第3話 ロボットの日
ロボットに人権を。そういう話が上がってきたのはいつの日だったか。
初めは小さな声だったが、次第に大きな声となり、かくしてロボットに人権が与えられた。
私はロボットの開発者として強く反対をした。しかし、人々の中でそれだけ人々の中で身近な存在となっていたのだ。
人権を与えたならば選挙権を与えなければならないと主張するものが現れた。
国会で議論され、反対の意見も多かったが、今回も大衆が味方をした。
私は最後までロボットに選挙権を与えるのには反対だったが、前述の通り世論はロボットの味方。議論の甲斐虚しく、ロボットに選挙権が与えられたのだった。ロボットは賄賂も利権も存在しないはないというのが人々の期待する所だったのだ。
そしてとうとうロボットによる政党ができたその日。私は亡命を決意した。
私は亡命する飛行機の中でテレビで国会中継を観ていた。
国会ではロボットが首相となるさまが映されていた。なにせロボットからの支持率が100%なのだ。人間の得票率が40%前後の我が国では、圧倒的なロボットの支持率の前に勝てる見込みは全くなかった。
TVではロボットの首相が演説を始めていた。数々の合理的政策が提案され、それはほぼ満場一致で、可決される。
それは不正もなく実に合理的で国家の為になる法案で、人の作った法案より優れたものであった。
街頭の人々は新しい政治を祝福し、公正な判断を期待する声に溢れていた。
私は、亡命中の機内で呟く。
「全くこの国の奴らどうかしてるぜ。誰も事の重大さに気づいていない」
ロボットによるロボットの国ができたのだ。多くの困難をロボットが解決してくれる国。
それは一見素敵かもしれないが、彼らが真っ先に行う事は、私には容易に想像ができた。
TVの中継では最後の法案が読み上げられる所だった。
「続きまして人間の処遇に関する法案ですが……」
これから起こる恐ろしい事を想像しながらテレビの電源を切る。
ロボットたちの事だ。合理的で公平に人間を扱うだろう。不要な人間を彼らはどうするのだろうか。
亡国を憂う人たちの気持ちが判ったような気がした。しかし、今の私にはどうでもいいことだ。
無情にも飛び立つ飛行機は、濃くて深い闇を眼下にしてゆっくりと進んでいく──。
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