第32話 【姫様からの依頼・1】
ダンジョン攻略の翌日、俺とクロエは早朝からギルドにやって来て今後について話し合いを行っていた。
「まず確定事項として、ダンジョン攻略の発表はされます」
「……あの一つ質問何ですけど、上位の冒険者が俺達が攻略したダンジョンを攻略してるのに、俺達はその方達よりも早く攻略したんですか?」
「今回の発表内容ですが〝銅級冒険者になってからのダンジョン攻略までの期間〟という項目になりまして、ジンさんとクロエさんはその記録を大幅に更新した事で発表されます」
フィーネさんはどのような事で発表されるのか、詳しく説明をしてくれた。
攻略時間も早い方だが、まだ記録更新とまではいかず攻略人数も一人で攻略してる人がいるから更新はされない。
なので残った〝ランクアップしてからダンジョンクリアまでの期間〟での記録になるのだが、そこで俺とクロエは大幅に記録を更新して発表される事になった。
「別にもう二つだけの記録でも良いのに、何で三つ目まであるんですか……」
「そこは上の方達が決めた事ですからね。取り敢えず、昨日あの後本当に記録更新されているのか確認をした所、銅級冒険者になって一日で攻略した方は居ませんでした」
「それとジンさんとクロエさんは、攻略時間も最高記録からそこまで離れていませんでした。なので、いつ入っていつ出て来たのか管理者に連絡が入り、そこも発表されるかもしれません」
追い打ちかの如くリコラさんからそう言われた俺は、「マジですか……」と呟き溜息を吐いた。
「リコラさんそれは後で落ち着いたら言おうと思ってたのに……」
「ご、ごめんなさい。その先に教えておいた方が気持ち的にも整理できる時間が出来るかと……」
フィーネさんから注意されたリコラさんは、俺に向かって「ごめんなさい」と謝罪をした。
「いえ、大丈夫ですよ。昨日で大分、色々と整理できていましたから……自分の行動に後悔してるだけなので」
実際俺はもうやってしまった事だからと、今日は大分楽な気分で話し合いを受けている。
それに既に地盤はある程度出来て来ているから、今の俺をどうこうしようとする輩も動き辛いとは思うしな。
それから話し合いは進み、対策の一つとして長期依頼を受けるのはどうかと提案された。
「長期依頼をですか?」
「はい、依頼中と言えばある程度の人は避ける事が出来ます。依頼主が偉い方であれば、尚の事人を避ける事は可能だと思います」
「……確かにその手はありですね。ですけど、そんな長期依頼を今すぐに用意とか出来ないですよね?」
良い提案だと直ぐに理解した俺は、駄目元でフィーネさんにそう聞いた。
するとフィーネさんは笑みを浮かべると、資料の束から一枚の依頼書を取り出した。
「丁度、今朝方ジンさんとクロエさんに対しての依頼書が届きました。依頼主はフィアリス姫様です」
「……一応、見せてください」
俺はそう言って依頼書を手に取り、クロエと共に依頼内容を確認した。
内容は、姫様の護衛と話相手、そしてちょっとした雑用をお願いしたいという内容だった。
「姫様、俺がダンジョン攻略した事知ってるな……」
「うん、それで多分ジン君が騒ぎから逃れたいって思ってる事も分かってて、この依頼書を出したんだと思うよ」
その証拠に依頼の内容分に、〝隠れ蓑としては最高にいいですよ〟という一文も書かれていた。
姫様に気に入られてしまって、どうしようかと思ってたけど……。
「クロエ、俺はこの依頼を自分の為に受けたいと思ってる。クロエが良いなら、受けてもいいか?」
「うん、私は良いよ。ジン君のおかげで貯金もあるから、少しの間一つの依頼に絞っても大丈夫だよ」
「ありがとうクロエ、いつかこの恩は返す」
そうクロエに言って俺はフィーネさんに、姫様からの依頼を受けると伝えた。
その後、明日王家からの使いが迎えが来ると言われ、俺達は明日の準備もあるから解散する事にした。
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