第63話 【岩石山のダンジョン・3】


 見張り番中、特にこれといって問題は起きず交代の時間になり、中からクロエが出て来た。

 そしてクロエと見張り番を交代した俺は、建物の中に入りベッドに横になると直ぐに眠りについた。

 それから数時間後、俺達は再びダンジョン探索を再開させて奥へと向かっていた。

 そんな俺達の現在の探索場所である第11階層から、現れる魔物の種類が少し変化している。


「あれって、ゴーレムだよね? でも昨日倒してたゴーレムと少し違う?」


「よく気付いたな、あれはこの階層から出る。火石のゴーレムだな、あれとは別個体として〝水石のゴーレム、風石のゴーレム〟の3種類がこの階層から出て来るようになるんだ」


「属性の名前が付いてるって事は、それぞれの属性の魔法とか使ってくるの?」


「正解。奴等はその名前についてる属性魔法を操って来るから、ノーマルゴーレムよりも厄介な連中だ。ただ倒し方はノーマルゴーレムと変わらないから、落ち着いて対処すれば大丈夫」


 俺はそうクロエに言って、自分の戦いを見せる事にした。

 今回相手にするのは、火石のゴーレム。

 放つ魔法は火炎系であまり戦闘が長引くと、丸焼きにされてしまう。


「——!」


 まず最初に俺はゴーレムの前に立ち、どんな魔法を使うのか見る為に挑発するとその挑発にまんまと乗っかりゴーレムは魔法を放ってきた。

 ゲーム通りの威力だな、これだったらそこまで警戒しなくてもいいな。

 魔法を見てそう判断した俺は、核を探してその位置に魔法を放ち、火石のゴーレムとの初戦闘を終えた。


「とまあ、こんな感じで魔法の威力は大体あんな感じだから、そこまで気にせずノーマルゴーレムで掴んだゴーレムの倒し方をやれば、楽に倒せると思うよ」


「ちょっとだけ魔法に驚いたけど、私でも何とかなりそう」


 クロエは俺の戦いを見て、自信有り気にそう言った。

 それから、クロエも一度一人で属性ゴーレムと戦ってみて、相手の強さ等を確認して俺達は更に奥へと探索を進めた。


「そう言えば、ジン君。ここって、鉱石が採れるらしいけどそっちは採らなくていいの?」


「あ~、別に採っても良かったんだけど、俺の中では最初から金塊ゴーレムを倒す予定だったから、今は余計な出費を抑えようと採掘道具を買ってないんだよ」


「そう言えば、買いたいお店がやってないって言ってたね。まだ開いてなかったの?」


「もう暫くだと思うけど、現状そこまで必要として無いからな。鉱石掘りって金になりそうだけど、ここのダンジョンとかだと魔物狩りをしている方が稼げたりするからね。それこそ、人数が居れば手分けして出来るけど」


 ゲーム時代、鉱石金策と魔物狩り金策、どちらが効率がいいか論争が色んなダンジョンで行われていた。

 場所によって効率が変わって、この岩石山のダンジョンだと鉱石掘りよりも魔物狩りの方が効率がいいと俺は知っている。


「それに今回は攻略を視野に入れた探索だから、道中で鉱石を掘ってる暇は無いからね」


「それもそうだね」


 その後、俺達は採掘可能な場所をいくつも発見するが、全て無視して探索を進めた。

 基本出て来る魔物はゴーレムばかりだが、普通にゴブリンやウルフ系等の魔物も出て来る。

 その時はゴーレム相手に魔法ばかり使っているので、そいつらは剣術で倒したり気分を変えながら探索を行った。


「現在の時刻が二日目の夕方辺りで、今居る階層が15階。今日の夜までに20階には着く予定だが、今回の探索でダンジョン攻略は厳しそうだな」


「そうだね。やっぱり、ゴーレムとの戦闘は早く終わってもかなり数が出て来て、そこに時間が取られちゃったね」


「ああ、あんな頻繁に魔物の出くわすとは思わなかった」


 ゲームではそこまでゴーレムの出現が高い感じではなかったが、今回の探索ではかなりゴーレムに足止めを食らってしまった。

 まあ、その中には金塊ゴーレムも居たり、ゴーレムの素材も沢山手に入ったから、探索として考えると悪い訳では無かった。


「まあ、最初から今回の探索でダンジョン攻略は厳しいと思っていたし、良い感じに訓練の成果も確認出来たな」


「そうだね。私もあそこまで自分の魔法が成長してたなんて、戦いで使って初めて分かったもん」


「俺も剣術が前より良くなってると、戦っていて分かったな」


 そんな反省をしつつ、俺達は歩みを止めず先へと進んで行った。

 そうして結局、予定よりも少し遅めの時間に20層の安全地帯に入り、交代でそれぞれ休んだ。


「おはよう。クロエ、どうだった見張りは何かあった?」


 翌日、建物の外で見張りをしているクロエに起きた俺はそう声をかけた。


「おはようジン君、何も無かったよ~」


「そうか、何もないならそれに越したことはないな……朝食の準備はもう済んでるから、早く食べて少しでも探索の時間を増やすか」


「は~い」


 その後、俺達は朝食を食べて魔道具を回収後、20層付近で魔物狩りを行う事にした。

 そして昼過ぎ位まで狩りを続けた俺達は、満足して20層の安全地帯へと戻り〝転移床〟に乗りダンジョンの入口まで戻って来た。


「ジン君、あの床って前のダンジョンだとボス部屋の奥にしかなかったのに、何でこのダンジョンには複数の場所にあったの?」


「ダンジョンの難易度が違うからだろうな、俺達が今回探索したダンジョンは前回よりも難易度が高い場所。その為、一定の階層毎に〝安全地帯〟があっただろ?」


「うん、あそこも不思議だったよ。魔物が一切現れなかったから」


「あれらはダンジョンが俺達の為に、用意した物だと言われている。俺もそこまで詳しく無いから、気になるならダンジョンについての本とか見てみると良いよ」


 実際はゲーマー達が快適にプレイする為に作られているが、そんな事をこの世界で説明した所で馬鹿にされるのが目に見えている。

 それから俺達はダンジョンの外に出て、既に待機していた御者に声をかけて王都へと戻る事にした。

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