第42話 【学園へ・1】

 それから数日後、俺とクロエは姫様と共に学園へと来ている。

 デュルド国王都に造られたこの学園はゲームの舞台として登場するからか、多くの点において他の国の学園より優れている。

 まず学園の広さだが、王都の一区画を丸々学園用として使われている。

 訓練施設等も充実していて、訓練用の建物や野外訓練場も備わっている。


「学園ってこんなに広かったんですね……」


「ダンジョンも有名ですけど、デュルド国で一番他国からも知られているのはこの学園の存在です。その為、多くの国々から学びにやってくる方々も居て、学園外よりも多くの人がいて意外と楽しい場所なんですよ」


 姫様はそう言うと、少しだけ学園の中を案内してくれて教室へと向かった。

 姫様の教室はこの学園でも優秀と言われとている〝白金クラス〟で、約20名程の生徒が既に教室の中に居た。

 教室に入った姫様に生徒達は軽く会釈する程度で、誰も姫様に近寄ろうとはしなかった。

 これは姫様が嫌われているからという訳ではないのだが、姫様自身が人を近づけない様にしていた。


「姫様、友達いるんですか?」


「居るわよ。ちゃんと」


 俺の言葉に姫様はムッとした表情でそう言い返してきて、自分の席に座り先生が来るのを待機する事になった。

 その後、続々と生徒がやってきて姫様が教室に入ってから10分程経ち、このクラスの担任がやって来た。

 先生は教室に入ると、一人ずつ点呼を取り全員が居る事を確認すると、始業式があるから移動するようにと生徒に言った。


「姫様、どのタイミングで出ますか?」


「最後の方で良いわよ。先に行っても、どうせすぐに始まらないもの」


 つまらなさそうに姫様がそう言うと、移動を開始した女生徒の一人がこちらへと近づいて来た。


「フィーちゃん、この人達新しい護衛の人?」


 近づいてやって来た女生徒は、姫様に対して敬語も無く逆に愛称で呼びそう言った。

 そんな女生徒の質問に対して、先程まで不機嫌そうだった姫様は「そうよ。ミリア」と少しだけ機嫌がよくなってそう返した。

 その名を聞いて俺は心の中で、この女性とが〝ミリア〟なのかと顔には出さない様に驚いた。


「そうなんだ。あたしはミリアーナ・フォン・リンベル。よろしくね」


「ジュンです。よろしくお願いしますミリアーナさん」


「クロです。よろしくお願いしますミリアーナさん」


 俺とクロエは護衛中の偽名、俺はジュンでクロエはクロと名乗りミリアーナさんにそう挨拶をした。

 ミリアーナ・フォン・リンベルというキャラは、ゲームには深く関わってないのだが姫様とのイベントで時折名前だけ出ていた。

 話には出てくるのにキャラとして出てこないこの名前の主を、俺や俺と同じくやり込んでいたプレイヤーは必死に探した。

 しかし、結局見つける事が出来ずに一人一人脱落していき、最終的に俺は見つける事無くこの世界に転生してしまった。

 その何百という時間を費やし、探していたキャラが目の前にいる。

 マジで泣きそうなんだが……。


「あたしよりも年が下なのに、綺麗な作法ね。こんな人達、フィーちゃんの護衛に居たの?」


 俺が必死に涙を我慢していると、ミリアーナさんは首を傾げながらそう姫様に尋ねた。


「遠くに住んでた子達を呼んだのよ。前の護衛の人が少し用事で出来なくなって、急遽必要になったから、まだ学園に通わないこの子達に頼んだのよ」


「そうなんだ~、でもフィーちゃんなら王都に頼めそうな護衛の人居そうだけど、そっちには頼まなかったの?」


「この子達のが優秀だもの、それに面白くて気に入ってる子達だから護衛に決めたのよ」


 そう姫様が言うと、ミリアーナさんは「フィーちゃんがそこまで言うて珍しいね」と俺達と姫様を交互に見ながらそう言った。

 そんな二人は休み期間中の話しをしようとしたので、俺は「他の生徒、もう移動したみいですよ」と姫様達に言った。


「あら、気付かなかったわね。ありがとうジュン」


「いえ、これが役目ですから」


 その後、俺は姫様達と共に教室を出て始業式の場所にへと移動した。

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