『トキを超える夢』(糸井ツバメ・PRテキスト)
トキを超える夢
「
チームメイトのヒバリが携帯端末に送ってきた
手元の画面に浮かび上がるのは、遥か
「そうそうそう! わたし達のプロジェクトと同じタイトルなの! わたし、これ絶対スワちゃんに見せなきゃって思って」
新潟
「いやー、懐かしいねー。スワちゃんとミズホくんと三人、新潟シティの再興に駆け回った日々!」
「うん。ひばりんの炎上騒動で台無しになりかけたやつね」
「ちょっ、それは言わない約束でしょー!」
ゆさゆさとツバメの腕を掴んで揺すってくるヒバリを、はいはい、と軽くあしらっていると、周りの席のスズやハクイ達がくすくすと笑った。
「ひばりん、
「スワちゃん、休まるヒマないでしょ」
いや、まったく、そのとおり。
ツバメはうんうんと頷き、チームメイト達の言葉を全力で肯定した。
「キャプテンになったことより、ひばりんと離してもらえたことの方がスワちゃんにはご褒美だよね」
周りの皆はそんな軽口を言って笑っているが、当のヒバリは気を悪くする様子もなく、ふんふんと鼻歌を交えながら上機嫌で喋り続けてくる。
「たとえチームが離れても、スワちゃんとわたしは
「はいはい。がんばりましょー」
カップの紅茶に口をつけ、一息ついてから、ツバメは端末に映し出された本題を指差した。
「……それで、ひばりん、この本は何なの? 随分古そうに見えるけど」
「古いよー、メチャクチャ古いよ。聞いて驚けっ、なんと21世紀の逸品なのだ!」
「21世紀……」
芸能史の授業で習ったことがある。21世紀といえば――ツバメ達、
「読みたいでしょ? 読みたいよね、スワちゃんっ」
ヒバリの口車に乗せられるのは何だか悔しい気もしたが、「プロジェクト・トキ」というタイトルが持つ強烈な引力には抗えず、ツバメは
「『新潟にアイドルグループの支店を作りたい。人々の夢が重なるとき、青春の時計は廻り始めた』――」
「これ、新潟のアイドルのお話なの?」
「うん、そうそう! わたしもまだ途中までしか読んでないんだけど、凄いんだよ。大昔の人達が、
「……そっか、そうだよね。新潟には、昔からアイドルが居たんだ……」
他でもないヒバリに聞かされたことがある。今より遥か昔――まだ国じゅうに
でも、どうして。
どうして、大都会でもなかった当時の新潟に、アイドル組織の支部が置かれることになったのだろう。
「気になる? ほらほら、スワちゃん、ページめくってっ」
「むう」
悔しいけど、確かに気になる。
まだ
「
ページをめくり、最初に浮かび上がったその文字をツバメは読み上げた。それは目次らしかった。白地に赤の揃いの衣装を纏った、五人の少女を現したイラストの上、
日陽の始まり。
りかの始まり。
どれも古風な名前だった。イラストに描かれた若い女の子の姿と紐付けるのが難しいくらいの、歴史の本や古典文学でしか見かけることのないような古い響きの名前ばかりだ。
それでも、ツバメは無性にワクワクする気持ちを抑えられなかった。いわゆる
――彼女達は会いに来てくれたのだ。遥かな時を越えて、わたし達のもとに。
ヒバリやスズ、ハクイ達にも見えるように画面を向けて、ツバメはその中身を読み解き始めた。
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