にこうして戻ってこれました」


 そう俺は二人に言うと、クロエも同じような事を言い。

 その後、俺達はダンジョンでどんな戦いをした等の報告を始めた。


「……金塊ゴーレムを数体倒したんですか?」


「何日も潜って、やっと一体目にするかしないかの魔物ですよ? それをたった一度の探索で何体も見たんですか!?」


「ええ、証拠の金塊もありますよ」


 驚くフィーネさん達に俺は【異空間ボックス】から金塊を取り出し、テーブルの上に置いた。

 一つ一つ、大きさにバラつきはあるが一番小さくても金貨数十枚の価値はある。

 そんな金塊を目の前に出されたフィーネさん達は、驚き固まってしまった。


「ジン君、やりすぎだよ。フィーネさん達固まったよ?」


「……ちょっと、調子に乗ったてしまった。でもさ、クロエも金塊ゴーレムをこれだけ倒したのフィーネさん達に見せたかっだろ?」


「まあ、うん。否定はしないかな」


 俺のやった事に注意したクロエだが、自慢したかった気持ちが多少あったみたいだ。

 その後、気を取り戻したフィーネさん達に報告の続きを行った。


「成程、20層までは潜ったんですね。流石といいますか、私共の予想を遥かに超えた成果ですね」


「ゴーレムの戦い方、事前に知っていたのでそのやり方を実践したのでその分、効率よく進めていたんです」


「……ゴーレムの狩り方って、もしかして核を狙うやり方ですか?」


「はい。俺とクロエは眼が良いので、最初にゴーレムを観察して何処に核があるかを調べ、魔法でその核に攻撃当て討伐してました」


 そう俺が言うと、フィーネさんとリコラさんは同時に溜息を吐いた。


「あれって、ゴーレムの正しい戦い方じゃなかったの? ジン君、簡単にやってみてって言ってけど、あれが普通の倒し方じゃないの?」


「……ジンさんが言ったゴーレムの倒し方ですが、本来の倒し方ではありません。ジンさんが今言った戦い方は、上位の冒険者でも極僅かの人が出来るやり方です。高い動体視力と、核に大きなダメージを与える力のある者だけが出来るやり方なんです」


「そうだったんだ……でも、意外と簡単に出来たよね?」


 リコラさんの言葉を聞いたクロエは、首を傾げながら俺にそう聞いて来た。


「簡単に出来たのは、クロエがそれだけ才能があるからだよ。リコラさんが言った通り、あのやり方は二つの大きな力が必要なんだ」


「お二人が才能のある方だとは理解しているつもりでしたが、まだ認識が甘かったみたいです」


 フィーネさんがそう言うと、リコラさんも頷いて「認識が甘かったです」と続けて言った。

 まあ、こう言われても仕方ないだろうな、ゴーレムの核狙い戦法は本当に難しいやり方で、ゲーム時代は慣れるまで俺も時間がかかった。

 その時の経験のおかげで、ある程度の予想が出来ていた俺はクロエの様に眼に頼らず、核狙いの戦い方が出来た。


「それでこちらの金塊ですが、どうしますか? お売りになられますか?」


「一番大きい金塊以外は売ろうと思います。後、他のゴーレムの素材も沢山あるんですがそれは下で出した方がいいですよね?」


「そうして頂けると助かります。ちなみに、どれ程の量がありますか?」


「数は数えていませんが、ノーマルゴーレムは数百体は倒してたと思います。他に属性ゴーレムもノーマルゴーレム程では無いですが、かなりの数倒してます」


 そう俺が言うと、フィーネさんとリコラさんは遠い目をして「分かりました」と返事をした。

 その後、報告は終えて素材を地下の作業場へと移動した。

 そして作業場で俺は、ゴーレムの素材をその場に出した。

 その量に作業場の者達は沈黙して、フィーネさん達は覚悟していたようで「多いですね……」と静かにそう言った。


「流石にこの量は、今日明日では無理そうなので来週に報酬の受け渡しでも構いませんか?」


「最初からそうしてもらうつもりでしたので、それでいいですよ。流石にこの量をすぐにやれって言ったら、折角ギルドと良好な関係が出来てるのに自ら崩す事になりますからね」


 それから俺達はギルドでのやる事を終えたので、来週また来ますと言ってギルドから出て建物の前でクロエと解散した。

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