第3話 勇者と魔王の会合
大きくため息をついた後に僕は
「申し訳ないですけどカツ丼はもうありません! その代わりと言っては何ですが、僕の楽しみにしていたデザートを…本当はめっちゃ楽しみにしていた僕のデザートを嫌々ですけど放出してあげますから!」
「な、なんかすまん。」
「なぜ2回言ったのだ?」
イケメンは申し訳なさそうにしていたが、美女は強調した事に気付いていないみたいだ…残念な美女だ。
僕は冷蔵庫から取り出したシュークリームとなめらかプリンを二人に1つずつ差し出した。開けれないといけないから袋と上蓋を取ってあげた。
「はい、お召し上がり…ください。」
僕がまだ言い終わらないうちに二人はシュークリームとプリンを貪りだした。ものすごい勢いだ。
…2秒でなくなった。
「何これ? めっちゃうまい。こんなデザート食べた事ない…。」
「はっ、いつの間にか無くなっていたぞ。食べた記憶がないぞ。」
二人ともクリームを顔につけたまま美男美女台無し〜〜〜!
はっデジャブ!
「もっと! もっとないのか〜あのしゅーくりーむというのは! 外の皮の思議な食感、中のどろっとしたのは濃厚でいてなめらかかつ食べた事のない味わい。もっともっと食べたい〜〜〜!」
イケメン、カツ丼よりリアクション大きいな。あと興奮した顔がブサイクだ。
「我もしゅーくりーむはもちろんだったが、このぷりんというのもうまいのだぞ! あと10個は食べられるのだぞ!」
残念美女はどうやらなめらかプリンをご所望のようだ…
「もう何もありません。お引き取りください。」
「そんな殺生な〜、何卒、何卒そこをなんとか!」
「いやだぞ! だめだぞ! もっとよこすのだぞ!」
二人が僕の足にしがみ付いて懇願してきたが無いものはない。僕はそのまま2人にまとわりつかれたままカツ丼を食べ続けた。
…ものすんごいシュールな絵面だな。
結局2人は僕がカツ丼を終えた後も足にしがみつき懇願し続けた。向こうは全く引く気がないようだ…しょうがない。
「わかった、わかりました! じゃあ明日学校帰りにまた買って来ますから。」
「何、本当か! いええええいやったぜ! 粘ってみるもんだ。よしこれを必殺技として申請してみるか!」
「本当か! 絶対だぞ、絶対に約束を守れよ! 振りじゃないぞ!」
…あんだけ僕の足にすがりついて懇願しておいて…最初っから選択肢が一つしかないじゃん。
「わかってますよ。でもあなたたちは明日もこっちの世界に来られるんですか?」
「そういえばそうだな。ちょっと試してみるか。」
「我もだ、ちょっと元の世界に戻れるかも含めて検証してみようか。」
そういってイケメンはベランダから外に出た。戸を開けて出て行ったがもちろんベランダにイケメンはいなかった。残念美女もクローゼットに入って行った後に開けてみたが中にはいなかった。
本当に繋がっているみたいだな…そうだ! 今のうちに扉が開かないようにつっかえ棒をしておけばいいんじゃないかと閃いて棒をさがしているうちに二人とも帰ってきてしまった。チッ…今度検証してみるか。
「やっぱり自由に異世界と行き来できるみたいだぞ。俺は自分の部屋の扉と繋がっているようだ。自分の部屋にと念じれば自分の部屋に。異世界へと念じればここに繋がるみたいだぞ。」
「我もだ。我は寝室の扉と繋がっているぞ。」
「はあああそうですか…いつでも行き来できるんですね。」
僕は大袈裟にため息をしながら告げた。
「何だ? 嫌そうじゃな?」
「まあまあ、お互いに今日会ったばかりだしこれから分かり合っていこうよ、なっ」
イケメンがいきなり協調性を強調しだす。くよくよしてもしょうがないが、ここは気持ちを切り替えて少しでも良い環境にすべく努力をするべきだな。そう思い直した僕はまず自己紹介をする。
「まあ、詳しいことは明日以降に話すとしてとりあえず、こっちの世界の部屋の持ち主の三ツ俣優太です。ユウタって呼んでください。」
「ああ、そうだったなユウタ、まだお互いの名前も言ってなかったな。俺の名前はレイン・バークレンだ。レインと呼んでくれ。」
「そして我だがカミラ・カルロッツェだぞ。よろしくなユウタとレイ……ん?」
………………………
自己紹介も終わり長かった1日からやっと解放される(一時的にだが)と思ったのもつかの間、何か静かになったなと思って二人を見やるとお互いに指を刺し合い本当に驚いた顔で口がパクパクしている。しばらくして二人が同時に叫び出す。
「カミラ・カルロッツェええええええええええええええ?」
「レイン・バークレンんんんんんんんんんんんんんんん?」
夜8時過ぎなのにまあまあ近所迷惑な声量だ。大丈夫かな? 近所から苦情来ないか心配になってしまった。
「カミラ・カルロッツェ…そういえばさっき第10界火魔法デフォルノスフィアって言ってたし、まさか本物?」
「レイン・バークレンって言えばさっき必殺大撃波烈斬剣アルファって言ってたのだ…本物の…」
お互い差し合ってる指がプルプルしてるけど大丈夫?っていうかもう遅いから早く帰ってくんない?
「
「
「えええええええええええええええええ」
二人の魔王と勇者の叫び声に何気に僕も驚いたのであった。…いや、すごさは全然わからないんだけどね。つい、ノリで。
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