《鍵》から始まる《餞》までの物語

一花カナウ・ただふみ

1:鍵

 やめておけばいいのに、送り主不明の小箱を開けてしまった。退屈な日々に飽き飽きとしていたから、いつもと違う出来事に好奇心を刺激されてしまったのだ。


「鍵……?」


小箱に入っていたのは、くすんだ銀色の鍵と一枚のメモ。


《この鍵を手に取り、回してください。あなたを求める場所にお連れしましょう》


 印刷された文字を読んで、なるほどわからん、となった。とりあえず鍵を回せばいいらしいことは理解できたので、素直に鍵を取り出して中空で回してみる。

 カチャ。

 何かが弾む音。

 続いて目が眩み、視力を取り戻したときには驚きで見開いた。そこは自分の家の中ではなく、とても眺めのいい屋外だったから。


「へえ……」


 知らない場所だ。掌には先ほどの鍵が残っている。風がひんやりしていることから、自分が高揚していることに気づく。

 まずは探索かな。

 僕は一歩を踏み出した。

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