第44話 【学園へ・3】

 模擬戦闘のルールは剣縛り以外は、先日と同じで互いに全力は出さず、そこそこの力で戦うと決めて戦いを始めた。

 加減した戦いでは、ユリウス相手だと変に意識してしまって一人で訓練するより良いのが少し悔しいな……。


「ジン君、少しだけ速度を上げますよ」


「ええ、良いですよ。まだ加減の中でも抑える方ですからね」


 ユリウスの言葉にそう返す俺は、戦闘に集中しながらある事を考えていた。

 俺の使ってる今の剣技は、ジンが元々訓練していた太刀筋に前世で少しだけ習っていた剣道。

 そして、趣味で見ていたアニメの剣士キャラが使っていた剣術を付け合わせて使っている。

 我流と言えば聞こえはいいが、型が全く無い俺の剣技は、剣術に長けた相手だとどうしても不利になってしまう。

 事実、魔物相手には効いていた俺の剣技がユリウス相手には全く歯がたっていない。


「ジン君、どうしました?」


 そこに辿り着いた俺は模擬戦闘を中断してもらうと、ユリウスが心配した様子でそう声をかけて来た。


「ユリウスさん、正直に答えてください。俺の剣技、どうですか」


「初見だとジンさんの見た目も相まって、対人相手にも有効ですけど時間が経つにつれて相手は慣れるでしょう。そうなると、一気にジンさんの剣術は通用しなくなります」


 そう的確に言われてしまい、俺はズーンと気が落ちてしまった。

 正直、魔物相手なら今のままで大丈夫だが、今後対人相手に戦う事が増えると考えると現状の剣術を変えないといけない。


「私の意見ですけど、今のジンさんの剣術は未完成な状態です。ですので、今の剣術を更に自分なりに研究して訓練を続ければ一つの剣技に進化すると思います」


「……本当ですか?」


「正直、ジンさんの剣術を最初見た時に〝勿体ない〟と思ったんですよ。もう少し先に進めばより優れた剣術になるのにと、なので何か剣で迷う時があればいつでも相談に乗ります。ですので、剣ともっと触れ合ってみましょう」


 ユリウスにそう言われた俺は「はい」と返事をして、中断していた模擬戦闘を再開した。

 その後、ユリウスに陽が沈むまで剣術の種類等を教えて貰ったりと、有意義な時間を過ごした。


「ジン君、訓練場で見たけどユリウスさんの弟子になったの?」


「そう言う訳じゃないけど、傍から見たらそう見えたかもな。でも弟子じゃない、ただ剣士と剣士が互いに剣について話してただけだよ」


 実際、誰かに師事されるより自分なりに突き進んだ方が良いと言われ、俺を弟子扱いはしないと言った。

 弟子として扱いはしないが一人の剣士として、アドバイスや相談はいつでもすると言われた。


「まあ、今まで一人で悩んでばっかりだったから、良き相談相手が出来たもんだな」


 そう言うとクロエは「そっか、それは良かったね」と微笑ましそうな笑みを浮かべながらそう言った。

 その後、従者達の使う食堂で食事をした俺は、シャワー室で汗を流して借りることになった部屋に入った。


「やっぱり、広いよな……」


 無駄に広い部屋に呆れながらベッドに座った。

 家具がちゃんと置かれていて、こんだけ広いって感じるって流石〝城〟って事だよな……。


「さてと、寝る前にやる事やるか」


 寝落ちする前に俺は無理矢理、体を起こしてソファーに座り瞑想を始めた。

 剣術の方はまあ課題だらけだが、魔法に関してはこれをする事である程度の悩みは解決する。

 瞑想中は魔力の流れを強く感じる為、自然と魔力コントロールが上がる。

 それに頭もスッキリするから、新たな訓練なんかも考えつくかも知れない。

 そう思いながら瞑想をした俺は、二時間後ベッドに横になり眠りについた。


「ん~、寝る前に【瞑想】したおかげで頭がスッキリしてるな、やっぱこのスキル無理に取得して正解だっだ」


 回復スキルは非常に使えるスキルだし、もっと他のもとっておこうかな?

 俺の中で次にとるとしたら、常時回復系ではなく普通の回復魔法なんだが……ジンにそっちの才能あったかな?


「ジンって回復魔法を使ってなかったイメージがあるからな……」


 ゲーム時代、非常に強力な魔法を使うジンだったが〝回復魔法〟を使用してるパターンは無かった気がする。

 もしかしたら、使っていたかもしれないが記憶ではそれに関して消えている。


「まあ、訓練したら使えるか使えないか直ぐに分かるか」


 少しだけ悩んだ俺はそう言って、食堂に向かい朝食を食べた。

 食後は、護衛用の服装に着替えてメイドに変装用のメイク等をしてもらってから、姫様の所へと向かった。

 姫様の部屋の前には既にクロエが待機しており、俺も一緒に姫様の準備が終わるのを部屋の外で待った。

 そうして姫様の用意が終わると、部屋から姫様が出て来たので一緒に城を出て馬車に乗り学園へと向かった。


「姫様、今日はテストと言ってましたけど俺達は隣に居ても大丈夫なんですか?」


「ええ、通いながら護衛をする人は同じようにテストを受けるけど、ジュン達は違うから大丈夫よ。でも私語は基本禁止よ。何か、危険を察したら小声で伝えて」


「そうですか、分かりました」


 へ~、テスト中でも護衛が一緒に居ていいのか、護衛だから当たり前なのかな?

 そう思いながら俺はテスト前の最後の仕上げと言って、教科書を読んでいる姫様の邪魔をしないように俺とクロエは待機する事にした。

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