第17話 あけてはいけない

 悪魔が現れた。願い事を一つかなえてくれると言う。

 「なんでも一つだけ願い事を叶えてあげよう。寿命かそれとも金か」

 手から金銀財宝や小さな液体の入っている瓶を取り出したりする悪魔にむかって私は答えた。

 「世界で一番美しい女性になりたいわ。おかねは既に十分持っているし、長く生きるつもりもないもの。動物に変えようたって無駄。人間よ。あくまで人間の女性になりたいの」

 「本当にそれでいいんだな。」

 そういうと、悪魔はさっと腕をふるった。

 世界で一番美しい美女。それは何より私が望んでいたことだ。

 鏡を覗く。そこにはいつもと変わらない平凡な顔が映っていた。

 「うそつき。どこも美人になっていない。あんまりだわ」

 私は手元にあった枕を悪魔にぶつけた。悪魔はするりとそれをかわすと姿をけした。悪魔の声だけがする。

 「願いは叶えてやったさ。いや、既に叶っていたと言った方がいい。この星には人間はお前一人だけになったんだよ」

 悪魔は二度と私の呼びかけには答えなかった。どういうことだったのだろうか。


 その時、部屋の戸を叩くノックの音がした。誰だろうか。私は扉に近づく。家にいるのは家族だけだ。

 扉を開こうとして、手が止まった。何故だか、凄く嫌な予感がした。

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