啓蟄 ガードレール越しの夜明け
ある年、ふと初日の出でも見に行こうかという気になって、手近な山に登った。
山とはいえ周囲に人家がチラホラとある中腹で、ガードレール越しに東の空と対峙する。同じ様な考えの人はいくらでも居るもので、独り占めというわけにもいかないけれど、皆、静かにその時を迎えようとしていた。
早朝で、人家のすぐ近くであることが幸いしたのかもしれない。
暖冬と言われていたものの、陽が上る前はそれなりに寒い。誰もが白い息を吐き、ポケットに手を突っ込んだり、体を擦ったり。
ようやく空が白み始め、一人残らず東向かいの山の端へ期待の眼差しを向けた。
そして、
そこからが……なが〜〜〜〜〜い!
なっかなか出てこんかった。
午前中に陽が沈んでしまうような急ぎ足でギュンギュン上ってこられては、それはそれで困るけれど、寒いところでじぃ〜っと待っておった身からすると気持ちが
そうすると妙な声が脳内に響き渡るのじゃ。
『さあ、いよいよ山の端と宇宙の狭間から半熟卵がトロ~リとハミ出し始めました。堪らなく美味いんですよ、
とかなんとか。
コレは良からぬ狸にでもハッキングされているんじゃなかろうか、と言い訳したくはなるものの、まぎれもなく己の思考なのだ。
あの時ほど腹に温かいものを入れたいと願ったことはない。ご来光を拝むと涎が垂れるような脳内
この
これが太陽渓で
見ておれ、太陽め!
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