処暑 しっとりしたスコーン
ドタバタと乱入してきたのは秘書のスコーン。有能だが、こいつの話は飲み込むのに時間がかかる。もう少し、しっとり落ち着いてくれればいいのに。
「騒々しいぞ。何事だ」
当のスコーンは慌てて部屋の片隅の古めかしいレコードプレイヤーに駆け寄り、ドーナツ盤を乗せ針をセットした。ベートーヴェンの交響曲第五番。通称『運命』は極秘の蜜談を交わす際のサインであり、盗聴対策でもある。
さっき空けたばかりのカップに冷めかけの紅茶を注いで、着席したばかりのスコーンの方へ押しやった。
「か、閣下……これは?」
「いいから。飲んで少し落ち着け」
「は、はあ……」
渋々と紅茶を喉に流し込んで一息ついたスコーンは暫く黙っていた。
「で、何があった?」
重苦しい『運命』の響きの中で、ザッハが二つ目のマドレーヌを紅茶に浸しながら問いかけると、スコーンはもう一度カップに口をつけてから、口ごもりながらしっとりと話し始めた。
「……パンデミミックです」
§
うむ。秘書スコーンとやらが何か厄介話を持ってきたようじゃ。参謀ザッハに星界トップのトルテ。星界を揺るがすパンデミミック。はてさて……まぼろしの『おかしな話』はまだこれからですぞ。
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