第56話 【進展・3】
部屋に戻った俺は〝森の神秘薬〟の価値がゲームの時よりも高い事をユリウスの反応から知り、姫様にまだ見せる前で良かったと安堵した。
「まさか、あんなに驚かれる程、価値が変わってるとは思わなかった……設定では〝あまり巷には出回らない〟としか書かれて無かったから、ちょっと珍しい程度かと思ってたけど……」
見せた相手がユリウスで本当に良かった。
もしこれをユリウス以外の王城で働く人に見せていたりしたら、それこそ俺は変な注目をされていただろう。
だけどユリウスは俺が注目を浴びたりするのを嫌ってる事を理解してくれてるから、この事は多分黙っていてくれる筈だ。
まあ、それでも姫様には伝えられるとは思うが、それでもまだ軽症で済むだろう。
「……ゲームの時と、この世界での価値が違うアイテムが多数ありそうだな」
調べられる機会があったら、調べておかないと後々またやらかしかねないな。
そう俺は一人反省会をして、昼食を食べに食堂へと向かった。
「ジン様、この後は予定ありますでしょうか?」
「えっ? 特に無いですけど」
食事を終え、訓練に行こうかと立ち上がるとそこにゼフが現れた。
「でしたら、この後少しお話出来ないでしょうか? ラージニア家の件についてお話したい事がありますので」
そう言われた俺は分かりましたと言い、ゼフに連れられ会議室みたいな場所へと連れて行かれた。
ギルドみたいな相談室を想像していたが、その倍以上の部屋に連れてこられた。
「ジン様、先日より私共はラージニア家について探りを入れており、そちらの経過報告をしようと思いましてお時間を頂きました」
「経過報告って、俺に聞かせても良いんですか? 既に俺は普通の平民ですよ?」
「ジン様は被害者の方ですからね。知る権利があります」
ゼフはそう言うと、俺にこれまで調べた事を報告してくれた。
その内容は大体、前世で知ってる内容なのだが、その中には俺が知らない事があった。
あれかな、3年前でもみ消せなかった事とかかな?
「以上が現在調べて分かった事になります。まだ何か隠していそうなので、引き続き調査は続けようと思います。それと毒の入手経路もある方がこちらに協力して頂き見つける事が出来ましたので、そちらについては調査を続けて行こうと思います」
ある方ね……この世界でも、あのキャラはラージニア家を嫌ってるのか。
「そうですか、分かりました。何かお手伝い出来る事がありましたら、お伝えください。俺が出来る事なら、協力しますので」
「はい、その時はよろしくお願いします」
ゼフはそう言うと、資料のコピーを俺に渡して去って行き、俺は受け取った資料をもっとジックリ読みたいと思い部屋に向かった。
部屋に戻った俺は、ゲームでのラージニア家の問題と、資料に書かれてる内容を照らし合わせる事にした。
「ゲームの方は設定資料だから細かく書かれていたけど、この報告資料も大分細かく書かれているな……と言う事は、完全にあのキャラが王家の調査員に情報を流しているのだろう」
そうなると疑問になる事が一つだけある。
あのキャラがラージニア家の情報を渡したのは、ジンが悪役に堕ちて自分にも責任を感じてからだった筈だ。
だが今のこの世界では、俺は悪には落ちてない。
なのに何故、あのキャラは動いたんだ?
「作中でも謎を残して、最後は消息不明になったキャラだったからな……何を考えているのか、全く分からん」
ゲーム発売から一年後に発売された資料設定と題して発売されたゲームの設定資料の中にすら、そのキャラの事は詳しく書かれていなかった。
「何の目的で動いたか分からんが、必要以上に関わらないのが賢明だな……」
昨日、自重すると決めた俺は、取り敢えずゼフや王家から協力の申し出がない限りは今の生活を続けようと決めた。
半日護衛するだけで普通の依頼を受けるより稼げて、衣食住も保証されている。
「こんな割のいい依頼はそんなに無いしな……」
受ける時は色々と悩んだが、受けて正解だったと今は思える。
そんな事を考えながら俺は資料の確認を終えた俺は、夕食までの時間を訓練で時間を潰そうと思い部屋から出で訓練場へと向かった。
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