21:缶詰
瞬時に全力疾走。後方で鈍い音。地面に何かが落下したような、そういう音。
――やばい。
振り向いている余裕なんてない。殺気を感じることなんて現代社会では滅多にないことだろうけれど、これはどう考えてもそれで。僕をなきものにしようとしているのは間違いなさそうなのだ。
森の中を駆ける。靴下だけの足が痛む。途中でポケットの中身が落ちるが気にかけてはいられなかった。とにかく逃げないと。後方では枝が折れる音がしていて、徐々に近づいていることもわかった。
――鍵を使おうか。
僕は手の中の鍵を握り直そうとして、つるりと滑らせる。
手のひらから鈍い光がこぼれる。
あっと思ったときには落ち葉の中に紛れて見失う。探そうとしゃがんだところで、頭上を何かが掠めた。一瞥すれば、大きな鎌が掠めていったのが見える。肝が冷えた。
――とにかく、鍵。
枯葉の中に鈍い金属光沢を見かけて、僕はとっさに掴む。それは思ったよりもずっしりとしている。缶詰が手の中にあった。
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