師走に向かえ!歩一歩CREAMER
おくとりょう
Day 1『鍵』
キーッとなっちゃ、もうお仕舞い
ない…ない…!
探し物を探す私は思わず頭をかきむしった。アレが無いと困るのに…。
乱れた頭で立ち上がる。部屋はいつの間にか、ぐちゃぐちゃになっていた。…私は探し物が下手すぎる。
うぅ…落ち着け。慌てたところで、探し物は出てこない。
少し冷静になった私は、昨日のことから思い出すことにした。
確か昨日は……
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まず、朝から上司に妙な仕事を押しつけられたんだった。
「それ、今日中にやっといてぇー」
ただただ時間のかかる雑用仕事。めんどくさいことではあったけれど、まぁ、他に急ぎの仕事も無いし…。
…なーんて、安請け合いをしたときに限ってややこしいお客様から、妙なお問い合わせが来るのはどうしてなのかしらね?!
「一昨日の注文が間違っちゃってたから、同じ値段のこの商品と取り替えてくれない?
到着日はそのままで!」
そんな無茶な…。
「困ったときは周りを頼れよ…」
そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、みんなも同じように忙しいのを分かっているから……ね。
それでも、結局、残業不可避!
いつも通りに満員の終電列車に乗って、帰路に着いたのだった。
…酔っぱらって、ふらふらしてるのは百歩譲って我慢するけど、満員なのに缶チューハイを飲み始める人たちは一体何者なんだ…。
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…まぁ、とにかく、帰ってからはささっとシャワーを浴びて寝ちゃったからな…。
アレには触って……あれ?何を探してたっけ?
探し物すら失くした私は、ぼんやりベッドに腰かけた。一日干してふんわり柔らかな布団が、
…早く寝ちゃってもいいか。どうせ今日は休みだし。
パタンと倒れ込むと、羊の数数える間もなく、いつもは六匹くらいは数えるのだけど。そういえば、昨日もすぐに寝て……
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気づけば、目の前には大きな扉。奥にも扉が続いてる。……1、2、3、…。数えて6枚の大きな扉。全部開きっぱなしで、一番奥からはトゲトゲしたものが飛び出している。
…あぁ、そうか。
軽くお尻のポッケを叩くと、探し物は見つかった。冷たい鍵を握りしめて、心の扉を閉めに行く。
…1、2、3、…6つ数えりゃ、もうおしまい。
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