24.魔法使い
誕生日にゼルガイドさんが俺の父親になると宣言してから早三日。
屋敷には常駐することもなく、昨日一度訪問しただけだったから特に進展があるというわけでもない。
「まあ、来たら可愛がってくれるんだけど」
<イケメンですが、残念な感じはします>
「失礼だからね?」
「アル、起きてるかい?」
昼食をとってから洗い物をしているカーネリア母さんの邪魔をしないよう、それとリグレットと話すため自室へ戻って来ていた。
なんだかんだで、カーネリア母さん以外の話し相手は居ないので退屈はしないので暇があれば会話することにしている。
そんな中、洗い物が終わったカーネリア母さんに声をかけられた。
「はーい、どうしたの?」
「そろそろ落ち着いてきたし、魔法の訓練でもしようと思ってね」
「本当!? 行く行く!」
ついに魔法の勉強となるらしい。
俺は嬉々としてベッドから降りると、カーネリア母さんについて庭へと向かう。
「さて、アルは今までどれくらい勉強したかしら?」
「えっと、ランク分けされているのと、マナを使うこと、詠唱が必要でイメージが大事って感じかな」
「あら、勉強しているね。そう、特にイメージが大切だね」
カーネリア母さん曰く、魔法使いは貴重だけど使い手の練度がバラバラなのに『魔法使い』としての技量関係なく名乗っていたのをきちんと管理しようってことランクはで作られたらしい。
確かに一つしか使えなくても魔法使いに変わりはない。
が、それで大量の魔物を倒せるかと言えばノーである。
そりゃたくさんの魔法が使えた人の方が優遇されたり給料が高かったりするべきだよな。
「――ランクはあたしにとってはそこまで重要じゃないのよね。魔法はイメージで、ファイヤーボールを三つ撃ちだすことだってできるから」
「三つも」
なるほど、そういうことか。
恐らく『ファイヤーボール』という体は変わらないが、アレンジは可能ってことだな。
火属性の一つ上にある魔法で、フレイムカノンという魔法があるけど、本を読んだ限り火球ではなく目標をロックして焼く魔法だった。
だから、これを三つで飛ばすのは難しいけど、規模を大きくすることで周囲を巻き込むといったことができるはず。
手りゅう弾と火炎瓶の差みたいな感じで差分を作れるわけだな。
「アルはなにが使えるの?」
「僕はファイヤーボールとアクアフォームの二つ! 他にもお母さんが知っていたみたいだけど危ないからって教えてくれなかったんだ」
「……そうなのかい。それじゃあファイヤーボールを見せてもらってもいいかい?」
「うん!」
「『土の力を我が具現し、人形を作り給わん』<アースフィギュア>」
カーネリア母さんが庭の土で人形のようなものを生やし、的を作ってくれた。厚みがあってなかなか強度がありそうだな。庭が壊れない程度に撃ってみるか。
「『激なる火の鼓動、目の前の障害を破壊せよ』<ファイアーボール>!」
「!」
俺の撃った火球はきちんと的にヒットして爆散。
撃ち抜いて庭を壊すようなこともしていないので、制御は完璧だ。
俺は汗を拭いながらカーネリア母さんの方を向く。
「どう? これくらい……ってどうしたの!?」
「……ハッ!? アル、あんた今マナを複雑に制御していたわね……?」
「え!? 分かるの」
「あたしくらいの魔法使いになると感覚でマナの動きがわかるのさ。6歳でその制御レベルはとんでもないことだよ?」
らしい。
この魔法制御はあの本に書いていたのだが、高度な技術だったようだ。
するとぶつぶつと呟いていたカーネリア母さんは俺を抱き上げ、いわゆる高い高いをした状態で笑う。
「あはは! こりゃ凄いよ! 天才と言ってもいい! あたしの持っている魔法と知識、学校に入るまでに教えてあげないとね! 五年もあるんだ、アルなら首席入学卒業も夢じゃないね!」
「うわわ……!?」
大層喜んでくれたので俺としてもカーネリア母さんが楽しそうなのは見てて嬉しい。
自分でかなりの使い手だと言っていたし、これは力をつけるための期間が短縮されるに違いないと胸中で呟く。
「それじゃ、あたしの魔法を見せてあげようかね。先生が大したことなかったらやりがいも無いだろうし」
「是非!」
「おっとっと、はしゃいでいるのは子供らしいねえ。それじゃ離れていて」
カーネリア母さんは再びアースフィギュアを作成……でかいな……?
それを作成して位置に立つ。
さらにどこから取り出したのか、杖を片手に詠唱を始めた。
瞬間――
「……!?」
「『赤き熱、白き光が重なる時、眼前にある全てのものは形を無くす。燃え盛る業炎よ力を与えたまえ』<エクスプロード>」
――アースフィギュアの胸あたりに白い球体が出現する。
それは一瞬で赤に染まり、そこを中心としてマナと熱風が渦巻き閃光と共に爆発を起こした!
「うわああああ!?」
「<シルバーガード>。大丈夫だよアル」
「あ、あれ?」
何かを詠唱したカーネリア母さんが苦笑しながら俺の頭に手を乗せる。
よく見れば透明な板のようなバリアが俺達の前に現れて飛び石や熱風をシャットアウトしてくれていた。
「これは……?」
「これはミドルクラスの光属性魔法だね。アルならもしかしたら早く習得できるかもしれないけど!」
「よーし! 頑張るぞ!」
「うんうん、それじゃ続けようか」
と、調子に乗ったはいいものの――
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