第2話 試着する話(おまけ)

 前話の『試着する話』の続きになります。

 

 昨晩、上記の作品を書いたあと、僕はずっと気になっていました。

 それは例のおじさんが試着した女児服の行方です。


 妻に聞きました。


「ねぇ、あの子供服屋で働いていた時の変態おじさん覚えてる?」

「あー、いたね。そんな人」

 妻は特に「きもちわる」みたいな反応はなく、淡々と話を続けました。


 とりあえず、僕はそのお客さんと店長のやりとりを詳しく聞いてみました。


 妻曰く、試着室に呼ばれるのは店長さんだけで、その女性に見られる(女装)のが目的だったそうです。

 なので、一回も購入することはなく、息遣いを荒くして店長さんを試着室で待っていて、

 店長さんはそのお客さんが来ると、接客後に気分を悪くして、吐き気を感じていたそうです。


 僕は言いました。

「なぜ追い返さないの? だって購入しないなら、追い返せるでしょ? それに試着室は子供用じゃん」

「わかんない、お客さんだからじゃない? 他にも成人の女性だけど試着する人いたもん。ただその人は買ってくれたよ」

 それもそれで、なんか変な趣味だと思いました。


 肝心の試着したあと(女児服)を妻が答えくれました。

「あ、あれね。たぶん、そのあとフツーに戻したか、売ってたと思うよ」

「ええ!? 破棄しないの」

「うん」

 妻は特になんとも驚かず答えました。

 日常的なことだったようで、たぶん僕の妻も感覚がおかしくなっていたのだと思います。


 ただ、今思えば、妻が働いていた子供服の店はどちらかというと、ブランドものばかり扱っている店でした。

 子供っていうのは大人と違って、成長するので、高い服はなかなか買わないんですよね。

 それこそ、お祝いごととか、人からもらうとか。

 すぐにサイズが合わなくなるなので、僕も親になってから「ああ、あの店は自分だったら買わないな」ていう値段です。


 妻も当時、販売していたお客さんはほぼ、ママ友の子供の誕生日とか、おばあちゃんが孫にとか……で。

 ちょっと高級な服なので、気軽に親子で買うような店ではないんです。セールの時は違いますけど。


 僕がなにを言いたいのかというと。


「つまりそのおじさんが着たあと、汗でビシャビシャになった、伸びた服は売ってたんだね?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、可愛い孫(女の子)のために、おばあちゃんが買ったプレゼントはおっさんの着てたやつかもしれないの?」

「うん、そうだよ」

「娘のプレゼントにって、お母さんが試着させるときも、ひょっとして……」

「うん、そうだよ」

「……」


 その店はすぐに潰れました。

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